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ツバル首相談話:COP22開催によせて

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ツバル国は、すべての国が参加する京都議定書に続く温室効果ガス削減に関する法的拘束力があるルール作り、を長年国際会議の席で要望してきました。11月4日にはそれに近い形で「パリ協定」が発効となりました。7日からは同協定の運用ルールなどを取り決める初めての場となるCOP22がモロッコで開催されます。この国際会議を目前に控えたツバル首相の気持ちをうかがいました。

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COP22(第22回気候変動枠組条約締約国会議)に期待すること

11月7日から18日までモロッコ、マラケシュで開催されるCOP22は、とても重要な会議だと理解しています。パリ協定発効後の初の国際会議であり、パリ協定が定めた長期目標に向かって、最初の一歩を踏み出す重要な会議となります。

COP21ではパリ協定を実施していくための詳細な運用ルールや手続きを決める時間がありませんでした。ツバルを含む全ての締約国の交渉官は、COP22で運用ルール設定や手続きを決める必要があると認識しています。もしここでしっかりとした足場を築いておかければ、次の段階へ進むことは難しくなるでしょう。

パリ協定は世界共通の協定です、私たちは共に対策を進め、一緒に履行する必要があります。特に、地球の平均気温の上昇を1.5 ℃未満に抑えるという長期的な温度目標を達成するためには、温室効果ガスの排出を徹底して削減していかなければなりません。

同時に、すでに海面上昇による塩害等で苦しんでいる、ツバルを始めとする大洋州諸国、カリブ海諸国、インド洋諸国、アフリカの小さな島々を支援していく必要もあります。しかし、これは島だけではなくスイスのような山に囲まれた国々にも言えることです。あらゆる地域でその影響を見ることができます。ですから、全ての国々が協力して対策を進める必要があるのです。

マラケシュではパリ協定を実施していくための運用ルールや手続きに合意し、具体的な対策に着手する必要があります。そして、その対策を見直し強化し続けていく必要もあります。私たちは私たちが達成しなければならない目標を忘れてはいけません。さもないと、パリ協定は、対策が実施されない机上の合意となってしまう可能性があります。


パリ協定の実施にあたり、各国への要望すること

大洋州諸国を始め多くの国はパリ協定を批准する動きとなっています。しかし、それらの国々の温室効果ガスの排出量は多くはありません。ゆえに、私はパリ協定を批准したアメリカ、中国、インド、ニュージーランド、EU、カナダ等の排出量の大きい国々が、長期目標を達成していくよう働きかけていきたいと考えています。

それらの国々が強いリーダーシップを発揮してくれることを期待しています。私たちは後戻りすることができない地点にいるのです。この機会をとらえて、前に進まなければいけません。私たちが行動する日が来たのです。私は全ての国がパリ協定に参加してくれることを強く信じています。


パリ協定を批准していない国へメッセージ

107ある気候変動枠組条約の締約国のうち87カ国がすでにパリ協定を批准しています(2016 年10月5日現在)。そして、この協定は11月4日に発効します。批准をためらっている国々も、それぞれのリーダーが、確固たるリーダーシップを発揮して批准に至るであろうことを信じています。それらの国々に調整のために時間が必要なことは分かっているつもりです。私たちはそれらの国々が一刻も早い批准に至るように助言したい。もし、パリ協定を批准しなかったら、より大きな不利益を被ることは明らかなことなのです。


ツバルの未来のため必要なこと

パリ協定はまだ完璧なものではありません。しかし、世界の人々を救い守るための手段や指針となるでしょう。さらに、今はまだありませんが、気候変動の影響を受けている人々の権利を保護する法的な仕組みが必要です。海面上昇だけではなく、サイクロン、干ばつ、洪水なども、さらに激しく頻度も増えて来ています。

特に我々のような環礁諸国には法的な仕組みが必要です。一部の人々は、1951年に採択されたた難民[1]の地位に関する条約(難民条約)のもとで、保護を受けることができると議論していますが。しかし、私はこれには全面的に反対します。

まず、仮に私たちツバル人が海面上昇の影響によって避難しなければならなくなった場合、難民条約のもとでは、難民と認定することができません。そして、私はツバル人を難民と呼ぶことも認めません。そもそも私たちは、先進工業国によって引き起こされた気候変動の影響のために、私たちの愛する島から離れるなどということは選択しないのです。

先進工業国が我々を難民として扱うことはできないのです。そのようなことが起きないためにも、私たちはパリ協定の実施を目指します。COP22では、その第一歩として、パリ協定を実施して行くために必要な運用ルールや手続きに合意をし、地球の平均気温の上昇を1.5 ℃未満に抑えるという長期的な温度目標を達成するための道筋を明らかにしていきます。

それはとても厳しく難しいことですが、参加する各国が一致団結して協力すれば達成できると信じています。

同時に、私たちは気候変動の影響によって避難しなければならない人々の人権を守り、保護をする法的な枠組みを作るために必死の働きかけをしてきました。すでに、今年の国連総会で、そのような枠組みを設立することを盛り込んだ国連決議を採択するよう提案しています。この提案に対しても、国際社会から広く指示が得られる事を望んでいます。

2016年10月20日 ツバル国首相エネレ・ソポアンガ氏のプライベートオフィスにて。
インタビュー 松浦 克彦 監修 川阪 京子 編集 遠藤 秀一

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[1] 「難民」とは一般的には、国境を越えて、庇護を求めるひとたちのことを指すが、1951年に採択された難民の地域に関する条約の第1条に規定されている「難民」の定義のよると、気候変動や自然災害によって被災し、国境を超えて他国に避難した人たちは、「難民」とは認められない。ゆえに、法的に「環境難民」や「気候難民」と呼ばれる人はいない。