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日下部智海 Headshot

混迷を極めるトルコ ガズィアンテプを訪れて

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先日、私はトルコ南東部の大都市ガズィアンテプの友人の家に1週間ほど滞在しました。

ガズィアンテプ市は人口100万人ほどの都市で、美食の街として名高い。高層ビルなどは見当たらないが、街中をトラムが走り、あちこちにきれいに整備された公園があったのが印象的であった。

また、シリアにとても近いので多くのシリア難民の方が暮らしていた。

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一見平和なこの町も多くの問題を抱えていた。

今年に入ってからテロが多発している。警察署が襲われたり、結婚式場で50人以上が死亡するテロが起きている。いずれの事件でもダーイッシュ(この記事内ではいわゆるイスラム国ISのことを、アラビア語での呼び方であるダーイッシュとして表記しています。)が犯行声明を出している。驚くことに、結婚式場でのテロの実行犯は、12歳の少年であった。

トルコ人の友人からは、「この町の交通機関をダーイッシュが狙っているという噂があるので、あまり利用しないほうが良い」というアドバイスを受けた。噂の真偽は分からないが、ダーイッシュが間近にいると肌で感じた。

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ガズィアンテプで最も治安が悪いと言われている地区

私は今回の滞在で、多くのトルコ人と話したが、シリア難民に対し不満や不信感を抱く人がたくさんいた。

町に相当数のダーイッシュが紛れ込んでいるらしく、それを警戒してトルコ人はシリア難民と関わりを持たないようにしていた。なので、私がシリア難民と会ったと言ったら、「本当か?お前はクレイジーだな。何もされなかったか?」と聞かれた。

トルコ人の友人は、シリア難民と交流したことがないので、私の話を興味深く聞いていた。

また、シリア難民が住み始めてから家賃がかなり上昇したらしく、そのことに不満をこぼす者や、働かないシリア難民へ対し怒っている者、文化と宗教への考え方の違いに戸惑っている者などがいた。

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タスビーフと呼ばれる数珠 多くの若者がお祈りの為でなくファッションのために持っていると言っていた。

私たちは「イスラム教徒」と、ひとまとめに考えているが、同じイスラム教徒でも、トルコ人とシリア人とでは宗教へ対する考え方も違う。私が会ったトルコ人は、お酒を飲むし女性はスカーフを着用しないし、男性はモスクに全く行かない。中には神など信じていないと言い出す者までいた。それとは逆に、シリア人の多くが敬虔なイスラム教徒だ。

私が公園でシリア人とサッカーをしていたら、半ば強引にイスラム教に改宗させられ、ムハンマドという名を与えられた。そして、家に招かれ夕食をご馳走になり、コーランを朗読したり、プロパガンダ動画を見せられた。

様々な年代の人が、毎日この家でイスラム教について勉強しているらしい。

小学生くらいの男の子が、必死にアラビア語でアッラーについて説明してきたのがとても衝撃的だった。

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20名を超える人がここに住んでいた

また、国内政治も混迷を極めている。独立を求めるクルド人との対立やクーデター未遂事件後、エルドアン大統領は独裁色を強めており、大量の公務員をクーデターに関与していたとして粛清し、100以上のメディアを閉鎖させ、親クルド野党政治家を拘束している。そして、私の滞在期間中にSNSがトルコ全土で遮断され、3日ほど自由に連絡を取ることができなかった。ガジアンティプではよくあることらしいが、全土では珍しいらしい。

これには、市民たちも不満を口にしていた。

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あちこちに国旗が

車やベランダに国旗を掲げて愛国心を示す熱烈な支持者もいたが、多くの人は、クーデター前はエルドアン大統領を支持していたが、現在はエルドアン大統領にNOを突きつけていた。

エルドアン大統領も嫌いだが、かと言いギュレン師のことを「テロリストだ」と言い、ギュレン師も嫌いで誰も支持していないという人が圧倒的に多かったが、比較的に若者は、共和人民党のクルチダルオール党首を支持していた。

私は、現在エルドアン大統領は振り上げた拳の下ろし所を見つけることができていない様に感じた。

粛清したということは、その分敵を増やしたということだ。このままでは、市民の怒りが沸点を超えるのも時間の問題だ。また、クルド人勢力PKKとの戦闘も激化している。そして、ダーイッシュの指導者バグダディは、トルコへの攻撃を呼び掛けている。

世界で1番多くのシリア難民を受け入れているトルコが、このまま政情不安が続き、もし内戦にでも発展すればまた多くの難民が生じ、世界中が大混乱に陥るだろう。

最悪のシナリオを阻止するためにも、エルドアン大統領は妥協点を見つけ出し、安定した政権運営をして欲しいと思う。

最後に、ガズィアンテプ県には外務省から「不要不急の渡航は止めてください。」という勧告が出ています。もし、渡航する場合には特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。

また、そのような勧告の出ている地域に行き、多くの方に心配をおかけしたことをここにお詫びいたします。