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疲労回復から痛み緩和、筋肉増強まで! SXSW発ウェアラブル"第三の波"

2016年04月21日 16時25分 JST | 更新 2016年04月21日 16時25分 JST

博報堂生活総合研究所の酒井崇匡です。

今回から数回に分けて、2016年3月に開催されたSXSW(サウスバイサウスウエスト)2016を視察する中で発見した、私たちの生活を大きく変えていくであろう新たな潮流についてレポートしていきます。

第一回目は、最近日本でも徐々に浸透しつつあるウェアラブルデバイスについて。"第三の波"とでも言うべき、これまでとは全く異なるタイプが本格的に登場してきたというお話です。

未来を開拓する場としてのSXSW

そもそもSXSWとは米国オースティンで毎年3月に開催されている世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバルです。毎年規模が拡大しており、今では延べ10万人が参加するまでに成長しています。

今回私が参加したのは新しいテクノロジーを活用したプロダクトやサービスを扱うインタラクティブ部門ですが、このイベントのユニークなところはミュージック、フィルム部門も同時に開催されていることによる、独特の気風です。

期間中は様々な業界の人びとで街が溢れかえるのはもちろんのこと、きちんと完成された新商品の業界見本市というより、粗削りで未完成なものも含め「こんな面白いもの作ってみたぜ!こんな面白いことやってみたぜ!」という未来の開拓者精神こそが評価される雰囲気があります。

これまでも、TwitterやFoursquareはSXSWをきっかけに世界的な注目を集めるようになりましたが、具体的なプロダクトやサービスそのものというより、その裏側にある発想やコンセプトが評価され、再解釈され、拡がっていくというケースも多いようです。

いずれにせよ、未来の新しい潮流を発見するには、まさにうってつけの場所であることに間違いありません。

sxsw

(写真注:SXSW2016メイン会場の様子)

疲労回復、痛み緩和、筋肉増強など、新手のウェアラブルが目白押し

これまでもSXSWには様々なウェアラブルデバイスが出展されていますが、今年特徴的だったのは、体に対して積極的に影響を及ぼしていくタイプのデバイスが数多く登場していることです。

例えばInteractive Innovation Awardのウェアラブル部門を今年受賞したQuellは慢性的な体の痛みを緩和するデバイスです。

quell

(写真注:痛みを緩和するウェアラブルQuell)

太ももに装着し、感覚神経に微細な電気信号を送ることで脳に働きかけ、脳がそれに反応して痛みを緩和する物質を放出する仕組みです。脳に働きかけて痛みを消す、というとにわかには信じがたいですが、既に米国食品薬品局(FDA)の承認を受けており、薬に頼らない疼痛緩和として注目を集めています。

また、同様に脳に働きかけ、気分をコントロールするThyncというヘッドバンド型のデバイスも登場しています。集中したり頑張りたい時用のEnergy vibesと、眠ったりリラックスしたい時用のCalm vibesの2種類のモードがあり、超音波と微電流で脳を活性化したり、落ち着かせることができます。

thync

(写真注:気分をコントロールするウェアラブルThync)

Antelope suitというスーツ型のデバイスは、装着者が行っている運動に応じて筋肉に電気刺激を与えることで、筋肉の動きを活性化して運動の効果を最大限に高める、というアプローチのデバイスでした。これらのデバイスはそれぞれスマートフォン等のアプリと連動しており、細かい設定ができるようになっています。

antelope suit

(写真注:筋肉の運動効率を高めるウェアラブルAntelope suit)

このようなデバイスは今年のSXSWで急に登場したわけではなく、昨年までも睡眠の質を改善するNeuro:onや、体温を調整するWristifyというデバイスが出展されていました。

しかし、今年のSXSWではそのように体に積極的に働きかけることでパフォーマンスを高めたり、痛みなどの課題を解決するような新しいタイプのウェアラブルデバイスがさらに幅広い分野で登場してきた印象があります。

現在の主流は情報アウトプット型と情報インプット型

この動きがなぜ新しいのかというと、現在主流となっているウェアラブルデバイスとは明らかに異なるタイプだからです。

自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)でも詳しく紹介していますが、これまでのウェアラブルは大きく分けて、apple watchやgoogle glassのようにデバイス上での情報表示に重点を置く、つまり情報アウトプット型のウェアラブルと、fitbitやjawboneのようにユーザーの体から活動量や心拍数などのバイタルデータを取得し、トラッキングすることに重点を置く情報インプット型のウェアラブルという2つのタイプがありました。

要するに、情報を表示する(アウトプットする)か、取得する(インプットする)かで大きく分かれていたわけですが、前述したような新しいタイプのウェアラブルデバイスは、このどちらにも当てはまりません。情報をアウトプット、インプットするというよりも、体の働きそのものを積極的にサポートしています。さながらパワードスーツのような機能を持った、パワード型ウェアラブルとでもいうべきタイプです。

パワード型は「一番分かりやすい」ウェアラブルかも

このようなパワード型ウェアラブルに総じて言えるのは、「使用目的が非常にはっきりしており、着けてすぐに効果を感じることができる」という点です。

特定の目的に機能が集中しているだけに、対象となるユーザーや利用シーンを選びそうなものが多い一方で、ある意味「一番分かりやすい」ウェアラブルということもできそうです。これまでのウェアラブルは比較的、幅広い層を対象としたものが多かったため、その点でも違いを感じます。

また、「これって普通の健康器具とは何が違うの?」という冷静な疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。大きな違いとして、これらのデバイスはスマホやタブレット上のアプリと連動することで、個々のユーザーに最適な効果を与えられるように、働きを随時調整できることが挙げられます。デバイスによってはセンサーを内蔵することで、自動的に機能を最適化するものも出てきています。アプリがアップデートすることで、デバイスは変わらなくても使える機能が増えていく、ということも考えられるでしょう。

このタイプは今後も様々な面白い機能を持ったデバイスが登場しそうなので、引き続き注目していきたいと思います。