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原油価格急落で本当に日本は恩恵をこうむるのか?

2014年11月28日 23時14分 JST | 更新 2015年01月28日 19時12分 JST

OPECの減産合意が出来なかったことで、原油価格が急落しています。普通に考えるとエネルギーの大半を輸入に頼っている日本は、その恩恵をこうむるはずです。

しかし僕の考えでは、みんなが考えているほど恩恵は大きくないと思います。

この議論に入る前に、まず石油と天然ガスは、似ているようで、かなり性格が異なることを強調しておきたいと思います。

石油はタンカーに積み込めば世界のどこでも大量に安価に運べるので、極めてグローバルなコモディティとなっています。

これに対して天然ガスは取扱が厄介で、効率的に運搬するには、まず巨大な冷凍庫のような装置で液化してやる必要があります。それをLNG船で運び、消費地でもういちど液体から気体に戻してやるという面倒な手順を踏みます。

このようなステップを実現するためには、多大な先行投資が必要です。従って、長期に渡り、安定的な供給を確保するためには、10年契約とか20年契約を結ぶのが普通です。

日本はカタールなどから天然ガスを買っています。その契約の過半数は固定的で融通の利かない長期契約です。東日本大震災で原発が止まった時、日本は足下を見られて高い天然ガスを売り付けられ、今でも価格は高止まりしたままです。

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日本の貿易収支の悪化の原因は、原油ではなく、天然ガスであることに注意すべきです。

日本の発電所は主に天然ガスで動いているので、原油価格が下がったからといって電気代が安くなることは無いと思います。

日本が輸入する原油は、精製されてガソリンなどになります。こちらの方の価格は、下がると思います。

ただ日本は既に人口一人当たりのガソリン消費量の少ない、「エコな国」になっているので、普段クルマに乗らない都心に住む勤め人には、原油安のメリットは余り実感できない筈です。

比較するために欧州に目を転じると、ドイツをはじめとする各国はパイプラインを経由してロシアから天然ガスを買っています。この天然ガスの価格決定は、ブレント原油価格を基準としています。

すると原油価格が下がると、天然ガスの価格も連動して下がるのです。天然ガス輸入価格が硬直的な日本とは事情が異なるわけです。

日本ではエネルギー価格が高くなると国民のエネルギー安全保障への関心が高まり、議論沸騰する傾向があります。しかし真剣に長期でのエネルギー戦略を練らないといけない時とは、買い手市場になっている、今のような時期なのです。

今回の原油安の原因を作ったシェールオイルの生産調整には、かなり時間がかかると思います。北米のオイルリグの10%や20%が休止したくらいで、原油価格が底打ちするか? といえば、それは疑問です。因みにシェールガスのリグの場合は、1,600本が僅か400本まで減っても価格は底入れしませんでした

なお、僕は日本のエネルギー安全保障は、メタンハイドレートなどを「日本独自で開発する」という道ではないと思っています。経済的合理性を無視したプロジェクトに国費を投入しても、それは国民の血税を大陸棚に投棄するのに似て「安心を確保する」のとは逆の効果をもたらす可能性が高いです。

実際、そういう馬鹿な事をやっている例が我々の目の前にあります。

それはブラジルのペトロブラス(ティッカーシンボル:PBR)です。

ペトロブラスはリオデジャネイロ沖の大深水油田を発見しましたが、(これは、カネになる)と思った利権に目ざとい政治家たちがウヨウヨ寄ってきて、「ブラジルの資源を、ブラジル人が独り占めするのは当然だ」と主張しました。

まず外国企業を追い出し、ローカル調達を義務付けました。自由競争が無くなってしまったわけです。

次に株主から強奪するようなやり方で過半数議決権を政府が取り戻しました。ところが強欲な政治家は、発注で便宜を図る代わりに裏金を要求したわけです。

裏帳簿の存在が発覚し、公認会計士事務所と政府がいさかいを起こし、決算が〆られなくなりました。

その関係で、早ければ数日中にもペトロブラスはテクニカル・デフォルトを宣告されると思います。

そうなれば、プロジェクト半ばで、未だ完成を見ていないペトロブラスのオフショア生産設備の今後の資金調達メドは、暗礁に乗り上げるわけです。

エネルギー・コストは、国民の全員の家計に影響を及ぼす、きわめて公共性の高いコストです。従って、国や企業は、「一円でも安く仕入れる」ために最大の努力を傾ける必要があります。

政治家や官僚はエネルギー・コストが高騰したときに忙しいフリをして東奔西走するものですが、本当に戦略的に立ち回らないといけない瞬間とは、買い手市場になっている今のようなタイミングなのです。