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パクス・トクガワーナって、何?

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イラスト:ペン画家・柄澤照文

◼︎戦後71年ーまだまだ江戸時代の平和にはほど遠い

先の大戦が終わってから、今年で71 年。

戦争が風化していくと叫ばれ、私自身もなんとか「戦後100年」を見届けたいと思っていますが、歴史を紐解けば、まだまだそれを優に超える時代がありました。

ご存知の方も多いと思いますが、江戸時代は250年以上の長期平和が続いた時代です。

戦国時代という武力が全てを支配する時代を経て、新たな時代が徳川家康によって切り拓かれました。中でも、私が注目しているのは「朝鮮通信使」です。今年3月に「朝鮮通信使」の関連資料が、ユネスコ世界記憶遺産に申請されたと報じられたので、ご存知の方も多いでしょう。

家康公は、豊臣秀吉による朝鮮出兵以来、国交の途絶えていた朝鮮との関係を改善し、親善の象徴である通信使の来日を実現しました。家康没後も継続され、江戸時代を通して全12回の使節団が日本にやってきたと言います。第一回は国交回復や捕虜の返還が目的とされ、徐々に文化交流がなされるようになりました。詩人、書道家、音楽家、舞踊家など、当時の各分野で朝鮮を代表する400〜500人で構成される文化使節団が来訪することで、相互理解が生まれていったのです。

記憶遺産の申請資料には「悲惨な戦争を経験した両国が平和の時代を構築、維持していく方法と知恵が凝縮されている」と記述があり、「両国の歴史的経験に裏付けられた平和的・知的遺産だ」とその価値が強調されています。
 
現代の3倍以上もの平和が続いた、江戸時代。

ここから学ばない手はない!と、2016年8月13日に「パクス・トクガワーナって、何?」というイベントを、家康公の生誕地である愛知県岡崎市で開催しました。単なるイベントではなく、『現代版・朝鮮通信使』と称して、3人の韓国人をお招きしました。写真は岡崎城前で、韓国人ゲストとBFPメンバー。

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◼︎パクス・トクガワーナって、何?

パクス・トクガワーナ...聞きなれない言葉だという方が多いと思います。これは、静岡県立美術館の館長・芳賀徹さんが命名されました。

「パクス」はラテン語で平和を意味しますので、「パクス・トクガワーナ」は「徳川の平和」ということになります。

今回のイベントは、平和な時代を支えた朝鮮通信使について知っていただきたいという気持ちで企画しました。NHK大河ドラマの時代考証で有名な大石学先生(東京学芸大学教授)や、朝鮮通信使のユネスコ世界記憶遺産の委員を務める韓泰文(ハン・テムン)先生(釜山大学教授)にご登壇いただき、終盤に「平和な未来に向けて、今私たちができること」と題したワークショップ(参加型学習)を行いました。

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このワークショップの担当は、「東アジアの平和のための歴史NGOフォーラム」の運営委員長を務める姜聲浩(カン・スンホ)先生。カン先生はこの発表のために、今の韓国の若者たち(中高生)が日本についてどう思っているかをまとめたビデオを作ってくださいました。130名の参加者は熱心に韓国の若者たちの発言に耳を傾けていました。日本語の吹き替えを中高生たち自らがやってくれました。

自分たちの思いを「日本の人たちに伝えたい」という気持ちが、ひしひしと伝わってきました。語られる内容も、心に響くものでした。こちらから見られますので、ぜひご覧ください。
https://youtu.be/7mhadh7mdts

この映像を見た後、相手に対する理解を深め、偏見を克服することが大切であると感じたと感想を寄せてくださった参加者が多くいました。江戸時代、日本にやってきた朝鮮通信使の意義を大いに感じるひと時になりました。


◼︎「日本が戦争をやめて、平和の道を歩み始めた日」のイベント

私たちNPO法人ブリッジ・フォー・ピースは、戦後70年を迎えた昨年から「日本が戦争をやめて、平和の道を歩み始めた日」のイベントを毎年8月16日に開催することに決めました。今年は朝鮮通信使の交流にならって、韓国の若い世代とインターネット電話をつないで交流をしました。そう、現代は海を渡らなくても気軽に交流できる手段があります。

もちろん、顔と顔を合わせた方が良いという話も出て、来年以降、韓国の若者を日本に招待したり、また日本の若者が韓国へ行ったりする交流事業を始めようと思います。

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「そもそも韓国が好きではない」
「日本の負の歴史ばかり責めたてて、あまり良い気持ちがしない」
「交流をしたって、政治利用されるだけじゃないのか」

そんな思いを持っている人もいらっしゃるかもしれません。そんな方にこそ、家康公が推進したように、相互理解を深める「交流」を始めてほしいと思っています。どこでそれをやればいいの?そう思っている方がいたら、ぜひブリッジ・フォー・ピースの活動にご参加ください。

戦後100年はもちろん、300年を目指せるよう、江戸時代に学びながらこれからも歩みを進めていきます。