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「殴り書きでもいいから、記録を取っておけば...」原発で全町避難が続く大熊町職員が記録誌を作ったわけ。

2017年06月12日 23時02分 JST | 更新 2017年06月14日 16時52分 JST

初めまして。福島県大熊町役場に勤務する喜浦と申します。この3月、大熊町は東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原発事故に対する町の対応をまとめた「大熊町震災記録誌」を発行しました。

今回、大熊町のウェブサイト上での公開に合わせて、ハフポストで記録誌に掲載している町民や職員の「証言」の一部を転載させていただくことになりました。

証言を紹介する前に少し、町のこと私のことについて自己紹介させていただきたいと思います。

福島県大熊町は太平洋に面する面積約78平方キロ、人口約1万500人(※2017年5月現在。震災当時は約1万1500人でした)ほどの町です。特産品は温暖な気候を利用して栽培する梨やキウイ。ヒラメの養殖も盛んでした。

しかし今、町で最も有名なのは「福島第一原発」だと思います。大熊町は、2011年3月の大震災で水素爆発を起こした第一原発の立地町です。最初の爆発が起きた同年3月12日、町全域に避難指示が出ました。

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原発事故が起きた東京電力福島第一原発(東京電力ホールディングス提供)

震災から6年が経過したこの春、福島県内では避難指示の一部解除が相次ぎ、全町(村)避難していた自治体の多くが元の役場庁舎での業務を再開しました。

しかし、第一原発が立地する大熊町と隣の双葉町は今も全町避難が継続したまま、一部の帰還も叶っていません。梨やキウイ、ヒラメといった特産もなくなってしまいました。

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津波により大きな被害を受けた大熊町熊川地区、2011年3月11日撮影

今回、町は震災後6年の動きを記録誌にまとめました。何か震災後の町に特別な区切りがあってのまとめではありません。このタイミングで記録誌を作った背景には、被災者でもある町職員の「風化」に対する危機感があったように思います。

社会の震災に対する意識の風化。そして何よりも当事者である自らの記憶の風化。「殴り書きでもいいから、記録を取っておけばよかった」。震災直後の状況について聞き取りをした複数の職員が口にしました。当事者であっても正確な記憶は薄れてしまうということです。

「自分たちの経験を残しておきたい。できればそれを防災に役立ててほしい」。記録誌を通し、決して愉快ではない記憶を語ることに決めた職員たちの動機の根本はそこにあると思います。

私はといえば、昨年、社会人採用で入庁したばかりの県外出身職員です。震災時は東京で新聞記者として働いていました。福島の地震も津波も、原発事故直後の混乱も経験していません。

だから、町の災害対策本部が保管する当時のファクスやメモなどの資料と、震災を経験した職員たちの証言とを重ね合わせて状況を再構築していく作業は、私にとって貴重なものでした。

記者として何度も書いて来た「大熊町は原発事故による全町避難で約100キロ離れた同県会津若松市に避難中」という一文。さらりとした言葉の裏にある混乱と困惑、決断が、一つ一つ具体例として目の前に提示されるような経験でした。

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地震で棚が倒れ、物が散乱する町役場庁舎内、2011年3月11日撮影

同じ大熊町民、職員といっても、震災時の体験やそれに付随する思いは、私が想像した以上に人それぞれでした。一つの見解に偏らないよう、町のやってきたことを否定するような声を意識して載せましたし、「書き直しを命じられるかも」と思いながら編集した部分もありました。ただ、事実関係の指摘はありましたが、書いた内容を町の都合のために否定されたことはありませんでした。

「街頭のティッシュのように配れ」。できあがった記録誌を前に、ある町幹部が言いました。通常、行政の刊行物は関係する行政・教育機関、マスメディアなどに配布しますが、それ以外の、日常的にあまり町の情報に触れる機会がない方々にお届けするにはどうしたらいいだろう。悩んでいたところに、ハフポストで証言を転載するという提案をいただきました。

今回、渡辺利綱町長を含めた7人の証言を紹介します。転載にあたって少し懸念したのは、記録誌では本文を補完する位置づけだった証言だけを集めることで、事実関係より個人の主張が強く印象づけられるだろうということです。

でも、当事者の率直な言葉は、説明調の本文より読んでいただく人の気持ちに届きやすいはずです。それぞれの経験を、震災について原発事故について、思いを巡らせるきっかけにしていただければ幸いです。

震災記録誌ウェブ版はこちらhttp://www.town.okuma.fukushima.jp/fukkou/kirokushi

冊子版はは町民以外にも配布している。

取り寄せ依頼は、大熊町役場企画調整課 kikakuchosei@town.okuma.fukushima.jp まで。

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記録誌を編さんした大熊町企画調整課の職員(中央が筆者)