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東京と大阪のジニ係数(世帯収入格差)を区別に計算してみた:研究員の眼

2017年02月07日 15時10分 JST | 更新 2017年02月07日 15時10分 JST

~平成25年住宅・土地統計調査の活用

近年、国内の所得格差の拡大や低所得層の増加と困窮などが、大きな社会問題として取り上げられるようになっています。

不動産投資市場を分析する立場としても、世帯収入が高いほど家賃の高い賃貸住宅に居住する傾向があることから、今後の不動産市場の行方を考える上で、世帯収入の動向や現況についても無関心ではいられません。

住宅・土地統計調査は、日本の住宅と住宅に居住している世帯の居住実態を調査し、住生活関連施策の基礎資料を得ることを目的とした統計調査ですが(*1)、市区町村ごとに収入階層別の世帯数を公表しているため、自治体ごとに世帯収入の格差を概観することができます。

そこで、直近の調査である2013年の調査結果をもとに、東京都区部と大阪市について、区別に収入格差の指標であるジニ係数(*2)を計算してみました。

ジニ係数と各区の総世帯に占める年間の世帯収入が300万円未満の世帯構成比を示したのが下の図です。

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東京都区部と大阪市では、世帯の年間収入300万円未満の世帯は、東京都区部では全世帯の33%であるのに対し、大阪市では50%に達するなどの違いがありますが、東京都区部と大阪市のジニ係数は、それぞれ0.408と0.409で、ほぼ同じ結果となりました(*3)。

東京都区部と大阪市の各区で、ジニ係数が最も低かった(格差が小さかった)のが東京都の江戸川区(0.362)で、最も高かったのは大阪市の阿倍野区(0.443)でした。

また、世帯収入300万円未満の世帯比率が最も低かったのが、東京都の千代田区(14%)で、最も高かったのが大阪市の西成区(74%)でした。

ちなみに、同様にジニ係数を計算すると、都道府県では、富山県で最も数値が低く、高知県で最も高いという結果でした。

また、人口規模の大きい21大都市で最もジニ係数が低い都市は相模原市で、最も高い都市は京都市となっています。

世帯収入の違いは、賃貸住宅の家賃だけでなく、持ち家率にも影響を与えます。住宅・土地統計調査によると、特に、マンション(共同住宅)の保有に関して、世帯収入の格差の影響は強く現れるようです。

近年、全国的に居住世帯収入の低下が進展していることから、家賃や分譲価格への下げ圧力が強まる可能性もあります。

しかも、分譲マンションの主要取得層である、30歳代~40歳代の世帯数は、5年ごとにみると、全国はもちろん、東京都や大阪府でも2015年をピークに減少が進むと予測されています。

最近のマイナス金利の中で、不動産価格は上昇を続けてきましたが、2016年9月頃より、首都圏の新築マンション価格は低下傾向が強まっています(*4)。

若年層の減少が進むことを考慮しても、これからのマンション開発においては、金利や経済状況、自社の販売・賃貸情報や経験則に加え、最終需要者である居住者の当該地域の世帯収入の現況や世帯主年齢別の世帯数の予測などの統計の活用が、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

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(*1) 住宅・土地統計調査は5年毎に実施される住宅や居住に関連した基幹統計で、平成25年は全国約5千万世帯から350万世帯を抽出してとりまとめられています。

(*2) ジニ係数は所得格差を示す指標で0から1の値を取り数値が大きいほど所得格差が大きくなります。

(*3) ジニ係数は、収入階層の区分により結果が変わります。ここでは、世帯収入階層9区分での統計を基に計算しています。なお、世帯収入1500万円以上の世帯の平均収入を2500万円と仮定しました。

(*4) 不動産経済研究所「首都圏のマンション市場動向」より

(2017年2月2日「研究員の眼」より転載)

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 不動産市場調査室長

竹内 一雅