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町興しはプロデューサー育成から(横石知二)――ICTで地域を耕す~モノからヒトの時代(1)

2013年12月25日 18時35分 JST | 更新 2014年02月24日 19時12分 JST

町興しの「切り札」にと、多額の予算を投じて最新のICT機器を導入したものの、経済効果はさっぱり......この十数年、全国でそんな問題があることをご存知ですか?私たち「ネットと地域活性化を考える会」は、「モノ」であるICTを使いこなす「ヒト」の育成が重要と考えています。当会は地域活性化に関わる企業、団体、個人から成るグループで、連載では、ICTによる真の地域活性化について提言します。第1回は、山奥の過疎の町を「葉っぱビジネス」で再生し、全国的にも注目を集める株式会社いろどりの横石知二社長です。

私の住む徳島県上勝町は、人口1,840名(2013年11月)。65歳以上は49.57%と全国でも屈指の高齢化が進んでいます。それなのに、この町は今大変な活気です。四半世紀かけて育ててきた「葉っぱビジネス」は年商3億円。1000万円を稼ぐ農家のおばあちゃんもいます。全国の自治体関係者だけでなく、外国政府、メディア関係者が続々と視察に訪れています。

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ICTで町興しに成功した横石知二さん

このビジネスは、日本料理の膳を彩る「つまもの」用の葉っぱを収穫し、東京や京都の料亭等、全国へ販売しています。軌道に載った秘訣の一つは90年代、いち早くITを導入して商品管理等を情報化したこと。コンビニがPOSシステムを使って、在庫や受発注の管理を効率的かつ緻密に行っていたことにヒントを得ました。注文が入ると、農家のおばあちゃんもパソコンやタブレットで把握。年末の今なら正月用の松の注文が増えるといった具合に市場の動向も分かりますので、ニーズに応じた商品を採取して出荷します。受注も競争ですが、これも大事。「お隣さんに負けまい」とお年寄りたちが目の色を変えて売上げアップに邁進しています。

よく誤解されますが、ITが「打ち出の小槌」になって「葉っぱビジネス」の成功をもたらしたわけではありません。所詮は「道具」です。儲かるための仕組みを考えることが前提。その仕組みのどこに道具を生かすかを考えなければ、ただの「ガラクタ」です。

仕組みを作るには、まずマーケットインの発想から。他地域の方には「出口」を先に作れ、と助言しています。出口というのはお客様、市場のこと。どんなに良い商品を作っても、お客様が何を求めているのか、季節によって変化するのか等を知らなければ売れません。実は初期の頃は出口が曖昧で赤字続きでした。そこで料亭が求める「つまもの」は何か。バブルの頃、大阪や京都の料亭を2年かけ、何百軒と訪ね歩きました。安月給は使い果たし、痛風にもなりましたが、「傷やシミがあるものは料理が引き立たない」「形や大きさは揃っていること」等が分かってきます。現場で得た「売れ筋」情報を農家と共有して、少しずつ意識を変えていきました。

仕組みを回していくには、人の心を読めないといけません。ICTを導入し、最新で便利なツールだからといって、農家のお年寄りは使ってくれません。横並び意識の強いのを逆手に取って、「お隣さんはこの機械でもっと儲かっていますよ」と、さりげなく勧める。あるいはおじいちゃんには若い女性スタッフを、おばあちゃんには若いイケメン社員を担当にして励ます。すると「あら、ウチもやってみようかしら」と興味を持つ。人間は面白いもので、同じことを勧めるにも接し方で随分と変わるのです。

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70代の農家女性もタブレットやパソコンを駆使

私どもがICTで軌道に乗れたのは、儲かる仕組みを考え、土地柄を理解し、一人一人がイキイキと働くというプロセスの積み重ねがあったからです。結局、誰かがプロデューサーとして、全体の仕組みを作って回すことが必要です。私自身、仕事の9割は人をどう動かすかに頭を使ってきました。

東北の被災地復興でも、箱モノづくりに重点が置かれがちですが、むしろ「人」の存在が不可欠。その土地の産物へのニーズを都会で調査して把握し、仮設住宅の近くに畑や集積所を整備する。「この野菜を作れる人はいるか?」と募集したら、興味や働く意欲を持つ人が増えるはず。作った野菜が売れたら、うれしくてもっと売れるようにと欲が出てくる。働いて儲けようとなれば、公的支援からの自立も早まります。それが積み重なっていくことで、その地域全体の復興や活性化になるのです。

しかし日本ではプロデューサー的な人材を育てる環境が乏しい。私のような人間が試行錯誤で個別に奮闘しているのが実状です。たとえば国や自治体が育成や研修などの事業を行うようになれば、もう少し変わってくるのではないでしょうか。政治や行政には、ICTを戦略的に活用できる人材への投資に前向きになっていただきたいと思います。