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まだ26歳。女性のがん患者が、おしゃれやメイクを楽しむ本当の理由

2017年06月04日 23時05分 JST | 更新 2017年06月04日 23時05分 JST

デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。今回は、女性のがん患者にとってのおしゃれやメイクの意義について書いてみます。

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・落ち込んだ気分を上げてくれるのは、メイクやおしゃれ

ステージ4のがん治療とは基本的には生きている限り治療を続ける「エンドレス治療」になります。私の場合、抗がん剤の投与を続けると、副作用の影響で髪が抜けたり顔が黒ずんだり痩せたりするなど見た目の変化が生じました。鏡で見た自分の姿は、まるで年老いたおばあちゃんのようでショックを受けた経験があります。

「まだ26歳なのに、もうおばあちゃんみたいに生きなきゃいけないの?」。同世代のまわりの友人は、恋愛、結婚、妊娠に人生を謳歌していました。女性としての人生を楽しめる時期なのに、なぜ私だけ......。本当に落ち込み、家にひきこもっていた時期もありました。

そんなときに私の気分を上げてくれたのは、メイクやおしゃれでした。ファンデを塗ってチークを入れるだけで肌色はうんと明るくなります。特に入院中はメイクするだけで気分が上がりました。お気に入りの服を着ると気分良く一日を過ごせます。抗がん剤治療の影響で髪が抜けたら、自分に合ったウィッグをして眉毛やまつ毛にポイントメイクをしたりしてみましょう。女性にとっては、メイクやおしゃれを楽しむことは、本当に力になると思います。

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誰でも鏡で見る自分がキレイに見えるとテンションが上がると思いますが、治療中には生きる糧になります。精神的なものでなく、見た目の変化がビジュアルで見えることはとても効果的です。メイクやおしゃれをちゃんとしていると、周りも「がん患者」とは思いませんし、ちゃんと接してくれるので人間関係も良好になりました。

ポイントは、【がん患者であることを隠すため】にメイクやウィッグをするのではなく、【なりたい自分になる】ためにすることです。「私は自分自身が充実した人生を送っている」と自分自身を錯覚させて気分を上げるためにするということ。病気を隠すためではなく、なりたい自分になるためにメイクやおしゃれを楽しむことです。これで、心の持ちようがワンランク上がります。

・メイクやおしゃれの力で、自分自身を錯覚させる

私は、実は治療のことを「負けゲーム」と呼んでいます。根治の難しいステージ4のがんなので、がんの進行スピードに違いはあっても、進行が止まることはありません。実際に抗がん剤治療を続ければ続けるほど、体に副作用は出てきます。この状況を受け入れるのは簡単なことではなく、かなりの精神力が必要です。ステージ4のがんを治療している方の多くは、この現実に苦しんでいらっしゃるのではないでしょうか。

私は、この「負けゲーム」を、「勝ちゲームをしていると自分を錯覚させる」ことで自分を取り戻しました。自分自身を錯覚させるのに、メイクやおしゃれの力はとても効果的だったのです。

ちょっと体力がないときや時間がないときは、アイラインや頬などのポイントに差し色を入れるのが効果的です。そうすれば、強調したいところに目が行くようになります。学生時代にデザインの先生から「服を選ぶように色を選びなさい」と教わりました。デザインのおける色の使い方のポイントは「差し色」。だいたい、【3:7=差し色:非差し色】くらいの割合で、配色を考えデザインします。

今はこの考え方をメイクにも応用して、血色の良い自分を見せたいと思ったら、鮮やかな色のチークを頬にのせています。服選びでも顔を見せたい時は首に差し色を使ったり、手を見せたいときは、手首に差し色のある服を選んだり指先にネイルをしたりしています。また、全体に明るい印象に見せたい時は、明るい色のウィッグや服を選びます。

頬のチークだけでもいい。人に見せたい自分の好きなパーツを作ること。そのようなパーツを意識するだけで、自分にちょっと自信が湧いてきます。そうしてひとつ自信をつけると、自然と考え方もポジティブになれました。

絵を描くときに「どのような絵を描きたいか」を考えるのと同じように、メイクやおしゃれも、「どのような自分になりたいか」を思い浮かべることが大事だとわかりました。

・生きる目的を見つけて、生活に「差し色」を

メイクやおしゃれにかぎらず、「がんになった自分がどうなりたいか」について明確な目標を作ることは、前向きに治療を続けるうえでもとても大切です。やりがいのある仕事をするのもいいし、新しい趣味を始めるのもいい。そうすると生活に「差し色」ができて生活にメリハリが出てきます。

私はメイクアップした自信のある自分の姿を、定期的に「遺影」として撮ってもらっています。「遺影」と聞くと縁起が悪いように思いますが、自信のある自分を写真に収めることは、抗がん剤治療を頑張った自分へのご褒美になり、とても元気が湧きました。

そしてもう一つ、今は入院中に頂いたお見舞の花を描いて、その絵をInstagramにアップするようにしています。すると世界中の人からお褒めのコメントを頂き、病室に居ながら世界中と繋がれて、やりがいを感じています。

私の人生は、「差し色」によって彩り豊かになりました。私だけでなく、がんになる前よりも生き生きと暮らしている方も多くいらっしゃいます。時には「がんになってよかった。がんになる前よりも今のほうが幸せ」とおっしゃる方も。それはきっと、がんになった後の生活に「差し色」を見つけたからではないでしょうか。