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「日本がビッグデータ後進国になってもいいのか」ヤフーが警鐘を鳴らす理由

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このままでは日本でビッグデータを使ったサービスができなくなる。結局、使っているものはすべてアメリカのもの、そんな未来でいいのか――。ヤフーで1月21日に行われた記者説明会で、ヤフー株式会社・執行役員社長室長の別所直哉氏が熱弁した。

スマホの登場により、あらゆる人の行動がデータ化され、サーバーに蓄積され、分析され、活用される、いわゆる「ビッグデータ」の時代。おすすめ商品の提示から、健康管理、インフルエンザ予防や道路交通情報、選挙の予測など、幅広い分野で活用されるデータの重要性を指して、「データは新しい石油」という言葉もある。

一方で、ビッグデータ時代ではプライバシーが脅かされる可能性も常に指摘されている。国際的にはアメリカ国家安全保障局(NSA)の盗聴・監視疑惑に注目が集まり、日本では、JR東日本がSuicaの利用履歴データを販売する方針に、「気持ち悪い」と次々とソーシャルメディアに投稿され、「炎上」したことが記憶に新しい。

そんな中、ネット大手のヤフーは、「“気持ち悪い”と拒否してしまえばビッグデータは使えなくなる。結局、日本のサービスは育たずアメリカのサービスを使うだけ。それでいいのか」(別所氏)と行き過ぎたプライバシー保護に強い警戒感を示す。

■「基本自由のアメリカ型を目指すべき」

では、ヤフーが考える理想の形は、どういうものなのか。

「ビッグデータはまだまだいろいろ試している段階。基本的に自由なデータの利用を認め、問題のある点について個別に対応していく、アメリカの方式を目指すべき」(別所氏)とヤフーは考えている。

しかし、そうした思惑とは裏腹に、日本の法制化は、「自由利用は認めない。特例を満たした時のみ許可」というEU方式の影響を受けたものになる公算が高いという。

名前や電話番号など、直接個人に紐づく情報は個人情報保護法で保護の対象となっているが、ビッグデータの利用に関しては、同法が想定した範囲を超えており、明確なルールは存在しない。ビッグデータ活用を盛り込んだ「日本再興戦略」の下、政府は、法制化の準備を進めているが、「政府の検討委員会にビッグデータを扱う事業者が呼ばれていない。これでは我々事業者の声が届かない。メンバーを見ると規制強化寄りなのは明らか。このまま法制化されることを懸念している」(別所氏)とする。

6月に法制化を目指す方針が明らかとなっており、残された時間はわずか半年。すでに委員会での取りまとめが済んでおり、さらなる審議が行われる予定はない。ヤフーが会見を開いてまで訴える理由は、ここにある。外野から訴えかけていくほかないのだ。

ヤフーはEU方式を採るべきでない理由として、

・ITサービスの地域別売上は北米とアジアで95%以上を占め、そもそもEUにインターネット産業が育っていない

・EU自身がアメリカ発のサービスを受けるために協定を結んで実質的に認めている事実がある

といった点を挙げ、「実際、ブルームバーグのデータを見ればアメリカが勝っていることは明らか。アメリカ方式を取らなければ、政府の方針も絵に描いた餅。この半年がIT業界の試金石」(別所氏)と訴えた。

では、プライバシーへの懸念には、どう対応していけばよいのか。

ルールづくりについては「一つの方法でやろうとするのが間違い。匿名化すれば全部使っていい、という極論に走ってはいけないが、同時に、何が何でも保護すればいい、というわけでもない。いろいろな側面があるので、個別に考えていくべき」(別所氏)と単純な議論を批判。

具体的には、ビッグデータの問題もカバーしたプライバシーポリシーの策定を事業者間や第三者機関も含めて作っていくことだという。ヤフーが目指すのは、自由利用をベースにして発展性を保ち、公開されたポリシーで運用していく、透明性と柔軟性の高い運用だ。

■ビッグデータの“気持ち悪さ”は解消されるのか

もうひとつの大きな問題は、直接、ビッグデータが個人を特定していなかったとしても生じうる「気持ち悪い」という利用者の感情的な問題だ。気持ち悪いと思う人に追跡型広告の表示をしないようにするなど、除外する選択肢を与えることは当然、求められることだろう。

「お客様も慣れていくと思う。だが、そもそも“気持ち悪い”と思われる広告自体、失敗している。広告主にとって意味がない。(それをヤフーが望むわけもないので)全体としてお客様の利便性は上がるはず」とし、“気持ち悪い”問題は、時間とサービスの発展が解決する、とヤフーは考えているようだ。

「今は試験段階だから自由にやらせてほしい」「基本自由。問題は個別に対処」「気持ち悪ければ除外する手続きを取ればいい」――こうしたヤフーの自由を優先する主張は、企業への不信感が強いユーザーにとっては、受け入れられない部分ももちろんあるだろう。

「いまさら、電気もガスもない生活に戻れますか? それと同じことです」(別所氏)――。日本のビッグデータ活用は、今、岐路に立っている。

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