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「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」と名付ける安倍政権のセンス

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■結局、男性社会の中に女性を「配置」していくのか

安倍政権の成長戦略のひとつ、「2020年までに指導的な地位に占める女性の割合を30%にする」との提言、政府は経済界に「まずは役員に一人は女性を登用する」ことを要請している。それもそのはず、あとわずか6年で30%という数値を作り上げるためには、何がしかのプログラムを策定し企業に運用を促していく時間など無いわけで、今いる人材だけでなんとか3割ヨロシク、と声をかけてまわることが現実路線となる。政府は14日に、女性の社会進出を促進するための会合を初めて開いたが、その会の名前を聞いて仰天した。
「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」......開いた口が塞がらない。

政府要請「まずは一人」とこのネーミングを掛け合わせれば、結局はこれまで女性を管理職にしてこなかった男性社会の中に、いかにして女性を「配置」していくかが主軸となっているかがバレてしまう。現政権は、性差を巡る施策におけるネーミングでことごとく失敗を重ねてきた。例えば一年前、有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」で検討された「生命と女性の手帳(通称:女性手帳)」が妊娠・出産の適齢期を記すなどして、女性の生き方に国家が介入すべきではないとの非難を浴びたことは記憶に新しい。安倍政権が早くから打ち出してきた「女性管理職の増加」、こうしていざ具体的に動き出した途端にこのネーミング。読売新聞が15日の朝刊に載せた短いニュース記事、「民間主導で男性経営者に女性の積極登用を進めてもらう狙いがある」との解説が真意を透かしている。

■男性リーダーのネットワークで女子を多めに昇格させていく

第一子を出産した女性の6割が離職を余儀なくされる現状がなかなか改善されない元凶は、民間企業の上層部の無理解や企業ごとの色濃い慣習にある。ならば、女性の登用を判断する経営側の意識や根付く企業風土の改善を急ぐべきなのだが、政府が企業に「男性が女性登用を加速させて」と露骨に宣言する限りにおいて、結局、毎度変わらぬ管轄が続いていく。今回のようにパーセンテージを設定し、総力を挙げてその数値に持っていこうと努力する流れがいかがわしいのは、性差を根本的にほどく意思が感じられないから。そのことを改めて諭してくる会合名と言える。初会合に参加したのは、青井浩(丸井グループ)/伊藤秀二(カルビー)/大宮英明(三菱重工業)/佐久間英利(千葉銀行)/長谷川閑史(武田薬品工業)/藤森義明(LIXIL)、以上6名の男性経営者。内閣府男女共同参画局のFACEBOOKには「本宣言に共鳴する男性リーダーの輪を拡げ、輝く女性の活躍を加速していただくことを目指します」とあるから、これはもう、男性リーダーのネットワークを使って、女性を多めに昇格させていきましょう、と宣言しちゃったわけだ。

■「女性の意欲を高めるようなメッセージを出す」そうです

時を同じくして14日、自民党は党内で「女性の健康の包括的支援に関する法案」を了承した。時事通信社の記事によれば「就業や婚姻、出産などによる女性の心身の変化に応じて適切な健康支援を図る」とあるから、どうしても昨年の「女性手帳」の影がちらついてしまうが、4月1日付で自民党が公表した「女性の健康の包括的支援の実現に向けて <3つの提言>(こちら←PDFが開きます)」を読むと、女性は「ホルモンの動態に影響を受けながら生活を送る。この影響による健康リスクを低減させ、あるいは心身の脆弱性を補完することは、人生各期における女性の自己実現を促進し、社会参加を後押しすることにもつながる」とするなど冷静な分析も数多くなされており、ひとまず、昨年のような「押し売り」はない。

国策として取り組むべき重要性・ 緊急性・効果性の高いと思われる3つに「生涯を通じた女性の健康支援」「安全な出産環境」「女性の健康を包括的に支援する政策を推進する法的基盤と体制」を挙げているが、(医療面の)安全な出産環境はもとより、働く女性の環境も改めなければならないはず。この提言にはごくわずかながらそこへの言及もあるので、法案がどうまとまっていくのか期待したい。だからこそ、何度でも繰り返してしまうけれど、出産環境を整える上でも決して無関係ではない女性管理職の増加に向けた議論のネーミングが「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」ではキビしい。NHKニュースによれば、この会合で出席者から「会議として女性の意欲を高めるようなメッセージを出すべきだ」という意見が出されたというから、男性が具体的にはピタリとも動かない提言が出てくるのではないかと、先んじた警戒心を投げてみる。

■本年度のキャッチフレーズは「家事場のパパヂカラ」

頻繁に取り上げられる数値だが、世界経済フォーラムが2006年から行っている「世界男女格差報告」の最新回で、日本は世界136ヵ国のうち105位。前回の調査は101位なので、徐々に順位を落としている。いよいよこの低い順位を改善すべき時に、早速「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」では呆れてしまう。重要視されているのはやはり人より数値なのか。そもそも経済界は数値を作ることが得意だ。逆に、数値という具体以外の抽象(性差など)を改善することが不得意だ。「男女共同参画社会基本法」の本年度のキャッチフレーズは、公募で決まった「家事場のパパヂカラ」だそう。しかし、この成長戦略は、そもそも「家事場」を見ているのかどうかすら怪しい。対岸の「火事場」を眺めたり、何人かを橋渡しで連れてきたりするだけではいけない。

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