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森友学園で見えた報道の変化 テレビの「焦り」と「スローニュース化」

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森友学園に関する報道をめぐって、「フェーズが変わった」と思う瞬間があった。

当初、どのメディアもアクセスできなかった籠池理事長に独占インタビューをしたノンフィクション作家の菅野完氏を各局の記者たちが取り囲む、いわゆる「ぶら下がり取材」映像を目にした時である。

籠池理事長が再度、東京の菅野氏の事務所を訪れインタビューに応じた際、テレビ各局は籠池氏に話を聞いた菅野氏にマイクを向け、詳細を聞き出そうとした。

私はその様子を見て、「これまでとテレビ報道のフェーズが変わった」と少し驚いたのである。

私が「ハフィントンポスト」の編集主幹になった2014年冬、関東甲信越地方で大雪が降り孤立集落が発生した。

早朝、孤立状態になった人たちのTwitterを読んだ私は、「ハフィントンポスト」で大きく取り上げるように編集部に連絡をした。

ハフポストはSNSを駆使して情報を集め、現況や必要なものを随時報道した。(http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/16/kanto-heavy-snow_n_4800015.html

その日は「報道ステーションSUNDAY」の放送日だったのでテレビ局に向かった私は、当然番組でも取り上げるかと思っていたのだが、そうはいかなかった。

「記者が大雪で立ち往生して現地に間に合わないんです!」と言う。

そりゃそうだ、大雪なんだから。。結局、自治体からの情報をベースに伝えることに留まった。

基本的にテレビ局の報道では、ネット情報だけではなく自局の記者が現地で取材をして確認することがマストである。これではネットの速さについていけないなあ、とテレビ報道の厳格な取材ハードルを痛感したものだ。

「ウラがとれない」ことに慎重すぎて、ネット利用者から「なぜネットに出ているのに、テレビで伝えないのか」と批判されることもある。

自局がウラを確認するまで放送しない、という厳格なハードルに苦闘しながら報道をするのがテレビだと思っていた。さらにいえば、それがSNSとはまた違う強みだと思っていた。

そのため、森友学園報道に関して、各局の記者が菅野氏にマイクを向けている映像に違和感を覚えたのである。

以前のテレビならば、菅野氏から詳細を聞くのではなく、時間がかかっても、記者自らが籠池氏に直接インタビューをするべく手を尽くすはずである。

大きなニュースが伝わるプラットフォームの役割をSNSが果たすようになったことで、そのスピードに追いつこうとするテレビの焦りを観たような思いがした。テレビ報道のフェーズがまたひとつ変わったと思える瞬間だった。

海外では今、既存メディアそれ自体が「スローニュース」として、SNSという巨大情報ツールの検証役を担おうとしている。「スローニュース」とは時間をかけた調査報道のことだ。

朝日新聞の平和博記者によると、「英BBCはファクトチェックの専従チームを拡充し、ブレイキング(速報)ニュースに加えて分析や深掘りの"スローニュース"に力を入れると表明」、他にもCNNは速報、中継ではなくファクトチェックや分析に力を入れ始めたという。(http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/fake-news-slow-news_b_14625234.html

イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙など通じ、「フェイクニュース」がSNSに溢れ、有権者の判断にさえ影響を与えるようになった現実に対し、これまで「いち早くニュースを伝える」ことに血眼になってきた既存メディアが役割を変えようとしている。

かつて、私は「ザ・スクープ」という報道検証番組のキャスターをしていた。最新の発生ニュースを伝える番組を「最前線」とすれば、私たちは自分たちを「後方部隊」と呼んでいた。

「容疑者が逮捕されました」と、速報ニュースで伝えたものの、その容疑者が無実を主張するケースがある。その後、長期の裁判を経て無罪が立証されることも多い。

「ザ・スクープ」は速報ニュースで間違っていたこと、裁判過程や被告の心情、事件の実相について時間をかけて丁寧に検証し、時には科学的実験などを行って、事件の真相に近づこうとした。

こうした「後方部隊」と最新ニュースを伝える番組の「両輪」を持つことがテレビ報道のコンプラインスだったのだ。

しかし、「ザ・スクープ」のような報道検証番組は莫大な予算と時間がかかることもあり、テレビ編成から姿を消しつつあるのが現実だった。

そんな中、「フェイクニュース」が蔓延し、SNSが対応に追われる中、海外のテレビが「スローニュース」に役割を転換させていることはとても興味深い。

SNS社会において、情報の「両輪」は今後ますます必要とされるだろう。既存メディアは「後方部隊」として、その役割を再考する時期にきているのかもしれない。

自戒の念をこめて。