学校では教えてくれなかった「英語を読むコツ」 逆説を見たら「主張」を疑え

毎朝のサバイバル英文読解 その2

学生の頃と違って忙しい社会人の皆さんにとって、英語を読むことは「目的」ではなく「手段」ではないでしょうか。英文から有益な情報を引き出すための手段として英語に接するのならば、学生のときのように単語をコツコツ覚えて1文1文精読するのではなく、ある程度の単語力で英文の意図を効率的に把握する力が必要です。

難しいことに思えるかもしれませんが、じつはちょっとしたコツを知っているだけで、皆さんの英文読解力は劇的に向上します。そのコツとは「英語の文章の定石を知る」ということ。定石ですから、急場しのぎではなく、一生使えるツールです。学校では教えてくれなかった、でもとても重要な「英語を読むコツ」を、実際に問題を解いてもらいながらお教えしましょう。

【問題】

Q 出だしを見て、どのような文章展開が予想できるでしょうか?

We often admire people for their gift of gab. Nowadays, people put a lot of effort in developing their ability to speak well and talk their way out of trouble. Increasingly, however, we recognize that what people really need from us is our ability to listen. This has to be sharpened by developing a keen interest in others.

【解説】

一般論を述べるときのサイン

前回は、butの後に主張がくると覚えておくよりも、否定文のあとの肯定文に注目すれば主張を的確に見抜くことができる、ということをお話ししました。今回はその応用です。

応用といっても、話は非常に簡単です。

第1回でもお話ししたように、英文においてはまずは主張から入るのではなく、一般論から入るのが通例です。世間の人の多くは○○と思っているけれど、実際にはそんなことはないのですよ」というようなパターンですね。

これが簡単だと言える理由は2つあります。1つは、日本語の文章でも「世間ではよく...」とか「...する人が多いのですが」とかいった文章展開がよく使われので、なじみがあるということ。2つ目は、このパターンのときには、howeverなどのわかりやすい主張の目印が使われるケースが多いということです。

ここでこのサインとして覚えておきたいのは、oftenという単語です。

問題の文章は、1文目がWe often(我々はしばしば)で始まっています。ということは、ここから「みんな○○だけど」という文章がきて、その後に「でも実際は...」という展開になることが、なんとなく予想できるのではないでしょうか。

そのことを念頭に置きながら、英文を読み進めていきましょう。We often admire people for their gift of gab.(我々はよく、人のおしゃべりの才能を褒め称える)という文は、後で否定されるかもしれません。ちなみに、giftは「才能」という意味です。もともとは「神様からのギフト(贈り物)」というところから、「才能」という意味に発展しました。gabは難しい単語ですが、「おしゃべり」という意味です。

2文目では、Nowadays, people put a lot of effort in developing their ability to speak well and talk their way out of trouble.(最近は、人は上手に話したり、難局を巧みな言葉で切り抜けたりする能力を伸ばすことに多くの労力を割いている)と、1文目の内容と同じ流れで「話術」についての話題が繰り広げられています。

逆説を見たら「主張」を疑え!

3文目でIncreasingly, however, we recognize ... と、ここでついに逆接を表すhoweverが出てきました。ここからが主張と考えます。what people really need from us is our ability to listen(我々に本当に必要なものは人の話を聞く能力である)から、主張は「聞く力が大事」だとわかります。

ちなみに、一般論のgift of gabでは「力」のことをgift(才能)と表現しています。一方、主張のability to listenでは「力」のことをability(能力)と表しています。英語ネイティブはこのように語彙にバリエーションをつけることを好みますし、そこで文章の力を見せつけるという側面もあるのです。

問題文の和訳例

我々はよく、人のおしゃべりの才能を褒め称える。最近は、人は上手に話したり、難局を巧みな言葉で切り抜けたりする能力を伸ばすことに多くの労力を割いている。しかしながら、我々に本当に必要なものは人の話を聞く能力であるということが次第に分かってきた。他人に強い関心を持つことで、この能力を磨かなければならない。

関正生

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