「育児は、仕事の成果を見直す機会」サイボウズ・青野慶久社長に聞く"イクメン"の働きかた

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The Huffington Post
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グループウェアの国内シェアNO.1を誇るサイボウズの社長・青野慶久(あおのよしひさ)さんは、上場企業の経営者として他の経営者に先駆けて育休を取得。イクメン社長として知られている。

“イクメン”と聞くと、家事も育児も楽しみながらやっているお父さんを想像するが、どうやら青野さんはそうではなく、様々な葛藤があるようだ。では、どのように日々育児に取り組んでいるのか。そこに、世の中の夫婦が直面する悩みに対するヒントがあるのではないか。青野さんに話を聞いた。

■育児に対して感じるプレッシャーは、仕事以上

もともと、夜遅くまでエンドレスに働くことに喜びを感じる“仕事人間”だったという青野社長は、4年前、第1子が生まれたときに、上場企業の経営者として他の経営者に先駆けて育休を取った。期間は2週間。さらに第2子が生まれたときには、週に1回水曜日を育休デーとして、それを半年間続けたという。では、積極的に育児に関わってみて、どんな部分で特に大変さを感じたのか?

「まず、子供がまだ乳幼児だと、育児は365日24時間休みなしですし、自分が何かミスをしたことで、子供の命にも関わることもあります。例えば仕事で寝坊をしても『すみません』で済むかもしれないけど、子供相手の場合は、それでは済まないこともある。命には関わらなくても、自分が取った行動が、その子の将来に、長きに渡って影響を与え続けると思うと、行動や言葉のひとつひとつ、これで良いんだろうかとプレッシャーを感じますよね」

さらに、育児に関わることの大変さは、それだけではない。妻と2人、協力して育児に取り組まなければならないことも、ストレスのひとつだという。

「もうね、うちの場合は僕が育休を取ったからといって、夫婦で仲睦まじく、ハッピーって感じでもないですよ(笑)。『今の言葉のかけ方、どうなの?』みたいなことをお互いに言って、延々とダメ出し合戦しているような状態になることもあって『何やってるんだろう俺たち……』みたいに感じることはよくありますよね」

ちなみに、筆者も1歳9カ月の娘と夫との3人暮らしのため、このような状況は毎日のように起こる。青野さんは「家事や育児に関して夫婦間でぶつかるのは、男性と女性が、幼い頃から教えられてきた価値観の違いに理由があるのではないか」と語る。女性は男性に対して、家事育児を“もっと主体的にやってほしい”と感じるケースが多いが、それはなかなか難しいことのようだ。

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■幼い頃から植え付けられた価値観は、簡単には変わらない

「世の中の価値観は変わってきていますが、やっぱり今の30代後半以上の世代では『男は大黒柱であるべし』と教えられて育った人が多いと思います。僕は今、43歳ですが、良い学校に入って、良い会社に入って出世していくことこそが人生の成功、仕事で負ける男は存在してはいけないくらいに、心のどこかで思っているところがあります」

「だから、仕事の時間を少しでも削って家事育児に充てるということに、ものすごい葛藤があるわけです。これが今まで日本社会が男に植え付けてきた価値観なんです。僕は、いくら天気が良くても、洗濯物を干しながら気持ちいいと感じたことは1度もありませんよ(笑)。この時間を仕事に当てられたらと常に葛藤しています」

イクメン社長として有名な青野さんも、培ってきた価値観の狭間で葛藤している。“家事育児は大事なこと、夫婦で分担するのは当然”と理屈ではわかっていても、幼い頃から培った価値観というのは、そう簡単には変えられない。

そんなふうに葛藤しながら家事育児をしている夫が、もし妻からダメ出しをされたら、カチンとくるのは当然だろう。では、どんなふうに接するとモチベーションを保ってくれるのか?

「基本は“褒めちぎってほしい”ですね(笑)。確かに女性からすると『手伝う』と言われるのはムカつくと思うんです。でも、そこを受け入れていただけると、男は自分の大黒柱感を失わずに家事育児に参加できますから。そこはぜひ女性のみなさまにはご理解いただければと思いますね」

家事育児は夫婦でするものと考える女性からすると、「ちょっと面倒だなあ」と思うかもしれないが、逆に考えれば、ちゃんと褒めるだけで、家事育児を続けてくれるようになるなら、それくらいは受け入れたほうがいいかもしれない。この際、家事を主体的にやっているか、手伝うという気持ちでやっているかは、いったん脇に置いておいたほうが良さそうだ。

■育児に関わることは、仕事の成果を見直す良いきっかけ

とはいえ、夫が育児にもっと関わりたいと思っても、すぐに妻と同じように育てるのは難しい場合も多いのではないか。そんな人は、まずどんなことから始めたらいいのか。

「育児は、本当にひとつひとつ、やれることからやっていくしかないですね。ミルクを上げたら次回の準備として煮沸をしておく、離乳食を作ってひと口ひと口食べさせる、保育園に通うようになったら、毎朝したくさせて連れていくだけでも大変、持って行くオムツにひとつずつ名前を書くのも大変な作業です」

「僕も最初は何もできませんでしたけど、妻から教えてもらって、できることからやりました。そうすると、仕事の時間は少しずつ削られていくんですが、仕事の仕方を見直すきっかけにするといいのではないでしょうか」

朝夕の時間に育児をすることで、以前に比べて仕事の時間は減ることになる。限られた時間のなかで同じ成果を出さなければならなくなると、自分の仕事の“成果”とは何なのかを考えるようになる。

「僕の場合は、社長として意思決定するのが仕事ですから、意思決定の質さえ落ちなければ、たとえ長時間働かなくても、成果は変わらないんですね。育児に関わることは、働きかたを見直す良いきっかけになると思います」と青野さんは語る。

日本では、まだ「夜遅くまで長い時間働く人が頑張っていて偉い」という価値観が残っているが、本来仕事とは「成果を上げる」ことで、長時間働くことが良いわけではない。

育児に関わることは、自分の働きかたを考え、より価値の高い仕事を目指すことにつながる。男性にとっても、今後のキャリアアップにつながっていくだろう。

(相馬由子)

※後編は8/20に公開予定です。

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