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小室淑恵さんと長野智子編集主幹が語る、これからのワーク・ライフバランス【ハフポスト1周年イベント】

2014年06月12日 18時24分 JST | 更新 2014年06月12日 21時31分 JST
朝日新聞社 時津剛

働きながら、介護や育児を両立するには、どうすればいいか―—。

5月27日に開催されたハフィントンポスト日本版の1周年記念イベント「未来のつくりかた」で行われた、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さんと長野智子編集主幹による特別対談の模様をレポートする。

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■なぜワーク・ライフバランスが必要なのか?

最初に、ワーク・ライフバランスについて、小室さんに説明してもらった。

小室さんは、長男を生んだ直後に起業した当初、仕事と育児の両立に苦労したという。夫は働きかたを変えず、仕事をしながら深夜まで1人で育児をしていたときの経験から、「2人目は生まない」と夫に宣言したこともあった。しかし今では、次男も誕生し、楽しい育児生活を行っている。小室さんが「2人目を生みたい」と思った最大の要因は、長男の育児をきっかけに夫が変わり、育児家事を同じ時間だけやってくれるようになったからだった。

こういった経験をふまえて小室さんは、少子化や介護、ダイバーシティ(多様性)推進、日本の財政難を解決するのは、「長時間労働をやめること」だと語る。

「もちろん日本に潤沢な財源があれば、いろんな社会問題は解決できるかもしれないが、財源を必要とせずに解決できるのが『長時間労働をやめること』だと考えてます。今まで900社以上の企業をコンサルティングしてきましたが、『3割残業が減って、売上が上がる』会社も多いですね」

「『労働時間を減らすと、成果が落ちる』と心配される企業も多いんですが、むしろ今の日本は『長時間労働によって日中の集中力が落ちて、成果が上がらない』という負のスパイラルにはまり込んでいると私は思っています」

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ハフィントンポスト日本版1周年記念イベントの聴衆者=5月27日、東京都千代田区、時津剛氏撮影

■日本は世界一長い労働時間、今後直面する介護の問題

日本は、世界で最も労働時間が長いが、一人当たりの生み出す付加価値は、先進国のなかで最下位だという。小室さんは「24時間を労働時間が占めすぎて、インプットや睡眠がとれず、ミスが増え、会議では斬新なアイデアも出せない負のスパイラルに陥っている」と指摘した。

また今後日本では、親の介護や育児をしながら、共働きで働いていくことになるという。小室さんは「みなさんがご存じの有名な自動車会社さんには、現在6万8000人の従業員がいますが、5年後に抱える親の介護の数は1万4000人だと試算されており、それは社員の5分の1です。介護は、平均約10年続きますから、時間に制約のなく働ける人は今後ほとんどいなくなるのです」と説明する。

■これからの会社のありかた——残業代を圧縮しフォローし合える環境を

ワーク・ライフバランスを見直しながら、企業が業績を上げるにはどうしたらいいか。小室さんは「人をリストラして固定費を削減するのではなく、労働時間を減らし残業代を圧縮してコストを浮かせ、その浮いたコストの一部で、新たに人を雇用して、介護や育児などで誰かが早退したり、一時休業したりと、一時的に抜けた場合にも、お互いにフォローし合える環境を整えることが大切」だという。

小室さんは、“固定費を減らすために人員を削減する”Aタイプの企業と、“残業時間を圧縮したコストで人を採用する”Bタイプの企業を例に挙げて、これからの会社のありかたを説明した。

「Aタイプの企業が、利益を出そうとして最初に注目をするのが、固定費を削減する考え方です。仕事のやりかたを見直さないまま、1人削減したら、その分の仕事は、残された人に乗っかります。長時間労働により、体調を崩したり、うつになって休職したりするケースもあるでしょう。うつになった人が休職している間、企業が払う年間金額は1人当たり40〜50万円です。残された社員も、ものすごい仕事量を抱えて、モチベーションが下がるので生産性はあがらず、結局コストとリスクが増えるんです」

「一方でBタイプの企業が、全く逆転の発想をするとどうなるか。人のリストラによって固定費を浮かせるのではなく、残業時間を圧縮します。日本は、時間外労働の割増賃金率は1.25倍ですが、その浮いた分のコストで、若者や、時間に制約がある人を採用します。そうすると、常日頃から時間内で成果を出そうとするので、時間当たりの生産性は高まります。もし親の介護で誰かが抜けなきゃいけない状態になっても、人を増やしてあるので、フォローし合うことができ、誰も辞めずに働きつづけることができます。採用費も研修費もかさみません。1人ひとりの睡眠時間がとれ、インプットの時間も生まれます」(詳しくは、サイトの上から2番目の動画を参照)

■多様な人と働くことが、多様なマーケットに対応する商品・サービスを生む

時間に制約のある人や若者の雇用を増やすことで、いろんな人のアイデアを寄せ合うことができる、と小室さんは語る。

「Bタイプの戦略を取った企業では、介護や育児があっても、仕事が続けられますし、独身であったとしても自己研鑚やボランティアなど、個々がライフでやりたいことをしてインプットすることができます。そんな会社の商品やサービスは、多様な人たちでディスカッションして生み出されているので、多様なマーケットにフィットします」

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朝日新聞社、時津剛氏撮影

■日本の財政を必要とせず、社会問題を解決する方法

このまま長時間労働が当たり前の社会が続いてしまえば、国が24時間型の育児や介護サービスをもっともっと整備するしか方法はなくなってしまう。

「24時間型で仕事をする社会では、親を居宅で介護することが困難になり、介護施設に入れたいという声が高まります。また、夫婦ともに残業する社会では、育児についても延長保育、学童保育がもっと必要になります。こうなれば、さらに国や自治体の財政が必要となるんです」

「現実的に、仕事と育児や介護の両立ができなくなると、仕事を辞めざるを得なくなります。夫が長時間労働だと、妻が仕事を辞めることになりますが、結局自分の年金が将来少ない額になるので、生活保護の対象になる人が増える可能性があります」

一方、働きかたを見直せば、国の財政を使わずに、以下のように社会問題を解決することができる。

・介護は、昼はデイサービス(午後4時半までで終わる)と連携をしながら、夕方5〜6時に会社を出て、少しの時間はヘルパーさんにもつないでもらいながら居宅介護をすることができる。

・育児は、延長保育をせずに夫婦が迎えに行くことができる。夕食時に父親が子供と一緒にいられれば、いじめやしつけの問題がおきたときに、複雑化する前に解決することができる。

・女性も働き続けられることで、年金の払い手側で居続けることができる。日本の年金財源が潤うことにつながる。

■今後進む世界の少子高齢化——長時間労働は「人口ボーナス期」の働きかた

人口の25%が高齢者となった日本。世界で一番少子高齢化が進んだ国だが、今後は中国や韓国をはじめ、世界で「人口ボーナス期」を経た国々で少子高齢化が進むという。

「今、日本は人口の25パーセントが高齢者という状態になっています。これは世界でも群を抜いて少子高齢化が進んでいるですが、実は2030年に韓国が、2040年に中国が、日本と同じ高齢化率になります。現在の中国や韓国、タイやシンガポールは、日本の70年代の状態に似ています。『人口ボーナス期』といって、たくさん若者がいて高齢者が少なく、社会保障費がほとんどかからない状態ですから、放っておいても経済は発展する時期なのです」

「その後、『人口オーナス期』といって、たくさん高齢者がいて非常に社会保障費がかかる成熟期に入ります。当たり前なんですが、1つの国に『人口ボーナス期』は一度しか来ません。そのあとは、経済発展することによって、教育に投資する親が増えて高学歴化し、すると人件費が高くなり、晩婚化が進んで少子化になる……ということが全部つながって起きます。どの国でも人口ボーナス期が終わると、少子高齢化が進むんですね」

時間をかけて大量に物を生産するビジネスは「人口ボーナス期」に通用するが、「人口オーナス期」を迎えた日本は今後、付加価値で勝負するビジネスに切り替えていくことが求められる。

小室さんは「ワーク・ライフバランスというと、ワークかライフかどちらかを天秤にかけて、釣り合わせなきゃいけないと誤解されることがありますが、実際にはワークとライフが相乗効果で、どちらもより大きくなっていくイメージです。ワーク・ライフ“シナジー”と考えたほうがいいかもしれません」と結んだ。

小室さんは、毎日午後6時に帰り保育園に子供を迎えにいっているという。夜に講演などで働いた分は、時間単位で振休取得。「土曜の講演した場合は、たいてい月曜日はお休みしています。私が実践しないと、社員が実践しづらいですから」と自身の働きかたを語った。

続いてイベントでは、長野編集主幹のブログを通じて、ハフィントンポスト日本版に寄せられた相談や質問を、小室さんに回答してもらった。

■質問1「夫が家事育児に協力的でない。どうやって夫を変えましたか?」

長野:まず最初は「どうやって夫を変えたんですか?」という質問です。

「主人52歳、私38歳、主人は年代のせいか家事は手伝ってくれません。2人目も欲しいと思ってますが、今のままだといろいろ考えてしまって踏みきれません」これは非常に多かった質問で、私も聞いてみたかったんです。

小室:もちろん、私も喧嘩もしましたし「どうしてあなたは働き方を変えないの」って真剣に訴えたこともありました。そんななかで一番夫が変わったのは、本当に小さな家事をやったときに、びっくりするぐらい褒めたことです(笑)。それを積み重ねて、今では朝すべての家事をやってくれています。朝ごはんを作り、朝子供をお風呂に入れ、保育園に送って行ってくれます。ベッドメイキングや食器洗いもやってくれます。

それでも、初めて朝ごはんを作ったときは、ごはんと味噌汁の2品を作るのに2時間かかりました(笑)。もうちょっとで「こんなんじゃ遅刻しちゃう」っていいそうになったんですけど、味噌汁を飲んで「だしが効いてる!!」って褒めたんです。そしたら夫は「そうだろう、インターネットで調べたら、一番だしと二番だしの取りかたが書いてあったからさ」と(笑)。「え、まさか朝から二番だし!?」と思ったんですが、「だしに定評のある人って呼んでいい?」って聞きました。それで夫は「俺、料理の才能あるんじゃないか」と思ってくれたみたいです。

夫には、本当に「8割褒めて、2割もったいない」です。指摘をするのは、2割以下にとどめます。ちょっとずつやってもらったら、今では30分で、ごはん、味噌汁、お魚、もう1品を作れるようになりました。魚焼きの網も洗ってから出社しています。とにかく、まず褒めるのが大事なんですよね。男性で「家事が嫌だ」という方のトラウマ体験で一番多いのが、「最初にやった家事を妻にけなされた。どうせ何かやっても妻は妻のやりかたじゃと気に入らないんだろう」というものなんです。

長野:心当たりあります、私。

小室:ただ、最初に何かやってもらうきっかけ自体がつかめないときは「高熱で倒れる」っていうのも、すごく効果があります(笑)。自分が病気でどうにもならなくなったときが、夫の家事のきっかけになったりすることもあるんじゃないかなと思います。

■質問2「有休取得も少なく、残業を推奨する会社の風土、どう変えますか?」

長野:次の質問は「日本の会社は、やっぱり有給の取得が少なくって残業をたくさんする人ほど人事評価が上がるような気がします」というものです。

「残業代アップで、社員のやる気を上げるために、とある会社は、4月から時間外手当の賃金比率を15%から30%に引き上げたそうです」まだまだこういう企業は多いと思うんですが、小室さんなら、どこから会社の風土を変えますか?

小室:どんな会社でも経営にプラスになる行動は評価されます。

ご自身がきちんと早く帰って成果を上げようとしている姿勢を、周りにわかってもらうことが大切です。

たとえば、長時間労働をすることがどれほど利益を圧迫しているかを、簡単に試算をして、職場で話を