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バカらしくて就活をやめた人専用の「アウトロー採用」とは? ―プロデューサー・若新雄純氏に聞く

2014年04月24日 20時34分 JST | 更新 2014年06月23日 18時12分 JST

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今年も各企業に新社会人たちが入社した。一方、就職先が決まらないまま過ごす若者もたくさんいるが、そのなかには就職活動のバカらしさに嫌気がさして途中でやめてしまった「就活アウトロー」たちもいる。

そんな彼らを対象にしたサービスが「就活アウトロー採用」(29歳までの既卒者限定)だ。4月17日にサイトが公開され、さっそく大きな注目を集めている。

現在の"就活"は大手求人サイト主導で行われ、画一化された採用プロセスや文化に違和感を覚える若者も多い。そんななか、「就活アウトロー採用」ではエントリーシートの提出を求めず、企業による合同説明会もなし。服装や髪型も自由という型破りなスタイルをとっている。

運営元はNPO法人キャリア解放区(納富順一理事長)で、昨年度に実施したパイロット版にはニートの若者など約60人がプログラム本編に参加し、20人近くが就職を決めた。正式サービスとしてリリースした今年は募集開始からわずか4日で40人の応募があった。

「就活アウトロー採用」は既存の就活に一石を投じ、硬直化した日本の採用システムを変えることができるのか。同サービスのプロデューサーで、全員がニートの「NEET株式会社」なども手掛ける慶應義塾大学特任助教の若新雄純氏に話しを聞いた。

■東大卒も応募 「就活アウトロー」こそ現在のエリート?

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若新氏は女子高生が自治体の改革を担う「鯖江市役所JK課」なども手掛けている

―まずは、なぜ「就活アウトロー」の若者に注目したのかを教えてください。

社会の変化が激しい中、現在の就活システムでは多様な人材を柔軟に採用することができず、一部の若者や企業にとって不幸な結果を招いてしまっています。そんな古ぼけたシステムと距離を置き、社会を俯瞰して見ている「就活アウトロー」のなかにこそ、自分の頭や感覚で物事を判断できる優秀な人材が多いと思っています。

すでに多くの若者が就活に違和感を覚えたり、気持ち悪さを感じたりしていますが、まだまだ別の方法論が確立していないため既存の就活にコミットせざるを得ないのが現状です。そういう若者に呼び掛けても困惑されてしまうだけだと思ったので、すでにアウトローになってしまった少数派の若者たちに絞って募集したというわけです。

―具体的に既存の就活システムのどこが問題なのでしょうか?

既存の就活では、人材を受け入れるための土台や枠組みを組織側が用意し、それに合うか合わないかで人材を探していました。パズルのピースを見つける感覚ですね。それだけではなくて、多様な人材を受け入れることによって組織が共に変化していくという意識もあっていいと思う。人材と組織が相互に影響し合う関係も生まれてくるべきです。

―なぜ、そのような採用スタイルが必要なのでしょうか?

「月給取り」という言葉は1900年頃にできたもので、当時はものすごく憧れの的だったそうです。農業のように天候に左右されず、時間と労働力を提供すれば一定の給料がもらえる素晴らしい労働システムだと受け取られていました。労働力を高いレベルで提供すればするほど社会が底上げされて、日本全体が豊かになっていった。

しかし、成長の山を登り切った現在では、皆が仕事に求める目的や意義が変わってきました。若者たちは報酬が高い、会社の規模が大きいなどの外的動機だけではなく、お客様に感謝されている、個性を発揮できる、創意工夫ができるなど数値化できない内的動機に重きを置くようになっています。このズレをどう解消するか。年配の方にとってはただのワガママに聞こえるかもしれませんが、若者にとってこれは深刻な問題なんです。内的動機が満たされない状態が続くと、極端に言えば「死ぬ」と思います。

―「死ぬ」ですか。

はい。熱くも冷たくもないぬるま湯のような状態の中で働き続けなければなりません。もちろん会社を辞めてしまったり、引きこもりになってしまったりする若者もいると思いますが、大多数の"賢い"若者は会社をクビにならない60%程度の省エネモードで働くことを選ぶでしょう。自分の内的動機を満たせないことがわかっているので、最低限しか頑張らない。生産性が低く、面白くない世の中になってしまっています。

―「アウトロー採用」には、どのような若者が応募しているのでしょうか?

大学名だけで言えば、昨年は東京大学や一橋、早稲田、慶應などの一流大学の学生も多かったです。他にも、ニートやブラック企業を辞めた第二新卒など、たくさんの人たちから応募がありました。

■「このオッサン、面白いな」で企業を決めるシステム

―具体的な採用プロセスは?

エントリーシートなどは一切不要。採用プロセスも非常にシンプルです。まずは私たちが開催する説明会に出てもらい、参加者でワークショップを行います。ここでは皆が覚えている違和感や就活のバカらしさを共有。少数派の人たちは社会から吹き飛ばされないようにと肩に力が入っていることが多いので、同じ葛藤を持っている人同士で話し合ってもらい、安心や柔らかさを取り戻してもらいます。

その後、企業の担当者や経営者を交えたセッションを行い、自由なテーマで議論をしていきます。この時点では、企業の業種や規模、学生の学歴や専門などは特に明かさないように勧めています。

―どのようなことを議論するのですか?

昨年は「恥」「欲」「死」など専門性に左右されず、すぐに答えがでない抽象的なテーマが多かったです。それぞれの意見を聞き、「このオッサン、面白いな」とか「この若者は見どころがある」と思った人同士がようやくマッチングの段階に進み、具体的に仕事の話しをしていきます。そういう意味では、マッチングというよりリレーションシップと表現したほうが実情に近いかもしれません。

昨年、応募者から人気が高かった企業を見てみると業種や企業規模は関係なく、その会社がどのように社員と向き合おうとしているか、関係を築こうとしているかといった「姿勢」によって評価されていることがわかりました。

―昨年はどのような企業が参加していたのですか?

上場企業や非上場企業などさまざまです。B2BのIT企業が一番多くの若者を採用していました。

―若新さんはほかにもNEET株式会社など、若者の雇用に関する取り組みに力を入れていますが、活動に一貫した「こだわり」のようなものはあるのでしょうか?

僕の活動に一貫しているのは、常にニートや就活アウトローといったマイノリティの本人たち側にこそ成長・変化する力があって、彼らがすべての鍵を握っているという確信です。ですから、こちら側から「こうしたほうがいい」という指示は出しません。彼らのほうがより的確に今の課題を感じ取り、歩むべき道を真剣に模索しています。ただ単に、まだ言語化できなかったり、経験が少なかったりするだけで、答えを見つけるのは必ず当事者である彼らだということです。

NEET株式会社にも研修やレクチャーの時間は一切なくて、自分たちで得意なことを教え合うのが基本です。記者会見で7年間も引きこもっていた女の子が社会復帰に対する自分の気持ちをテレビカメラに向かって語りましたが、あれも専門のカウンセラーが家から出られるようにサポートしたわけではなく、NEET株式会社というコミュニティを通してメンバー同士が触発し合い、「この場所なら自分の力を発揮できるかもしれない」というヒントを彼女自身が見つけたんです。

―彼らを「導く」という発想ではないと。

誰かが導くとか、教えてあげるというアプローチが有効じゃないし、そもそも間違っていると思います。僕がやるべきことは彼らが安心してゆっくり暗中模索できる場を作ることと、彼らが答えらしき見つけたときにコミュニティの中で共有できるように促すことだけです。専門的にいうと「関係性を開発する」ということになりますでしょうか。実際に彼らが出した答えは、僕が事前に立てていた仮説よりも面白く、前に進んでいるケースがほとんどです。

■カオスから新しい秩序を生み出す

―今後、どのように活動を展開していくのでしょうか?

活動のテーマを一口で言うと「カオス」です。今の社会秩序やシステムが古くなり、上手く機能しなくなっているということは、さまざまな人から指摘されています。しかし、ほとんどの人は古くなった秩序をギリギリまで維持しつつ、新しい秩序を作ろうとしているように思います。今の社会を壊すことはなく、それはそれで機能させておいて、突然新しい秩序を誕生させようとしている。でも僕はそれでは無理だと思っています。一度は混沌とした状態にまで解放して、根本的に作り直さなければいけない。カオスが起きれば、快適な方向に移行しようとする「自己組織化」の力が働きますので、次第に新しい秩序が生まれるはずです。

だから中途半端に経験者や有識者が口を挟むのではなく、まずはカオスを生み出すことが必要です。そこに集めた若者と経営者が作り出す「新しい何か」を見逃さずにフィードバックすることと、プロジェクトをやり切るために世間からの批判を一手に引き受けることが僕の仕事だと思っています。

―そうすると、少数派である「就活アウトロー」だけが対象ではなく、いずれはこの就活システムを日本社会全体に適応するべきだと思っているということでしょうか。

カッコ良くいえばそうですね(笑)。まだ「アウトロー」になっていない人の中にも予備軍はたくさんいますし、すでに「アウトロー」になっている人のなかには能力が高い人がたくさんいます。さらに、この活動が風穴になって状況が一気に変わる可能性もある。だから、ずっと振り切り続けていきたいですね。日本には一度変化が起きると雪崩を打ったように一斉に動き出す風土があると思いますので。

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次の一手はなんと「ナルシスト採用」

―「就活アウトロー採用」のホームページには、新たに「ナルシスト採用」の告知が出ています。どういう採用方式なのですか?

「アウトロー採用」とやり方はほとんど同じなのですが、こちらは大学4年生や修士2年生も参加可能にする予定です。募集する切り口は「自意識過剰な若者のための採用」とし、キャッチコピーは「社会なんて見えない」。どういうことかと言うと、俯瞰して見れば社会なんて時代によって移り変わる一つの「設定」にすぎないわけですよね。僕らが当たり前だと思っている秩序やシステムは長い目で見ればいつ変わるかわかりません。

つまりグローバル化ってそういうことじゃないですか。「こうあるべき」「こうであるに違いない」という枠組み自体がなくなるのが、グローバル化やダイバーシティの本質だと思う。英語が話せるかどうかではなく、いろいろな前提やバックグランドを受け入れる能力がある人こそがグローバル人材なんだと思います。だから、社会システムの転換期においては、むしろ「社会なんて見えない」と思っているくらいの人がいいのではないかと考えました。前提を疑うグローバル人材予備軍と、そんな人材を求めている企業をつなぐサービスが「ナルシスト採用」です。

―賛否両論がありそうですけど、面白いですね。

「就活アウトロー採用」には今のところ表立った批判がなく、嬉しいような少し寂しいような複雑な気持ちです。僕は既存の就活は一度カオスになろうとも、もっと根本的に見なおしたほうがいいと思うし、それを実現するためには振り切った実験の場を作るしかないと思っています。でも歴史のセオリーで言うと、だいたい初めにやった人は志半ばで死んでしまうんですよね。それは嫌なので最後まで存在し続けたいと思っていますが、母にはそれはただのエゴだと言われて、よくなだめられています(笑)

(聞き手:フリーライター・宮崎智之

・若新 雄純(わかしん ゆうじゅん)

NEET株式会社代表取締役会長、慶應義塾大学特任助教 。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。様々な企業の人材・組織コ ンサルティングを行う一方で、全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体の改革を担う「鯖江市役所JK課」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プログラムや広報プロジェクトを多数企画・実施中。WEBサイト:http://wakashin.com