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制限が多過ぎる不可解な"ガス全面自由化" 〜 電力・石油会社の直接ガス小売は許されない

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今年4月に"電力小売全面自由化"が始まる。来年4月には"ガス小売全面自由化"が予定される。本稿は後者の話。結論から言うと、全面自由化と言いながら、不可解で不自由なルールが多数残存する可能性が極めて高い。その最たる例を以下で論ってみたい。

来年4月のガス全面自由化の施行に向け、経済産業省は昨年8月20日から"ガスシステム改革小委員会"で詳細な制度設計に関する検討を始めた。

その小委員会の第22回以降、経産省事務局から"小売全面自由化の詳細制度設計等について"と題する資料が毎回配布されている。これらを見ると主な争点がわかるのだが、かなり専門的な内容であり、一般向けにはわかりづらい。

そうした事情もあってか、経産省が一般大衆向けに作成したガスシステム改革のパンフレットがある。

そこでは、今回の自由化の仕組みとして、次の図を掲げながら、"今あるガス管を使って都市ガス会社以外の事業者もガス販売に参入できます"と書かれている。

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(出所:経済産業省・ガスシステム改革のパンフレット

"今あるガス管を使って"既存ガス会社(都市ガス会社)以外の事業者もガス販売に参入できるとしている。

具体的には、新規参入者は、"既に敷設されたガス管を利用できるように"、即ち、ガス導管を敷くための"新たな工事をすることなく"ガス販売を行えるようにする、というもの。ここで言う"既に敷設されたガス導管"とは、既存ガス会社の導管のこと。

しかし、ここはそれほど単純な話ではない。ここを裏読みしてみると、『既存ガス会社以外の新規参入者は、既存ガス会社の導管以外の導管を使うな! 新たに導管を敷設する工事をするな!』となる。これは俗に"二重導管規制"と呼ばれるもで、今回の大きな論点の一つ。

二重導管規制の温存は既存ガス会社が要望しているのだが、それには大きく二つの理由がある。

まず理論的な面。既存ガス会社の導管で繋がれた顧客が新規参入者に奪われると、その導管を敷くために使った費用を回収できなくなる。そうなると、その顧客に係る売上げから充てていた導管費用回収分を、その既存ガス会社から供給を受けている他の多くのガス需要家が負担しなければならなくなる。これが高じると、一般家庭のガス料金を上げなければならなくなる。

次に感情的な面。既存ガス会社は、電力会社や石油会社など導管を敷設する能力のある新規参入者に顧客を奪われる可能性が高いが、それが嫌だ。それと、今回のガスシステム改革では、大手都市ガス3社の導管部門が"法的分離"を強制されることになるが、大手3社の猛反対にもかからず半ば無理やり経産省が押し切った。

大手3社にしてみれば、法的分離を受け入れて役所の業績にしてやったのだから、細かなルール作りではガス業界を守るようにしろよな!といった具合。(こうした役所と関係業界の間での取引は、しばしば行われる。)

以上二つの理由は、何とも奇妙な話。既存ガス会社の顧客が、都市ガスから、『他のエネルギー(都市ガス以外のガス・重油・電力など)』に燃料転換する場合や、事業そのものから撤退する場合を考えれば、同じように導管費用は回収できなくなる。しかし、その場合には何ら制約はない。

今年1月6日付け日本経済新聞では、経産省はガスシステム改革の一環として、「電力会社が持つ発電用の導管を企業向けのガス供給にも転用できるようにする」、「ガス会社の導管を使わず、工場などに直接ガスを送れるようにして料金の引き下げを促す」と書いている。

この日経新聞記事にはまた、「東京電力は千葉県の袖ケ浦や富津地区にLNG基地を持っている。周辺の製鉄所や石油化学工場には安価なガスへの需要が強く、規制緩和を受け基地からの直接供給に乗り出す見通し」とある。

この「安価なガス」とは、東京ガスによって現在供給されている都市ガスとは種類が異なるガス。つまり、東電が供給しようとしているのは、都市ガス以外のガスであり、『他のエネルギー』なのである。

しかし、今の検討状況を見ると、この程度の規制緩和すら実現せずに、"ガス小売全面自由化"という聞き心地の好い触れ込みだけが一人歩きしていく。この日経新聞記事は"大誤報"になる可能性が高い。

自前でガスを調達しない小売ブローカーを増やすだけの制度変更が、ガス小売全面自由化だということなのか?今年4月に始まる電力小売全面自由化にも通じることだが、"単なる小売ブローカー"をいくら増やしても、エネルギーコストは本質的に下がりようがない。
 
自前でガスを調達する能力も実績もある電力会社や石油会社が直接ガス小売に参入することは、今回も阻まれてしまうのか?これを規制緩和することこそが、真のガスシステム改革なのではないのか?(自前でガスを調達しない小売ブローカーを増やすような規制変更などは、本当はどうでもいい話なのだ。)

『種類の異なる安いガス』への需要家ニーズがあったとしても、この旧態依然とした規制の壁に阻まれてしまう。これは明らかにおかしいし、今までこれを容認してこなかったことも実はおかしなことだったのだ。そうした需要家ニーズに即応するためにも、理不尽な"二重導管規制"は即刻撤廃されるべきだ。

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