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巨大ウイルスにもCRISPR様の「免疫系」が!

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サイズからゲノムの複雑さまで、全てが規格外な「ミミウイルス」。発見以来、ウイルスの概念を覆し続けているこの巨大ウイルスで、今度は原核生物が持つCRISPR系に似た防御機構が見つかった。 2016-06-01-1464777706-3280148-1.jpeg
ヴィロファージがミミウイルスに侵入する様子を描いたイラスト。 BSIP/UIG/Getty

光学顕微鏡で観察できるほど巨大なウイルスとして、最初に発見されたミミウイルス。

その発見者である、エクス・マルセイユ大学(フランス)の微生物学者Didier RaoultおよびBernard La Scolaを中心とする研究チームは今回、ミミウイルスに、細菌やアーキアといった原核生物(核を持たない細胞からなる生物)で広く見られる適応免疫システム「CRISPR系」に似た防御機構が存在することを見いだし、Nature 2016年3月10日号249ページで報告した(参考文献1)。

ミミウイルスはアメーバを宿主とするウイルスで、1992年に英国の冷却塔水から単離されたが、その大きさから当初は細菌であると見なされており、2003年になってようやくウイルスであることが明らかにされた。

本体の直径は約0.4µm、これを覆う長い繊維部分を含めると全体で直径約0.75µmと極めて大きく、そのゲノムも約1.2メガ塩基(Mb)と巨大で、小型の細菌であるマイコプラズマのゲノム(約0.6Mb)の2倍に相当する。天然痘ウイルスと遠縁に当たるが、他のウイルスとは異なり、翻訳やDNAの修復に関わるタンパク質、タンパク質の折りたたみを助けるシャペロンをコードする遺伝子などを多数備えていることが分かっている。

Raoultらは、これまでに得られた知見から、ミミウイルスを生物の新たなドメインとして捉えるべきだと主張してきたが、今回の結果はこの主張をさらに支持するものであり、長く「無生物」と定義されてきたウイルスと、生物である微生物との境界線を曖昧にするものといえる。

Raoultは、ミミウイルスは典型的なウイルスではなく、むしろ原核生物に近いと考えている。実際、RaoultとLa Scolaらは2008年、ミミウイルスにも、原核生物と同様に別のウイルスが感染することを明らかにしている(参考文献2)。

彼らは、この新ウイルスを「スプートニク(Sputnik)」と名付け、また、一連の「ウイルスに感染するウイルス」の総称として、細菌に感染するウイルスをバクテリオファージと呼ぶのにならって「ヴィロファージ(virophage)」という名称を提案した。さらに2014年には、一部のミミウイルスにのみ感染する新たなヴィロファージを発見し、これを「Zamilon」と名付けている(参考文献3)。これらの発見からRaoultは、ミミウイルスもまた、その自己複製能力を搾取するヴィロファージの感染を経験することによって、CRISPRのような防御機構を進化させてきたのではないか、という仮説を立てた。


免疫防御

細菌やアーキアは、ファージやその他の外来DNAに侵入されると、それらのDNAを切断して塩基配列の断片を自らのゲノムに取り込み、CRISPRと呼ばれる領域にその情報を「記憶」する。そして、同じ塩基配列を持つ外来DNAが再び侵入すると、CRISPRの情報をコピーしたRNAがその塩基配列を見つけ出し、次いでRNAによって運ばれてきた「Cas」と呼ばれる特殊な酵素が、RNAによって認識された外来DNAをほどいて切断することで、感染を阻止する。

「CRISPR-Cas系」として知られるこの免疫機構は、ゲノムを編集する技術として現在幅広く応用されている。

ミミウイルスが、これと類似の防御機構を備えているのかどうかを明らかにするため、Raoultらは今回、計60株のミミウイルスについてゲノムを解析し、ヴィロファージZamilonの塩基配列と一致するような配列が存在するかどうか調べた。

その結果、Zamilonに耐性を持つミミウイルスの系統には、やはりこのファージの塩基配列に一致する短いDNA配列があることが分かった。また、そうした配列の隣接領域には、DNAをばらしてほどくことができる酵素をコードする遺伝子が発見された。

CRISPRの免疫系でも、Cas酵素をコードする遺伝子とウイルスを認識する塩基配列は隣接しており、その類似性がうかがえる。Raoultらは、今回確認された、Zamilonに対するミミウイルスの防御機構を「MIMIVIRE(mimivirus virophage resistance element;ミミウイルスのヴィロファージ耐性エレメント)」と名付けた。MIMIVIREの複数の要素について活性を遮断した実験では、ミミウイルスのZamilonへの感受性が認められた。

Raoultによれば、ミミウイルスが資源をめぐって他の微生物やウイルスと競い合っていることを考えると、免疫系の存在は道理にかなっているという。「群集中では、ミミウイルスも原核生物と同じような課題に直面することになります。つまり、他のウイルスや原核生物と競い合わなければならないのです。個人的には、抗生物質を分泌している可能性もあると考えています」。

Raoultはかねてから、ミミウイルスが、細菌やアーキア、真核生物と並んで生物の第4のドメインを構成すると主張している。これには異論も少なくないが、彼は、今回確認されたミミウイルスの防御機構MIMIVIREは極めて古い適応であり、ミミウイルスが系統樹上で独自の枝を形成することをさらに裏付ける知見だと考えている。

1990年代に複数の原核生物ゲノム内にCRISPR配列を見いだした、アリカンテ大学(スペイン)の微生物学者Francisco Mójicaは、他のウイルスでもCRISPRの構成要素は発見されているが、それが免疫系として機能しているのかどうかは不明だと指摘する。彼は、MIMIVIREは、ミミウイルスの祖先が他の微生物から獲得した機能ではないか、と考えている。「MIMIVIREがどういったメカニズムで機能しているのか、とても興味があります。おそらく、CRISPRとはかなり違うものなのではないでしょうか」とMójicaは語る。

ロックフェラー大学(米国ニューヨーク)の細菌学者Luciano Marraffiniは、MIMIVIREがウイルスの防御機構であるとする今回のRaoultらの研究について、説得力があると評価する一方、Mójicaと同様に、MIMIVIREがヴィロファージの感染を阻止する仕組みの解明が重要だと指摘する。

CRISPRの作用機序の解明が画期的なゲノム編集ツールの開発につながったように、ミミウイルスの防御機構の研究もまた、大きな驚きを秘めている可能性がある、とMarraffiniは続ける。「ミミウイルスには、生物学の概念を覆すような発見がまだまだ詰まっていることでしょう。MIMIVIREを含め、その一部は新たな応用につながる可能性があります。それはCRISPRのようなゲノム編集かもしれませんし、全く別の分野での応用かもしれません」。

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160604

原文:Nature (2016-02-29) | doi: 10.1038/nature.2016.19462 | CRISPR-like 'immune' system discovered in giant virus

Adam Levy

参考文献
  1. Levasseur, A. et al. Nature http://dx.doi.org/10.1038/nature17146 (2016).
  2. La Scola, B. et al. Nature 455, 100-104 (2008).
  3. Gaia, M. et al. PLoS ONE 9, e94923 (2014).

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