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自動思考の罠にはまらない3つの習慣

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たとえ自分は革新的で発想豊かな人間だと内心ひそかに思っていても、人間であるかぎり毎日考えていることは、ほとんど同じだ。そしてこの思考の繰り返しに足元をすくわれる。

たとえば・・・。

ちょっと前に、芸能界を代表する優等生ベッキーの不倫に憤っていたAさんが、先日は突然の大雪に見舞われた東京郊外の某駅で長蛇の列に並んだ。寒風の中で手袋をしたまま広げた新聞に出ていた株価下落の報道をみて「まずいなあ」と思ったが、懐の寒さをカバーしてくれるファストファッションのフリースは「やっぱり得だ」と感じる。

つまり「ベッキーはいい子」だといつも考え、「不倫は悪いこと」だといつも考え、「朝がきたら会社に行くもの」だといつも考え、「経済が下振れするのは悪いこと」だといつも考え、「安いわりに品質がいいのは素晴らしい」といつも考える。

こうして私たちは、いつも同じようなことを考えている。雨の日も風の日も雪の日も晴れの日も。ちょっとくらい異変があったにせよ、世界はずっとこのまま大きく変わらずつづいていくかのように。

米国の有名な精神科医ダニエル・エイメン博士は、「人間が考えることの95%は毎日同じことの繰り返し」だと言う。

誰にもその人なりの思考の癖があり、また多くの人に共通する癖もあるだろう。なにかの出来事に対して瞬間的に浮かぶ考え=自動思考が災いして、状況に対する歪んだ認知が心身に問題を起こすことも珍しくない。

しかし同じ思考を繰り返すのは生き物としての必然でもある。われわれは生体を維持するために〝変わらないこと〟を無意識に求める。ホメオスタシス(生体を安定した状態に維持する機能)によって、いつもと変わらない同じ考え方による同じ行動が続くのだ。

栄華を極めた文明が何度も滅んできたのも、ホメオスタシスによる維持機能が逆効果になっていくタイミングで、人間が認知の歪みに気づいて矯正できなかったからなのかもしれない。

『文明の衝突』を書いた国際政治学者、サミュエル・ハンティントン博士がいたく感心したとされる在野の文明研究家、村山節氏の文明法則史学によると、私たちが生きる今は文明大転換の混乱期の入り口にあたる。発展途上の学説とはいえ、今の世界を見渡せば、多くの人々の思いと重なる部分があるのではないだろうか。

いつも同じことを考えている私たち人間の強みが弱みに変わり、それが大きく露呈してくる時代。それが今、そしてこれからだとするなら、気づきにくい自動思考に気づいて制御していく姿勢とスキルが必要になってくる。

ジャック・ウェルチがGEの経営を退く際、記者の質問に対して、経営者としてリーダーとして最も大切なことは「自己認識」だと答えた。
しかし私たち人間がいつもしている自動思考は、思考とは認識されず勝手に湧いてくる思考だから、自己認識が不十分な状態が標準設定に近い。

そもそも今、私は考えているか?どのように?出てきた思考についてはどう考える?他には?さらに他には?

これが意識された思考だ。

SMAPの〝謝罪〟会見を観ながらツイートした人たちのなかに、どのくらい意識された思考があっただろうか。あるいはネットの〝炎上〟をもたらす他のさまざまな事柄についても。

あーあ、きょうはいい考えが浮かばない・・・。自分に何が起きている?先週の会議では頭がクリアだったのに、きょうは頭の働きが違うなあ・・・。これも意識された思考といっていいだろう。

判断と意思決定の質を少しでも上げて、そのクォリティを維持していくには、意識して考えるということ、考えていることについて考えるということ。これが欠かせない。

そこで心の抵抗勢力となる自動思考を制御していくにあたり、最低次のことは押さえておきたい。

■立ち止まる:とにかく数分でもいいから立ち止まる時間をつくろう。

かなり方向音痴な私は、知らない街で道に迷ったときは自動思考で立ち止まっている。けれども日常のビジネスでは、立ち止まることを習慣づけないと惰性で動いてしまう。未知の場所を探すのに比べれば日々のルーチンには自信があるからだろうけど、これ自体がヤバイ。

だからこの数分間で次のことを試してみる。

■落ち着く:くつろぎながらクリアな意識を保つようにする。難しければ自然な自分の息の出入りに少し注意を向けておく。息に注意を向けるときは、上手にやろうとせず気軽に。

心理的には感情が快適モードになることで視野が広がる。逆に高ストレスのままだと理性の働きが単純化してしまう。単純化するほど俗に言う動物脳に支配され、結果として私たちと他の生き物との差は縮まっていく。

かつてパリの文人や哲学者たちが新たな視座や思想を生み出す場となった数々のカフェ、世界の大都市のビジネス街でにぎわうスタバ。昔も今も人はスペースを求めている。あちこちに飛び散っている意識が静まってきたとき、人間がより人間らしくなる。

■身体で感じる:息をしながら皮膚、筋肉、内臓の微細な感覚があること、ないことを味わう。

生物の起源をたどっていくと、脳の歴史は後半からはじまる。そもそも脳がなくても生物は活動しており、その身体(動き)が脳の形成に影響を及ぼしたと考えられている。また神経学者のアントニオ・ダマシオによれば、人間の理性に大きく影響を及ぼす情動(一時的な激しい感情の動き)や直観の源には、内臓感覚などと呼ばれる身体的な反応がある。

身体に宿る知性=身体知を目覚めさせることが、自動思考の罠を乗り越える手立てになる。

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このようにして、いつも同じことを考えている私たちの日常に、数分間のちょっと違う日常を持ち込む。日常でやっていかないと意味がないのは、健康管理と同じだ。緊急事態で質の高い判断、意思決定を下すには、もっと〝落ち着いていられやすい〟ときに練習しておかなければならない。

世界はずっとこのまま大きく変わらずつづいていくとは、かぎらないのだから。

(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事 吉田 典生) 

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