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アメリカ大統領選で若者に投票を呼びかけたデービッド・バースティーンさんインタビュー「政治参加しなければ人生を他人に渡しているようなもの」

2013年10月05日 00時11分 JST | 更新 2017年08月20日 23時15分 JST
猪谷千香

アメリカでは、デジタル化社会に育った10代から30代前半の若者を「ミレニアル世代」と呼ぶ。アメリカ国内で8000万人いるとされ、社会の多様性や民主主義について進歩的な意見を持つという。しかし、選挙において彼らの投票率は決して高くはない。そんな若者に政治参加を訴え、ムーブメントを起こしているデービッド・バースティーンさんが9月に来日した。

デービッドさんは、高校生だった16歳の時、アメリカ大統領選挙での若者たちの投票率の低さに失望、次の2008年大統領選挙に向けてドキュメンタリー映画「18 in '08」を製作した。同世代に政治参加を訴えたもので、全米35州で1000回の上映会が開かれ、2万5000人の若者の有権者登録(アメリカの選挙で投票の前提となる手続き)を実現したという。これをきっかけに、非営利団体「ジェネレーション18」を設立。ミレニアル世代について書いた本を出版したり、企業や非営利団体に対し若者戦略のコンサルタントを行ったりしている。

18 in '08 from David Burstein on Vimeo.

今回は、アメリカ大使館や若者と政治をつなぐ活動をしているNPO法人「YouthCreate」トークイベントを行うなど、日本の若者と政治について議論。アメリカと同じように若者の低投票率という問題を抱える日本で、24歳の若きオピニオンリーダーとして、若者たちになぜ政治参加が必要なのかを訴えた。来日中のデービッドさんにインタビューした。

■日本と同じように若者の投票率が低いアメリカ

−−日本への訪問は初めてですか?

実は2歳の時に来日したことがありました。ジャーナリストである父が日米の経済関係について「YEN」という本を書いて、日本でも出版記念パーティーを開いてくれたのです。そのパーティーで私は乾杯の音頭を取ったらしいのですが、よく覚えてません(笑)

−−日本の印象はいかがですか?

とても楽しませていただいています。日本の若い方たちと話し合い、彼らの質問に感銘をうけました。政治に関わろうとする姿勢がすばらしいと思います。食事もおいしいですし、良い体験をさせていただいています。今、日米関係にとっていま、とても大事な時期です。日本は五輪開催に向けて準備をしていく上で、日米が理解を深めて協力していくことが重要だと思っています。

−−デービッドさんが若者に政治参加を訴えようと思ったきっかけは16歳の時に若者の投票率が低いことに失望したからと聞いています。もともと政治に興味があったのですか?

政治に興味があるかどうか、自問自答したことはないのですが、振り返れば政治は人生の中で常に重要なものでした。両親の育て方だと思います。16歳の自分の中には無力感があったのですが、もしかしたら自分でも何かできることがあるかもしれないと思ったんですね。実際に行動を起こして、何か影響を与えることができるかもしれないと考えたのです。

−−2008年の大統領選に向けて、なぜ映画というスタイルで「18in 08」を作ろうと思ったのでしょうか?

他の手法を考えないこともなかったのですが、映画はいつでも誰でもアクセスできると思いました。35分間の映画を事前の情報がなくても、教育を受けてなくても、誰でも見て頂けることが良かった。本や講演会は人によって関わり方が違ってくると思います。映画と同じレベルではアクセスできません。それから、映画の方が、人々が私に親近感を持ってくれるのではないかと思いました。編集は元MTV社員の人にお願いしたので、エンタメ性もあるものになりました。それによって、政治につきまとう壁を取り除けた。若者は政治参加に対してハードルがある。それを変えなくてはなりませんでした。

−−日本の若者は自分が投票しても政治は変わらないと思っていたり、政策が高齢者向けなので興味を持てなかったりすることが原因で、投票に行かないと言われています。アメリカの若者の場合はどのような理由で投票率が低いのでしょうか?

アメリカでも似たような問題があります。若者が高齢者向けの政策だと思ってしまい、投票しないということはありますね。若者たちの投票率の低さは、実は日米だけではなく先進国共通の傾向で、高齢者が投票する人が多く、政策も高齢者向けになってしまうことだと思います。アメリカの若者が投票しない理由は他にもいくつかあります。政治が自分たちにとって重要ではないと思っていたり、1票を投じても何変わらないと思っていたりします。

私が目指しているのは、彼らの不満を聞くということです。若者から出てくる不満や懸念は正当なものである、もっともな理由があると聞きつつ、それでもなぜ投票すべきなのかということも伝えようとしています。ただ、不満を聞いてシニカルになっておしまいではなく、プロセスになるように。若者が抱えているフラストレーションや気持ちを聞いて、つながっていく必要があると思います。

投票しないということは、「現状を承認する」という立派な意思決定であり、結果がともなわないかといえば、絶対に影響が出てくるということを知ってほしいです。もしも、人口の半分が投票しないとしたら、影響が出るでしょう。投票しないということは、現状を変えなくて良いというパワフルなメッセージになってしまうことを知ってほしいです。

−−具体的にはどのような不満がアメリカの若者にはあるのでしょうか?

雇用状況が改善しないことへの不満や、政治家が十分に自分たちに対応してくれないという不満です。やはり、より多くの若者が参加することで、それを変えることができると伝えています。今の若者はただ文句を言っているわけではなく、本当に心から心配して真剣に考えていきたいと思っています。私の役割は、彼らと政治をつないでいくことです。他の手法よりも政治の方が、若者が抱えている懸念に対して完全な形で対応ができるひとつのアプローチなんだと伝えています。

−−投票以外に、どのような手法があるのでしょうか?

若者は今、いろいろな形で参加しています。アメリカでは、「シビックエンゲージメント」と呼びます。いわゆる、市民参加ですね。問題解決のために積極的にいろいろな行動をしています。起業を通じて自分たちで問題に取り組んでいこうとする若者がいます。たとえば、NGOを立ち上げて問題の原因を探っていったり、代替エネルギーがなければ、そういう技術を自分たちに開発していこうとしたり。そういう動きが増えてきています。これを、私たちは「実用的理想主義」と呼んでいます。何かフラストレーションがあって変えたいと思った時、従来のようにロビー活動をして議員に圧力をかけ、法案を作ってもらって議会で成立させようとするのではなく、自分たちで直接、問題を解決しようとするのです。若者たちは20年前と違って、行動するためのツールがあります。お金を集めて技術開発することもできます。従来の政治的活動であるロビー活動というのはちょっと間接的ですが、今の若者たちは直接、問題につながっているなと思います。

−−ツールというのは、インターネットということでしょうか?

インターネットはツールですが、私はそれ以上のものと思っていて、たとえば、歌手になりたいと思っても昔は録音もスタジオでやらなければなりませんでした。でも、今だったらここでも録音できます。誰でも世界的なヒットにつながる可能性があります。ビジネスに参加する障壁も低い。ですから、いろんな意味でテクノロジー、ネットのおかげで民主化されているわけです。スキルも身につけてSNSを使えるようになると、コミュニケーションがはかりやすいといったことがありますが、私はもはや新しい文化だと思います。より少ないもので、より多くのことを成し遂げられるカルチャーが生まれていると思います。

■ネット選挙は最初から影響力は期待できない

−−日本でもこの夏、初めてネットを使った選挙活動が解禁となった選挙が行われました。積極的にネットを使用した候補者もいたのですが、なかなか得票にはつながらなかった。ネット選挙を解禁すれば、若者の投票率が上がると言われていましたが、結果は依然、低いままでした。どうすれば、若者の投票率を上げることができるのでしょうか?

そうですね。今回、日本は初めてで、しかも選挙期間はたった2週間と短いので、最初からそれほど影響力を期待するのは難しいかなと思います。そもそも、ネット選挙自体を知らない人が多かったのではないでしょうか。アメリカでは1990年代から普及していましたけれども、大統領選挙の中でかなりの役割を果たすようになってきたのは2004年からです。その時初めて全ての大統領候補が自分のウェブサイトを持ちました。選挙資金を集めたり、ブログを開設したりしていました。2012年になると、もっと多様化しました。変化は必ず起こってくるものですし、だんだんと成長していくものだと思います。

それから、テクノロジーだけの問題ではないとも考えています。人がいかに政治のプロセスの中に自分も一員であると感じられるという感覚を持てるかどうかだと思いますが、どうしても政治の世界だと一握りの人が権力を持っていて、一般市民は権力を持っていないという構図になります。一般市民も力を持っていることを認識してもらう、それが政治参加につながってくると思っています。

もうひとつ重要な点は、ネットは人のエンパワーメントが得意です。誰でもログオンすることができて、テクノロジーを使うことによって、自分も力があると感じられる特徴があります。他にも、若者同士が集まって話をすることが大事です。人という部分を忘れてはいけません。オバマ大統領は人とつながることがとても上手だったと思います。若い人が彼に投票した理由のひとつがそうです。若者にむいて、テクノロジーを駆使したわけですが、やはりきちんと若者に向けて話したからです。自分たちが重要だという扱いをしてくれた。そういうメッセージを投げかけてくれたことがすごくよかったのだと思います。ですから、候補者の人たちが若者が現状を変えていくことができるんだとメッセージを伝えていくことが大事かなと思います。

−−最後に、日本の若者に向けて政治参加がなぜ必要なのか教えてください。

政治の世界で起こることは、日本でもアメリカでもそうなのですが、若者に対する影響力が最も大きいんですよね。単純に他の世代よりも長く生きるからです。ですから、小さな形でも意思決定に参加することはメリットがあると考えています。長期的にご自身の人生にもまた、回りの人の人生にも必ずプラスになります。

すべてを思い通りに変えるということはできませんが、参加することが自分の運命を自分の手で作っていく部分は絶対にあります。参加しないことには始まらないです。政治はフラストレーションがたまりますし、変わるには時間がかかりますが、参加して何らかの影響を与えることができれば、本当にそれは価値があることだと思います。政府は世界に存在するさまざまな機関の中でも、パワフルで、いい意味でも悪い意味でも人生に大きな影響力を持っていますから、参加しましょうということです。

参加しないということは、自分の体の一部を切って渡して自由にしてくださいといっているように見えます。人生の一部を他人に譲り渡してしまうようなものです。もしかしたら、これから20年後、政治に参加してきたけど何も変わらないじゃないかという人もいるかもしれませんが、それはその時に議論すればいいことで、今の段階でやめるということはもったいないことなのです。

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