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3.11ポストマーケット:仮設ホームエレクトロニクス・カフェ――「仮設住宅」を舞台とした高齢者たちのチャレンジ(2)

2014年03月06日 15時28分 JST | 更新 2014年05月05日 18時12分 JST

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日本にはすでに数千万の「家庭電器」の設備があり、数千万の「家庭料理」の料理人が存在します。

3.11以降、効率一辺倒の市場社会に対して疑問を抱くときに、多様な価値観や生活様式を認め合っていくパブリックな市場社会について、真剣に考えなければならない時代に突入したといえます。しかし、そのアプローチは決して既存の市場社会に対して、いたずらに対立や衝突を生み出すことではなく、その「実現可能性」や「持続可能性」において、リアリティーの伴ったパラレルな市場社会を「多層に構築すること」にあります。

もちろん、「高齢化」問題の解決においては、既存の市場社会のスタンダードに合わせた自立支援も重要ですが、逆に、「高齢者」を必要とする市場社会のスキームを構築することにより、自らがに必要とされている喜びで「高齢者」の「労働観」は大きく変容します。そして、キャッシュ・フォー・ワークよる【高齢者】×【ロー・プロフィット】の多層な市場活動が推進されていくことにより、インテグレートで共存可能な「ポスト・マーケット」のリアリティーが浮かび上がってきます。

「支えられる側」から「支える側へ」ーこのドラスティックな転換のもたらすイノベーションは、自らのやりがいや充実した生活だけではなく、それらを取り巻くサービスやコミュニティのスタイルが、市場主義偏重の人と人の関係性から、ユニバーサルな新しい価値観や関係性への変革をもたらすことになります。

「仕事」ができる高齢者向け住宅...役割や報酬 生きがいに


サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の整備が進むなか、入居者の生活に「仕事」を取り入れる試みが注目されている。本格的な就労ではないが、自分に合った役割や報酬を得ることで、充実感や生きがいにつながっているようだ。栃木県那須町のサ高住「ゆいま~る那須」では、60~89歳の45人が暮らしている。厨房で、入居者のKさん(76)が慣れた手つきでそばを打っていた。

「いくつになっても仕事ができるのは、いいね」と笑う。群馬県内で30年以上、そば店を経営していた。妻(67)が脳梗塞で倒れたために店を閉め、2010年に夫婦で入居。スタッフの勧めでそばを打ってみたところ好評で、12年から食堂の昼用メニューに採用された。

週2回、要介護3の妻がデイサービスに行っている間、台所に立つ。売り上げから材料費などを引いた残りがKさんの収入で、月約1万5000円。「気分転換になるし、『おいしい』と言ってもらえるのが一番うれしい」。食堂では他に2人が、調理の仕事をしている。
2013年7月2日 読売新聞

徳島県上勝町は、徳島市中心部から車で約一時間程の場所に位置しており、人口は1,840名 863世帯(平成25年10月1日現在)、高齢者比率が49.57%という、過疎化と高齢化が進む町です。「葉っぱビジネス」とは"つまもの"、つまり日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを、栽培・出荷・販売する農業ビジネスのことです。


葉っぱビジネスのポイントは、商品が軽量で綺麗であり、女性や高齢者でも取り組めることです。現在の年商は2億6000万円。中には、年収1000万円を稼ぐおばあちゃんもいます。高齢者や女性達に仕事ができたことで出番と役割ができ、元気になり、町の雰囲気も明るくなりました。

「葉っぱビジネス」の仕事が忙しくなってきたため、老人ホームの利用者数が減り町営の老人ホームはなくなりました。「忙しゅうて、病気になっとれんわ!」というおばあちゃんもいらっしゃいます。
(株式会社いろどりーいろどりストーリー)

ホームエレクトロニクス・カフェのオープンは簡単です。

ドアノブにプレートを吊るすだけで「自宅」はカフェに早変わりです。

日本にはすでに数千万の「家庭電器」の設備があり、数千万の「家庭料理」の料理人が存在します。ローコストで操作も簡単・安全などの技術の粋を集めたメイド・イン・ジャパンの「家電製品」の活用や、国産の安全な食材と過度な技巧にこだわらない、シンプルでアットホームな「和食メニュー」や「カフェメニュー」、そして、家族・友人・近隣住民らによる「コンソーシアム」や「ワークシェアリング」の概念の導入などにより、「高齢者」一人でも無理のないオペレーションが可能です。

ホームエレクトロニクス・カフェは、「高齢者」の見守り活動における「交流会」や「サロン会」から、一般住民をターゲットとした「お茶会」や「料理教室」など「試食会スタイル」のカフェ活動まで、自分のスタイルに合わせた展開が可能です。もちろん、参加フリーで誰もがいつでも自由にスタートアップすることができます。そのキーワードは「フリー」・「オープン」、「トランスペアレンシー」です。

また、「自宅」だけにとどまらず、近隣「住居」においてもグループ・カフェとして、ローテーション活動を行なったり、廃校となった小学校や広場、廃屋などでは、地元地権者との短期賃貸借契約、企業メセナの遊休物件の提供などの恊働を呼び起こし、様々にユニークなアイデアによりオープンでスクエアな活動を目指していくことが可能です。

ホームエレクトロニクス・カフェは、自らがキャラクターとして自由に参加し、周囲とコラボレーションしながら、「アイデア」・「情報」・「行動」をシェアし、プロセスをオープンにしながら、「パブリックネス」を形成していく「ロール・プレイングアート」といえます。

仙台を大きく開いた伊達政宗は、天災、人災を考え、屋敷林から生け垣をはじめとするあらゆる植樹に、「食べられる事」を前提に施策にし、さらには「家庭菜園」を奨励し人々に求めました。「エディブル・ランドスケープ」は、その名の通り「食べられる景観」を目指し、経済的効率とアートや文化を切り分けるのではなく、日常の食生活と有事の両方に有効な手だてとして、世界に少しづつ浸透しています。

日本にはすでに数千万の「家庭電器」の設備があり、数千万の「家庭料理」の料理人が存在します。今後、家電立国・日本における都市の役割は、「食と農と電」をテーマに、「アート」と「コモディティ」が統合表現された「エディブル・ランドスケープ」として、まさに「働く景観」の機能を果たしていくことが極めて重要になってきます。

「ブロードウェイで有名な演出家デビッド・バインダーは、オーストラリアの小さな町で、住民が自分のの庭で踊り演技してるのを観て感動しました。ーミントライブ。観客と演出者の境界をとりのぞき、町が自己表現をするのを手助けするという、芸術フェスティバルの新しい側面を紹介します。新しいフェスティバルでは、観客が作品を作り上げる必須の役割を担うのです。


これらのフェスティバルは、オープンでした。ミントのように、地域と世界との対話が 欠かせないと理解しているからです。フェスティバルが町にもたらす経済的効果を語ることもできますが しかしそれ以外に興味深いことがあります。町が自己を表現するのに、フェスティバルがいかに役立ったか、町自体を取り戻すのに、どんなに助けになったかです。そして、現代の芸術フェスティバルは、世界大戦の 瓦礫の中から生まれました。」
TED デビッド・バインダー:芸術フェスティバル革命

ホームエレクトロニクス・カフェは、一般的な店舗型の飲食業態とは異なり、「自宅」を基本ピースとした、「お茶会」や「試食会」などのスタイルによるカフェ・パーティ活動です。「自宅」の概念は都市型住居だけではなく、被災地における仮設住宅や、伝統的集落をはじめ、貧困地区や紛争地区など、国や地域によってそのスタイルも異なります。

仮設店舗におけるお茶会などの様子

そして、その活動はピース・バイ・ピースに「パブリックネス」を形成していき、地域内外を問わず、様々な人々とも積極的に交流していきます。この新しいフェスティバルでは、「復興」という理念の共有により、「観客」と「演者」の境界をとりのぞき、町が自己表現をするのを手助けする。そして、「観客」も作品を作り上げる重要な役割を担います。

また、「家庭教育」や「地域教育」も同様に重要なファクターです。レッジョ・エミリア・アプローチ(北イタリアのレッジョ・エミリア市で、始まった地域の共同保育運動)のような、子どもと大人の双方が創造性を発揮し、アート探求の活動を通じて共に学びあう、ユニークな教育スタイルがあります。その独創的アートな感性や様々な困難に対して、最後までやり抜く力を学ぶ場として「仮設住宅」のコミュニティが存在します。

地域の子供たちが日常的な生活空間の中で、コモディティーとしてのアートに触れ合い、アールブリュットな感性を持った大人となって、様々な領域で活躍するための教育の場として位置づけらます。「自宅」は人を招いたり、招かれたりする「サロン」であり、人と人との「交流場所」です。

欧州のモダンアートは、美術大学などの教育機関よりも、地域のこうしたコモディティの中から生まれてきています。 今後、「高齢者」のイメージはドラスティックに変わっていきます。 これからは経験や知恵だけでなく、感性あふれる「高齢者」たちが中心となって、アート・文化・教育の地域活動の中心を担っていかねばなりません。

(2014年3月3日「re-CONSCIOUS」より転載)