場所や時間を選ばない働き方「テレワーク」が一気に普及?理由をグローバル企業の社長に聞いてみた

2016年04月09日 01時02分 JST | 更新 2016年04月09日 01時17分 JST

場所や時間を選ばない柔軟な働き方「テレワーク」が、今、再びスポットライトを浴びつつある。

通信技術の発達とともに、テレワークの考え方は1970年代のアメリカ西海岸から生まれた。日本では、バブル期に高騰する都心オフィスコストの抑制策としてその萌芽が見られたものの、バブルの崩壊とともに退潮していく。当時の通信環境を考えれば、やむを得ない面があっただろう。

2000年前後からノートPCの普及が進み外出先で仕事をする姿も多く見られるようになった。にもかかわらず、企業、とりわけ大企業が従業員に対してテレワークを推奨する機運は高まらなかった。それらの企業があらためてテレワークと向き合うのは、あの東日本大震災以降のことである。災害時のリスク分散の必要性を痛感させられたのだ。

さらに5年経った今、テレワークの意義はますます大きくなった。それは、企業の災害時のリスク分散ばかりでなく、少子高齢化や経済の沈滞など、日本が抱える諸問題解決への大きな助けとなる可能性をテレワークが秘めているからにほかならない。通信技術の進化もまた、テレワークの導入を後押しする。

■ 国が笛吹けど踊らず。一方、海外のテレワーク事情は?

国土交通省や総務省をはじめ、国もテレワークを推進している。家庭生活との両立による就労確保、高齢者・障害者・育児や介護を担う者の就業促進、地域における就業機会の増加などによる地域活性化、余暇の増大による個人生活の充実、通勤混雑の緩和などの効果を見込んでのものだ。

それでは、日本で、テレワークは実際にどの程度普及しているのだろうか。

国土交通省「平成26年度テレワーク人口実態調査」によれば、日本の在宅型テレワーカー※1の数は、 2011年以降急増し、2012年には930万人に達した。しかし、その後は2年連続で数を減らし、2014年には前年比約170万人減の550万人となっている。また、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー※2の数は約220万人で、全労働者に占める割合は3.9%にすぎない。

一方、海外に目を転じると、テレワークの先進国、アメリカの民間企業では週に1日以上在宅勤務する労働者が40%近くに達し、EU加盟国でも就業時間の4分の1以上をテレワークで行う労働者がイギリスで8.1%、フランスで5.7%、ドイツで6.7%、北欧諸国で10%前後といずれも日本より高い割合を占めている。(出典: 社団法人日本テレワーク協会『世界のテレワーク事情 2012年4月』)

国家戦略の一部と位置付けられながら、日本でテレワークの普及が進まないのが現状だ。

※1 普段、収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でICT(情報通信技術)を利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ICTを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間あたり8時間以上である人のうち、自宅(自宅兼事務所を除く)でICTを利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人のこと。

※2 週1日以上終日在宅勤務を行っている雇用者。ただし、週に5時間以上テレワークを実施している人のうち、自宅(自宅兼事務所を除く)で ICTを利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人。

■ テレワークの本格的運用を始めたレノボ・ジャパン、なぜ今?

そうした中、PCメーカーのレノボ・ジャパンは、社員に対して2016年4月から回数制限なしのテレワークの導入に踏み切った。

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同社は、2005年の創立時に上限週1回のテレワーク制度を設けていた。しかし、実際にテレワークを行う社員はほとんどいなかったという。それが、2015年12月にパイロット版の取り組みを始め、2016年の3月4日にはレノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータ、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、モトローラ・モビリティ・ジャパンのグループ4社の東京オフィスに勤務する社員がテレワークを実験的に実践する「テレワーク・デイ」を実施。個人情報取り扱いなどの理由で社外業務の難しい一部部門を除き、対象社員の94%(547名中514名)が参加した。

制度設立から10年の時を経て、なぜこのタイミングでテレワークの本格的な運用に舵を切ったのだろうか。レノボ・ジャパン代表取締役社長の留目真伸氏は、その理由をこう語る。

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「2011年に、NECパーソナルコンピュータをジョイントベンチャーという形で統合しました。グループ4社にはそれぞれ異なる背景がありますが、例えばNECパーソナルコンピュータは日本の伝統的な企業風土、文化を持っていて、かつての働き方はテレワークになじまないものでした。ただ、統合から5年が過ぎ、4社の企業文化の融合も進んでいます。また、IOT(モノのインターネット)ということが盛んにいわれる昨今は時代の大きな節目でもあり、まさにこの時が最適のタイミングだと判断したのです」

■ 未来型企業の求めるテレワーク。普及が一気に進む可能性も

テレワークの普及が順調に進んでいるとは言いがたい日本。海外勤務の経験も長く、各国のテレワークの実情を目の当たりにしてきた留目社長に、テレワークを導入するためには何が必要なのかをあらためて尋ねた。

「我々が制度自体を10年前から持っていたように、多くの企業が制度やインフラは備えているでしょう。ですから、テレワークの導入にあたって大切なのは、マネジメントに携わる人間がその必要性を本当に認識し、決意を持って取り組めるかどうかだといえます」

テレワーク導入の必要性。レノボ・ジャパン、そして留目社長は、それをどうとらえているのだろうか。

「4月から女性活躍推進法が施行されますが、女性の働き方、あるいは団塊ジュニア世代が間もなく直面する介護の需要の問題など、ワークライフバランスの面からテレワークが求められているのは、ある意味では当然のことです。

むしろ、企業にとっての本質的な意義は別のところにあると考えています。これからの時代、ベストなイノベーションやソリューションは、企業の中からではなく、外から生まれてくると想定すべきでしょう。そこで重要になるのが、一企業としてのバウンダリー(境界線)を越えていくことです。社員も会社の外に出て、さまざまな人と出会い、さまざまな刺激を受けながら経験値を蓄え、仕事をしなければなりません。グローバリゼーションやテクノロジーの進化に対応した未来型企業を志向する上で、回数無制限のテレワークの導入は必然だったのです」

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子育てや介護、ワークライフバランスなどの働く側の希望から、または就労確保・就業促進、地域活性化や通勤混雑の緩和などの社会的な要請から語られる機会の多かった、テレワークの推進。雇う側のメリットとしてはおおむね生産性・業務効率の向上が挙げられるばかりだったが、レノボ・ジャパンは未来予想図を描く中で新たな価値を見出している。

テレワークは人や社会のためならず。自らのためなのだと本当に考える企業が増えれば、テレワークの普及も一気に進むかもしれない。その時に、働く者や社会全体が得られる果実は決して小さくないものだろう。