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日本の酒から、世界の文化を想う。

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 日本は島国で、独特の文化を発展させてきたと言われる。ともすれば世界とは切り離された歴史を歩んできたと考えられがちだ。しかし、日本には日本酒があり、焼酎がある。これら「和酒」の存在は、日本が孤立しておらず、むしろ世界と盛んに文化交流をしてきたことを示している。

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※画像はこちらのページからお借りしました。

 たとえば奈良県の油長酒造では、「菩提酛(ぼだいもと)づくり」という珍しい製法の酒を作っている。これは、室町時代に正暦寺で行われていた酒造りの製法を、現代に復活させたものだ。そして、その作り方は紹興酒の製法によく似ているらしいのだ。

 当時、大陸から渡ってきた最先端の科学技術や文化は「寺」に集まっていた。したがって酒造りの方法も、おそらく渡来技術を多いに参考にしていただろう。

 菩提酛づくりで製造される「奈良酒」は、現代の清酒の起源だ。

 奈良酒が生まれる以前の日本では、酒といえば「にごり酒」、すなわちドブロクを意味していた。奈良酒で醪(もろみ)を絞るという工程が加わり、現代でも目にするような澄んだ酒、清酒が誕生した。

 醪(もろみ)を絞れば当然、酒粕(さけかす)が出る。清酒の誕生は、つまり酒粕の誕生でもあった。だから現代でも酒粕で漬けた漬け物のことを「奈良漬け」と呼ぶのだろう。

 ※なお、酒の沈殿物にウリなどを漬けた食品は平安時代からあり、「かす漬け」と呼ばれていたらしい。

 また、世界にはたくさんの蒸留酒がある。

 蒸留の技術は近世、フランスかスペインの錬金術師によって確立されたと言われている。当時の錬金術師たちは、ワインをゆっくりと温めると沸騰が2回あることに気がついた。アルコールの沸点はおよそ78℃、水の沸点は100℃だ。沸点に差があるため、沸騰が2回起きる。先に沸騰したときの蒸気を集めて冷やすと、高濃度のアルコールが得られることに錬金術師たちは気づいた。

 ワインを蒸留して作る酒を、ブランデーという。ブランデーという名前自体が、「ヴァン・ド・ブリュレ」すなわち焼いたワインという意味のフランス語を語源としている。

 錬金術師の確立した蒸留技術は、その後、世界中に広がっていく。

 スペインではマール、イタリアではグラッパという酒を作り、またアイルランドではウイスキーを生んだ。さらに東欧やロシアではウォッカが発明され、北欧ではじゃがいもを原料にアクアヴィットという酒が作られるようになった。

 蒸留技術はヨーロッパに留まらず、新大陸にも渡り、やがてラム酒やテキーラ、バーボンウイスキーを発展させた。さらに中東ではアラックという蒸留酒が作られるようになった。中国には汾酒、白酒と呼ばれる蒸留酒がある。蒸留技術は世界中に伝わり、現地の農産物を原料に独特の酒を生み出した。

 やがて蒸留技術は、琉球に渡る。米と黒麹を原料に、泡盛が作られるようになる。さらに蒸留技術は薩摩に伝わり、私たちにも馴染みぶかい芋焼酎が発明された。

 民族主義は近現代になって生まれた思想だ。自分たちの民族の文化が独特で特別なものだと信じるのは、とても気持ちがいい。しかし現実には、完全に独立した知識や技術、文化など存在しない。情報の交換はヒトをヒトたらしめる習性の1つであり、あらゆる文化は、他の文化からの影響なくして存在しない。

 清酒や焼酎は、日本の文化を特徴づけるものの1つだろう。しかし、これらいかにも「日本的」なものでさえ、世界規模での文化交流のなかで生み出された。

 歴史上、日本は決して孤立していたわけではない。

 和酒の存在は、それを教えてくれる。

(2013年12月18日「デマこいてんじゃねえ!」より転載)

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