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まずは3年運動をしてみる~中高年男性の、運動実施率とBMIの5年観察:基礎研レター

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1――40~60歳代男性の3割強が肥満

肥満を判定する指数の1つに、BMI(Body Mass Index)がある。

BMIは、「体重[Kg]/(身長[m])2」で計算することができ、同じ体重であれば、身長が低いほどBMIは大きく、同じ身長であれば、体重が重いほどBMIは大きくなる。

国内では、BMIによる肥満判定として、図表1の判定基準を使っている(*1)。「肥満」と判定されるのはBMIが25以上の人である。

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厚生労働省の「国民健康・栄養調査(平成26年)」によると、性別・年齢階級別の「肥満」の割合は、男性は、20歳代以降年齢とともに高くなり、50歳代をピークとして、以降は低下する。

40~60歳代男性全体の3割強が肥満である。女性は、年齢が高いほど高い(図表2)。

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肥満の程度別にみると、男女とも、BMIが30以上の「肥満2度以上」の割合は1割未満に留まり、肥満の多くがBMIが25以上30未満の「肥満1度」である。この「肥満1度」は、中高年男性に多いことが特徴的だ。

肥満に加え、血圧や血液検査の結果にも異常がある場合、糖尿病、脳血管疾患、心疾患などの生活習慣病を引き起こす可能性が高いことがわかっている。改善策の1つとして、肥満防止・解消のための定期的な運動を行うことが推奨されている。

2――肥満1度の40~50歳代男性の運動実施率と5年後のBMI

では、どの程度運動をすれば効果があるのだろうか。

本稿では、肥満1度の男性について、2010年~2014年の5年間の運動の実施・継続状況と、その間のBMIの改善について紹介する。

分析に使用したデータは、(株)日本医療データセンターによる健康診断データベースである(*2)。分析は、2010年~2014年の5年間において、年1回以上健康診断を受けている人を対象に行った。

このデータベースは、被用者を中心としているため、5年間データが取得できる人が60歳以上では少ない。そこで、本稿では40~50歳代の肥満1度の男性について分析を行うことにする。

1|肥満1度の運動実施率は16.3%。普通体重と同程度

2010年における肥満度別の40~50歳代男性の運動実施率を図表3に示す。ここで、「運動を実施している」とは、健康診断の問診票の「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか」の問に「はい」と答えた人とする。

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その結果、「低体重」の運動実施率が低かったが、「普通体重」「肥満1度」「肥満2度以上」の運動実施率に大きな差はなく、概ね16%程度だった。肥満者が、普通体重者と比べて特に運動をしていない訳ではない。

2|5年後のBMIは、18.1%が改善。5.3%が悪化。

次に、2010年時点で肥満1度だった40~50歳代男性の、5年後のBMIを図表4に示す。

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全体の76.5%が、BMIに変化がなく、肥満1度のままだった。低体重になった人は殆どいなかったが、18.1%が普通体重に改善をしていた。また、肥満2度以上に悪化していたのは5.3%だった。

3|BMI改善層は、5年間で運動実施率が上昇

続いて、5年後のBMIが「普通体重(改善)」「肥満1度(変化なし)」「肥満2度以上(悪化)」の人々それぞれについて、5年間の運動実施率の推移を図表5に示す。

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2010年時点での運動実施率は、5年後のBMIによる差は小さい。ところが、「普通体重(改善)」の運動実施率は年々上昇し、5年間で運動実施率が10ポイント以上高くなっていたのに対し、「肥満1度(変化なし)」はほぼ横ばいだった(*3)。

「肥満2度以上(悪化)」は、1年目は運動実施率が「普通体重(改善)」や「肥満1度(変化なし)」と比べて高かったが、以降低下しており、5年後には最も低くなっていた。「普通体重(改善)」と比べると10ポイント以上の差がついている。

4|5回の健康診断のうち3回以上「運動実施」で24%が改善

見方を変えて、5回の健康診断のうち運動を実施していた回数別の改善状況を図表6に示す。

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運動実施回数が多いほど、普通体重に改善する割合が高い傾向があった。1回の実施だと、実施していない(0回実施)のと大きな差はなかったが、2回で5.5ポイント、3回以上で7.5ポイント程度と、普通体重への改善割合が上がっていた。

今回の結果では、3回(5年間のうち、6割程度の期間)以上実施していれば、4分の1程度が普通体重に改善した。

また、1回も運動を実施していなくても、16.8%が普通体重に改善をしている。これについては、食生活の改善など、運動以外の対策によるものと考えられる。

3――まずは3年運動をしてみる

本稿では、中高年男性に多い「肥満1度」に注目し、5年後にBMIが改善した層、変化がなかった層、悪化した層にわけて、5年間の運動の実施・継続状況を確認した。

その結果、1年目の運動実施率に大きな差はなかったが、5年間の運動実施率の推移をみると、5年後に普通体重に改善している層で、年々上昇していた。

一方で、肥満2度以上に悪化した層では、年々低下しており、5年後の運動実施率は改善している層と比べると10ポイント以上の差があった。

また、5回の健康診断のうち運動を実施していた回数別の改善状況をみると、運動実施回数が多いほど、普通体重への改善割合が高い傾向があった。

これらは、BMIの改善に向けては、運動を単発ではなく、継続的に実施する必要性があることを示している。

一方、5年後に肥満2度以上に悪化していた層で、1年目の運動実施率が高い傾向があった。

運動を実施していたにもかかわらず、効果が得られない等の理由で止めてしまった可能性があるほか、もともと運動の効果が得にくい層である可能性がある。

また、運動実施回数が0回であっても16.8%が、5年後に普通体重に改善していた。さらに、運動実施回数が3回以上では普通体重への改善割合が同程度だった。運動を実施するほど改善するわけではなかった。

これらは、BMIの改善は、運動だけによるものではないことを示している。例えば食生活の改善など運動以外の対策も必要だろう。

運動が健康維持に重要であることは多くが認識しているが、40~50歳代男性で運動を実施しているのは16%程度と低い。

文部科学省「体力・スポーツに関する世論調査」によると、運動をしない最も大きな理由として「時間がない」があがっている。今回扱った40~50歳代男性も、時間が多くは取れない年代かもしれない。

しかし、今回の結果から、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上」といった気軽な運動であっても、5年のうち3年程度以上実施していれば、普通体重への改善が見られた。

まずは、3年、30分程度の運動をしてみてはどうだろうか。

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(*1) 日本肥満学会による判定基準。WHOでは、BMIが25以上30未満は「過体重」、30以上を「肥満」としている。

(*2) (株)日本医療データセンターが了承を得ているいくつかの健康保険組合の健康診断データベースである 。このデータベースは、個人を特定しうる情報を完全に削除した上で市販されており、各種研究で活用されている。

(*3) この年代では、一般に年齢が高いほど運動実施率が高い。

(2016年9月6日「基礎研レター」より転載)
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保険研究部 研究員
村松 容子