企業・行政・地域の人々。みんなで社会課題を解決する! 放課後NPOアフタースクールの魅力と、そこで働く醍醐味とは

地域の人々や企業を巻き込み、子どもが楽しく過ごせる場を提供する

ラシク・インタビューvol.111

放課後NPOアフタースクール 事務局長 島村友紀さん

放課後NPOアフタースクール 事務局 栗林真由美さん

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子どもが小学生になると、保護者側の就労時間と小学校や学童で子どもを預かってくれる時間とのギャップに悩む方が少なくありません。まずは、子どもたちが安心して放課後を過ごせる場所がほしい。そしてできることなら様々な体験をして、楽しく過ごしてほしい...... 小さな子を持つ多くの親たちはそんな願いを持っているのではないでしょうか。

「子どもたちの放課後を救え!」をミッションに、全国にアフタースクールを広げるべく活動している団体が、放課後NPOアフタースクール。そこで働く二人の女性にお話を伺いました。

放課後NPOアフタースクールで働く醍醐味に加えて、子どもを持ちながら、大企業からNPOへ、まったく異なる領域へ飛びこんだきっかけなどもざっくばらんに語っていただきました。

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地域の人々や企業を巻き込み、子どもが楽しく過ごせる場を提供する

放課後NPOアフタースクールの様子

編集部:ズバリ、他の学童と放課後NPOアフタースクールの違いって何でしょうか?

島村友紀さん(以下、敬称略。島村):プログラムですね。誰でも参加可能で安全に過ごせることを大前提に、子どもの第二の活動の場所として色々な学びや経験を提供できるのがアフタースクールの魅力です。民間学童は企業内で閉じてしまいがちですが、私たちアフタースクールは、多くの地域の方々や企業と連携をし、様々なプログラムを提供しています。

プログラムは、豊富な知恵や技術を持った多くの「市民先生」に支えられており、「子どもたちにこういう経験をさせてあげたい」という思いや目標を共有することを大切にしています。

スクール毎にもプログラムの違いがあり、子どもたちの興味を大切にしています。ドローンやプログラミングといった最新コンテンツも積極的に取り入れるようにしていますね。新しいものには新しい発見がありますから。現在、ある企業様とプログラミングのコンテンツ開発を行っていますが、普通なら高額のプログラミング体験を、企業からの助成を受け、ボランティアスタッフに支えられながら、幅広い子どもたちに届けています。

「仕事に人生を合わせるのではなく、人生に仕事を合わせればいい」

NPOへの転職の決断

栗林さん(右)、島村さん(左)

編集部:現在は、どのようなお仕事をされていますか?

島村:2016年に入職し2年になりますが、本部の事務局長として総務・人事・経理等のバックオフィス全般を担当しています。組織形成の段階のため、制度を作るところから日々の労務管理まで幅広く関わっています。小さい組織なので皆マルチに仕事をしており、私自身もアフタースクールの現場に行ったり、連携先企業の方とやり取りする機会も多くあります。私は時短勤務をしていますが、実は本部の女性のうち半分以上がママスタッフで、時短勤務者も多くいます。

栗林真由美(以下、敬称略。栗林):私は2017年に入職、本部の事務局で総務・人事と社内システムの仕事を担当しながら、システムエンジニアのバックグラウンドを活かしてSTEM(プログラミング)教育のコンテンツ開発を企業の方と連携して行っています。

編集部:お二人とも大企業で働かれていましたが、いつどのように放課後NPOアフタースクールに転職しようと思われたのでしょうか?

島村:もともと教育に関心があり、ファーストキャリアはベネッセでした。そこで保育園の立ち上げや運営の仕事を経験し、子どもが活き活きとしている場を作る仕事はとても楽しいという感覚を得ました。もう少し力をつけたいという気持ちから、一橋大学大学院で福祉や教育を軸に公共経済を学ぶことにしました。その後、俯瞰する目を持ちたいという思いから、野村総合研究所で教育・福祉の分野で経験を積みました。ここで第一子出産を経て復帰。二人目も考えた時、働き方を変えたい、という気持ちと等身大の社会課題に取り組みたいという気持ちが芽生え、第二子の妊娠を期に退職しました。正直、当時は少し仕事をお休みしてもよいかなという気持ちもありました。

退職後、産後ケアのお手伝いに携わっているとき、放課後NPOアフタースクールの存在を知りました。単に居場所を作るだけでなく、地域を巻き込んで子どもの成長を見守る点に魅力を感じました。また組織が大きくなるタイミングだったので、働いている人がもっと楽しくなるような仕組み作りに携わりたいという思いから、放課後NPOアフタースクールへの入職を決めました。

栗林:私は日立グループのSE(システムエンジニア)としてキャリアをスタートしました。30歳で娘が生まれた時は、チームリーダーを任されるなど、仕事が面白くなってきた時期でした。時短で復帰した際は、工夫次第で意外とできるなという感覚を持っていました。とはいえ、大切な子どもを預けて働くからには、何か自分自身もしっかり成長しなければ、と働く意味を求めるようになり、復帰後半年ほどしたとき、視野を広げるため別のプロジェクトへの異動を希望しましたが、時短では選択肢が限られ断念することに。この出来事をきっかけに、転職活動をすることにしました。子持ち、時短、今後二人目を持つ可能性もゼロではなく、かつ成長もしたいというありのままを全部伝えた上でも、受け入れてくださる企業が複数あり、時代が変わってきているなという印象を持ちました。

転職先では、SEよりは業務そのものの在り方を提案するようなコンサル寄りの仕事ができ、やりがいを感じていました。ただ、次第に、自分の仕事は娘の将来にどうつながるのか、と仕事の意味について、モヤモヤと考えるようになりました。そんな時期に、たまたま目をしたのが日経DUALに紹介されていた放課後NPOアフタースクールの記事。取組みがとても面白そうで、HPにアクセスすると、求人のページに目がとまりました。ワーキングマザーも多く働いていることを知り、こういう選択肢もあるかも、と2日後には履歴書を送っていました(笑)

編集部:企業からNPOへ、まったく違う世界への転職に抵抗はありませんでしたか?

栗林:IT業界でやってみたかったことは経験できたという気持ちもあり、抵抗よりも、むしろ新しいことへのわくわく感が強かったですね。年齢的にもキャリアに変化をつけるにはいいタイミングかなと思いましたし、まず動いてみるのは損にならない、とりあえずやってみるという考えが、自分の中にはありますね。転職活動も、たとえご縁がなくとも新しい人との出会いから学びはありますし、実際動いて話を聞いてみるとハードルが下がります。最後は夫が「やってみたら」と背中を押してくれました。

編集部:実際、入職してどうでした? 働き方は変わりましたか?

島村:「働く」ということの位置づけが大きく変わりました。まず、楽しい! そして、入職時の面接で、代表である平岩に言われたことが印象的でした。当時、娘が待機児童だったため、15時30分までくらいしか勤務できないんです、と代表に話をしました。すると、「時間はたいした話ではない。仕事に人生を合わせるのではなく、人生に仕事を合わせればよい。」と当たり前のように言ってくれたんです。企業で働いているときは、フルタイムで働くことが基準で、働く時間が短いことはディスアドバンテージという感覚でしたが、代表の一言で「それぞれに合った働き方でいい」という考えがすとんと落ちました。

業務量が少ないというわけではないので、仕事に追われることはあるが、自分でうまく線引きし、志を同じくする仲間に任せることもできています。ここでは働きやすい関係性ができあがっています。「お互い様」という助け合いの風土のおかげかと思います。

「子どもにとって良い放課後をつくる」という以外に縛られるものがない

それが放課後NPOアフタースクールの良さ

編集部:NPOだからこその楽しさってありますか?

栗林ミッションが明確で、私達は何のためにいるのか、がはっきりしているので、組織の目標にどれだけ気持ちをのせて仕事ができるかという温度感が企業時代とは全然違いますね。もともとシステムの出身ですが、技術そのものより、技術を使って誰かの役に立つということに興味があったので、目的が明確で共感できる今の仕事は面白いですね。

編集部:今後、放課後NPOでやりたいことやご自身のキャリアイメージを教えていただけますか。

島村:今世の中は変わってきており、企業・NPO・行政という線引きが曖昧になり、みんなで社会課題を解決していこうという流れができつつあります。一方で全体をマネージする人がいない。NPOはその大きな立場を担っていけると考えています。力を合わせれば解決できるということ、そのプロセスって実は楽しい、という姿をみせていきたいと思っています。

キャリアに関しては、私自身はモヤモヤした模索の時期を少し過ぎた感覚があります。今は、先のことを具体的に描いて進むというよりは、与えられたチャンスの中で最大限にやっていくという考えです。出産前は深夜まで仕事をするのが当たり前の生活だったので、1人目の産後はある意味「産後ショック」で、子育てをしながらのキャリアを再構築するのに2、3年かかりました。仕事から離れる時期も経て、自分自身が母として働くのに大切なことは、「子どもの成長に関われる場所」で「楽しく日々を送れる場」であると気づきました。だから、模索の時期にある人に出会うと少し前の自分を思い出します。

出産や育児を新しいスタートとして見直すと、新たな気づきを得たり、こだわっていたことが実はたいしたことではなかったと気づいたりすることがある、とでは思います。

栗林:私は、まだ「こうあるべき」「こうありたい」というのを手放しきれていませんが、これから肩の力がもっと抜けるのではと思います。素敵な40代の先輩がたくさんいて、それぞれ違った特徴で自然体なところが素敵です。その良いあんばいを目指したいし、きっとそうなれると思えるんです。そうすれば、無理に目標設定しなくても、着実にキャリアを積み重ねていけそうな気がします。

放課後NPOアフタースクールでやりたいことは、組織の基盤づくりを着実にしつつ、プログラミング教育のプロジェクトを広げていくということですね。一つの企業、自治体というわけでなく、社会全体をみんなで良くしていく、そんな雰囲気に変わる一端を担っていけたらいいなと思います。

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潜在的に30万人という調査もある学童保育の待機児童。そして子供たちの低い自己肯定感。そういった社会課題を、日本全体にアフタースクールを広げることで解決していく、という壮大なテーマに高い志で挑んでいるお二人。しかし、その姿は、決して無理なく自然体で、わくわくとした楽しさに満ちていて、とても素敵でした。

お二人の働き方、そして放課後NPOアフタースクールでの取り組み内容、その両方に縛りのない自由な楽しさ、広がりを感じるインタビューでした。

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【事務局長 島村友紀さんプロフィール】

㈱ベネッセコーポレーション、㈱野村総合研究所を経て、2016年より現職。

事務局長として、人事労務を中心に、バックオフィス全般を担当。

家族構成は、夫と、小学校生活を謳歌している娘(小1)、愛嬌で生きている息子(年少)

【 事務局 栗林真由美さんプロフィール】

㈱日立システムズ、㈱ビジネスブレイン太田昭和を経て2017年より現職

事務局にて人事総務・システムを中心に担当しつつ、STEM教育の授業開発にも参画。

家族構成は、家事も育児も協力的な夫、自由奔放で甘えん坊の娘(4歳)

ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:インタビュー(宮﨑晴美)・文(樽井三喜)

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