BLOG

300人が爆弾で殺されてもNHKの全国ニュースで取り上げてもらえない国から私たちが学べること

アフリカ大陸でも過去最悪のテロかもしれないのに、日本のメディアの関心の低さに驚く。

2017年10月17日 16時16分 JST | 更新 2017年10月17日 16時16分 JST

アフリカ東部ソマリアで300人が殺されるテロ事件があったが、NHK16日午後7時の全国ニュースではソマリアのソの字も出てこなかった。

米国のラスベガス銃撃事件の5倍の犠牲者数で、アフリカ大陸でも過去最悪のテロかもしれないのに、日本のメディアの関心の低さに驚く。北朝鮮からの脅威が現実的となった今こそ、ソマリアなど、紛争と隣り合わせの暮らしを強いられている人たちの声は私たちにとっては貴重なものだ。

私は爆弾事件があった首都モガディシオから約700キロ離れたケニアのダダーブ難民キャンプで2010年から2012年まで働いていた。

長年続く紛争から逃れたソマリア難民約30万人が暮らし、一つの都市として考えれば、ソマリアでも三番目の規模だった。フェイスブックのソマリア人の友人らが「知り合いが犠牲になった」などと書き込むのを見て、とても胸が痛くなった。

ダダーブは欧米メディアから職に就けない若者が溢れた「テロの温床地帯」と揶揄され、私はそこで若者たちが自分たちの手でフェスティバルを開催したり、文字の読み書きができない難民たちが七輪を作る事業を展開したりした。

難民の人と日々接していくうち、人を過激に駆り立てていくのは無知と偏見と一方的な軍事行動だということを思い知った。

キャンプ内にはレストラン、ホテル、インターネットカフェ、商店など5000以上のビジネスが展開され、ほとんどが若者たち自身で運営されていた。

にもかかわらず、キャンプの運営はソマリア人ではなく、ソマリ語を話せない外国人がトップを務める国連やNGOが牛耳り、私が行ったアンケートでは若者の8割がキャンプの意思決定に若者の意思が反映されていないと感じていた。

これは援助機関側の「難民は支援される対象」という無知と偏見の賜物であった。たくさんの難民が援助機関で働いていたが、ケニア人との給与格差は10倍ほどあり、カースト制度のようなものが強いられ、難民の援助機関に対する不信感はかなりのものだった。

2011年、ケニア国内でソマリアの武装集団による拉致事件が起き、ケニア軍がソマリアへ軍事侵攻した。

長年、多くのソマリ難民を抱え、その揚げ句、拉致までされ、ケニアにとっても生命線である観光業が打撃を受ければ、国全体の損失になるという大義だった。私の多くのケニア人も軍事侵攻には賛成だった。

しかし、これによってダダーブの治安が一変した。まず、ケニア警察車両を狙った路肩爆弾事件が10件以上起きた。そして、難民で構成するキャンプ運営委員の幹部たちが射殺される事件が相次いだ。

警察が狙われるのは軍事侵攻に対する報復だとしても、なぜ、同じソマリ人の難民、しかもリーダー格が狙われるのか?

これは、無知と偏見によって増幅した欧米の援助機関に対する不信感が、ケニアの軍事侵攻によって過激化したためである。

ソマリアは長年、欧米諸国が支援する暫定政府軍とイスラム過激派グループの間で紛争があった。

過激派にとっては「欧米=非イスラム」であり、ケニアもまたキリスト教国であり、過激派にとっては「非イスラムからの攻撃だ。若者たちよ立ち上がれ!」と宣伝する絶好の機会になった。

過激派にとったら、国連も欧米の援助機関もすべて「非イスラム」であり、彼らと一緒に仲良く仕事をしているキャンプ運営委員会の難民は「非イスラムに魂を売った裏切り者」として扱われるのだ。

私の難民の友人は「過激派が嫌うのは、非イスラムより、非イスラムと協力するイスラムの人です。裏切り行為が一番の罪だと思っている」と説明してくれた。

これにより、それまでキャンプ内を私と仲良く歩いていた難民の友人は誰一人として、歩いてくれなくなった。「非イスラムの友人」と見られたくないからだ。

以降、ケニアで大規模テロが繰り返され、学校やモールでキリスト教徒の人たちが数十人規模で射殺された。ダダーブでもノルウェーのNGOの職員6人が拉致された。ソマリアでは国連のオフィスがターゲットとなった。

そして、今回のテロ。首都の繁華街を狙ったもので、経済発展著しいモガディシオの富裕層を狙ったのかもしれない。富裕層の多くは欧米に家族がいたり欧米の大学で勉強しているものが多い。

それでは私たちは無知と偏見と軍事行動で北朝鮮の人たちを過激にさせていないだろうか。

安倍首相の「圧力で北朝鮮に政策を変えさせなくてはいけない」という発言は、自分が北朝鮮より上だと思っていなければできない発言だ。韓国や中国が「日本のリーダーに彼らの歴史認識を変えさせなくてはいけない」と言われたらどんな気分か。

そして、その安倍首相を支持する多くの国民たち。果たして、私たちはどれだけ北朝鮮の日常を知っているのか?「何をするのかわけのわからない人がたくさんいる国」という偏見で見ていないだろうか?

麻生副総理が、北朝鮮からの「不法難民」とか「武装難民」とか偏見に満ちたコメントを繰り返しても、大問題にならないくらい、北朝鮮に対する偏見はすごい。

少なくとも私はソマリアにかかわる前、貧しい人がたくさんいる国みたいなイメージしかなかった。

たくさんのソマリ人の友達を作ることでその偏見をなくすことができたが、北朝鮮はどうか?私たちはどれだけ北朝鮮の一般の人と会話をしてきたのだろう。

そして軍事行動。すべてのオプションがテーブルにあるという米国を支持する日本は軍事行動も選択肢にあるという。軍事行動をとれば、北朝鮮の日本に対してたまっているうっぷんがピークになり、予想不可能な脅威がそこに待ち受けているのかもしれない。

上空をミサイルが通過するのは確かに脅威だが、一瞬にして300人が命を失うような事態にはなっていない。

これ以上北朝鮮を過激化させないためにも、今一度、私たちの中にある偏見と無知について考え、本当に軍事行動が私たちの平和に寄与するのか考えてみよう。

私のダダーブでの体験を詳細に知りたい方は私の著書「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)をご覧ください。