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「Google Glass」に漂う暗雲、アプリメーカーの関心低下

2014年11月17日 21時38分 JST | 更新 2014年11月17日 21時38分 JST
Reuters

[サンフランシスコ 14日 ロイター] - 米グーグル の眼鏡型端末「グーグル・グラス」が華々しく世に登場して2年。業界関係者からは、特定の業務用としての利用価値はあるものの、近い将来に一般ユーザーの間でヒットする公算は小さいとの声が多く聞こえてくる。

シリコンバレーで今月9日に行われた「ブレークスルー賞」の授賞式。多くの著名人が出席してメディアの注目度も高い同授賞式だが、グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン氏の顔は、グーグル・グラス(以下グラス)を付けないで会場入りした。

ブリン氏は記者に対し、グラスは車に置いてきたと説明した。ブリン氏はグラスを生み出した同社の極秘研究部門「グーグルX」を率い、最近ではビーチでもグラスを装着していた。

そんなブリン氏がグラスに見切りをつけたとは考えにくいが、一方で、アプリ開発業者や初期ユーザーの間では、1500ドルで売られているグラスに対する興味が失われつつある。グーグル自身も、一般発売の時期を延期している。

ロイターが取材したアプリ開発メーカー16社のうち、グラス向けプロジェクトを中止もしくは断念したと語ったのは9社。主な理由としては、顧客不足やグラスのハード上の制約が挙げられた。また別の3社は、グラス用アプリは一般ユーザー向けではなく、ビジネス向けに切り替えたとしている。

大手アプリ開発業者はグラス向けプロジェクトを今も続けている。グラスのオフィシャルサイト上に掲載されている約100本のアプリには、フェイスブックなどが並んでいる。しかし、同サイト上からは最近、ツイッターの名前が消えた。

「もし2億台のグーグル・グラスが売れているなら、違う視点もあるだろう。ただ現時点では市場がないのだ」

こう語るのは、今年に入ってグラス向けアプリのプロジェクトを中断したゲーム開発会社、リトル・ガイ・ゲームスのトム・フレンセル最高経営責任者(CEO)。同社は、仮想現実型ヘッドマウントディスプレー「オキュラス・リフト」など、他のプラットフォームでのゲーム開発を検討しているという。オキュラス・リフトを手掛けるオキュラスVRは、フェイスブックが買収を通じて傘下に収めている。

一方、グーグルからは過去半年の間に、グラスの開発の核となってきた複数の従業員が退社した。開発主任だったババク・パービズ氏や電気工学チーフのエイドリアン・ウォン氏などだ。

また、グーグル傘下の投資ファンド「グーグル・ベンチャーズ」とシリコンバレーの2大ベンチャーキャピタル「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ」と「アンドリーセン・ホロウィッツ」が作ったグラス向け投資コンソーシアムは、いつの間にかウェブサイトがなくなっていた。

グーグルは、グラス開発には力を注いでおり、多くのエンジニアと経営幹部がプロジェクトに取り組んでいると強調する。そうした幹部の1人には、ファッション業界からグラスのマーケティング責任者に転身したアイビー・ロス氏もいる。

グラスは、自動運転車などを手掛ける同社の極秘研究部門「グーグルX」から生まれた最初のプロジェクト。グラスの営業活動責任者クリス・オニール氏は「われわれは一般発売に向け全力を傾けている。それには時間がかかり、完全に準備できるまでは発売しないつもりだ」と述べた。

事情に詳しい関係筋によると、ブリン氏はグラスの一般発売を今年中と見込んでいたが、2015年になる公算が大きいという。

<いまだ実験段階か>

当初は盛り上がりを見せた「グラス熱」だが、一般ユーザーの関心は失われつつあるようだ。

グーグルは第1弾ユーザーの数千人を「探検家」と呼んだ。しかし、探検家は街に出ると、好奇の目を集め、ジョークの対象にもなった。一部では、秘密裡に録画できるグラスの機能を不愉快なプライバシー侵害だとする批判も出た。

首都ワシントンでコンサルタント業を営むビジネスマンからは「(グラスをかけていると)超オタクに見える。私自身は正真正銘のオタクだが、これは行き過ぎだ」との声も聞かれた。今ではグラスは、引き出しの中でほこりをかぶっているという。

競売サイトのイーベイでは、1500ドルのわずか半値で売られているグラスもある。

一部のアプリ開発業者からは、最近では投資家や、時としてグーグルからも無援状態に感じるという声さえ聞かれる。

関係筋によれば、グーグル・ベンチャーズが共同運営する投資コンソーシアムの「グラス・コレクティブ」が今年初めまでに出資したのは、わずか3─4社の小規模新興企業だけだという。グーグル・ベンチャーズの広報担当は、この数字に関するコメントを差し控えている。

発売日が決まらないことで、一部の開発業者には、グーグルはまだグラスを実験として扱っているとの印象を与えている。トロントのソフト開発会社ノーマティブ・デザインのマシュー・ミラン氏は「(グラスは)真剣勝負するのに十分大きなプラットフォームではない」と語った。

モバイル用ゲーム開発会社グル・モバイルは、グラス用ゲームをいち早くリリースしたメーカーの1つ。同社のパズルゲーム「スペリスタ」はグラス用が昨年にリリースされ、今も発売されているが、広報担当者によると開発は打ち切られた。

一方でグーグルは今年4月、医療や製造など特定業種でのグラスの利用を支援するプログラムを立ち上げた。現在までに、航空大手ボーイングや外食大手ヤム・ブランズ傘下のタコベルといった企業で、グラス用アプリがテストされているか、実際に使われている。

グーグルはまた、一部法人向けには、グラスを大幅値引きして大量販売している。

外科医向けなどの携帯用コンピューターとしてグラスを扱っているクラウドオプティック社のジョン・フィッシャーCEOは、現在の導入実績は全米19カ所の病院だが、来年初めには100カ所に広がる予定だとしている。

(Alexei Oreskovic記者、Sarah McBride記者、Malathi Nayak記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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