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燃やせない化石燃料は「座礁資産」/世界で広がる関連投資からの撤退

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森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。新年1月号の「時評」欄では、化石燃料を「座礁資産」と捉え始めた世界の潮流について、京都大学名誉教授の松下和夫さんが報告しています。

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気候変動に関するパリ協定が2016年11月4日に発効した。気候変動否定論者のドナルド・トランプ氏が米大統領に選ばれたものの、世界は確実に脱炭素(脱化石燃料)に向かっている。そのような中で「座礁資産」という考え方が広がっている。座礁資産とは利益を回収できない資産である。

パリ協定では世界全体の気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満に抑え、さらに1.5度を目指し努力することが合意されている。そのために今世紀後半には温室効果ガスの人為的な排出と森林などの吸収源による除去との均衡を達成すること(ネット・ゼロ・エミッション)が目指されている。

座礁資産という考え方のきっかけとなったのは、英国のシンクタンク、カーボン・トラッカーの2011年の「燃やせない炭素」報告書である。これによると、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えるためには、現在世界で保有されている化石燃料の8割は実は燃やせない、とされた。同様に、国際エネルギー機関(IEA)でも3分の2は燃やせないとの試算を行っている。

このため、世界の主要機関投資家の間で、石炭等の化石燃料は、2度目標達成のための規制強化により使用できなくなるリスクがある資産(すなわち「座礁資産」)と捉える見方が広がっている。そして投資決定に当たり、企業価値に影響を与えるリスクを評価し、回収不能となる可能性を持つ資産である化石燃料関連への投資の引き揚げ(これを「ダイベストメント」という)をする動きが拡大している。

2015年末には化石燃料から投資撤退を決定した団体は世界で約500団体、総額約400兆円にのぼった。その後も例えば資産規模100兆円以上を有する世界最大規模の政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金グローバル」は、議会の承認を経て石炭関連株式からの投資撤退方針を決定した。

売却対象には日本の北海道電力、四国電力なども含まれている。化石燃料資産を保有し続けることが、中長期的にもビジネスリスクの大きいものになっているとの認識が高まっているのである。

一方で、事業運営を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す世界の主要企業の連合体「RE100」が2014年に結成された。これには2016年11月時点で、イケア、ブルームバーグ、マイクロソフト、BMWなど83社が参画している。欧米諸国に加えて中国やインドの企業も含まれる。

加盟各社は再生可能エネルギーの導入実績を毎年、気候変動質問書を通してRE100に報告し、その結果を「RE100年次報告書」で公表する。RE100にコミットしているグーグルやフェイスブックは、この転換は「社会貢献ではなく採算を踏まえたものだ」としている。

トランプ氏の気候変動政策の如何にかかわらず、米国と世界の多くの著名企業は、進行する気候変動が企業活動や投資にとって深刻なリスクであることを認識し、すでに経済活動を大きく転換し始めている。