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「もっと大人を信じてもらえる社会に」虐待・貧困の子どもを支える3keys

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森山誉恵さん | HuffPost Japan
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NPO法人3keysの代表、森山誉恵さん(28)は、虐待を受けたり、貧困下にある子どもたちへの学習支援などを通じて、子どもたちの問題に向き合っている。学生時代から児童養護施設でのボランティアを行ってきた森山さんが、目指しているのは「もっと大人を信じてもらえる社会にしたい」ということだという。話を聞いた。

――今の活動の始まりは学生時代の学習支援ボランティアと伺っています

元々は、私自身が大学生時代に個人で、都内の児童養護施設で週に1度の学習支援活動をしたときに感じた問題意識がきっかけです。その施設には、学習支援のボランティアのグループがあって、ウェブサイトでそのボランティアを募集していたので、メールで問い合わせをしました。でも、それから2カ月間応答がなかったんですね。それで2カ月後、忘れたころにメールで「来てください」と返事があったので施設へ出かけました。

まずは打ち合わせ?と想像して行ったのですが、5~10分程度説明があってすぐ「じゃ、あの子を担当してください」と。それまでに家庭教師のアルバイトをしたことがあったんですが、模擬授業をしたりとか、もっと厳しかった。ギャップを感じました。つまり、施設の職員さんにはメールを返したり、きめ細かく指導方法を打ち合わせたりする余裕がまったくなかったんです。

――児童養護施設で、というとどんな子が対象ですか?

今の児童養護施設にいる子で、いわゆる孤児というのは5%程度。ほとんどの子は親がいるのに、何らかの原因で親元ではなく、施設で暮らしている子です。貧困や虐待が背景にある子が多いです。

――施設で学習支援をされ、何を思いましたか?

まず「どうしたらいいかわからない」と戸惑いました。子どもも勉強するなんて「聞いてねーし」という感じで、「今日はボランティアが来て一緒にする日だ」という認識すらなかったです。それでも、学習を始めたんですが、なかなか前に進まない。行っても、担当の子はふて寝していたり、「来なくていい」「ウザい」「嫌い」と言われたり。私は、心細くて「役に立っているんだろうか?」「私、何で来ているんだっけ?」と、自問自答しました。始める前の私は「大変な子の力になりたい」と思っていたのに、空回りしているようでした。それで来なくなってしまうボランティアの人もたくさんいました。でも、実際に来なくなってしまうと、子どもが傷ついている様子だったんです。

――「来なくていい」と言ったのにですか?

はい。職員さんが「あのボランティアの方はもう来られなくなりました」と、言ったときに、身体が固まって反応できなかったり、寂しそうにしたりする子どもの姿を見ました。小学生でも、「なんで来なくなったの?」と聞く子もいました。職員さんは取り繕って「ちょっといろいろ忙しくてね」などと説明しますが、「自分があんなひどいことを言わなかったら、まだ来てたのかな?」と言って、複雑そうな顔をする子もいました。私の勝手な解釈かもしれませんが、その顔が心に引っかかって、私はやめることができなかったんです。せっかく善意でボランティアを始めたのに、子どもへの傷のほうが深く残る可能性もあるんだなと学びました。

――今も森山さんが続けているのはなぜですか?

続けていると子どもたちが素直になってくれる瞬間があったんです。ただ単に私がしぶとくてあきらめたのかもしれませんが。勉強に専念するまで、時間はかかりましたが、焦らずに待っていれば子どもたちに変化が出てくることがありました。何気なく学校であった話をしてくれたり、好きなピアノの話をしてくれたり。「本当は保育士になりたいんだ」とある日ポロッとこぼしてくれた女の子もいました。

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3keysの森山誉恵さん(右)と渡邉恵梨歌さん

――焦らずに待たなければいけないのですね

最初にきつい態度をとることなどは「試し行動」と呼ばれることもありますが、施設にいる子どもたちは大人への不信感がとても強いといいます。結局、最初に本当に信頼できる人かどうか、子どもたちは、試していたのかもしれません。裏切られる辛さを思ったら「どうせこの人もいなくなるんだ」と先回りして考えて、自分の心を防御するために心を開かない。だから、子どもは単に拒絶しているわけではない。それをしっかり信頼関係をつないでいかないと、すれ違いで残念なことになってしまいます。

そのようなことをボランティアにも伝え続けないと、心が折れることも大いにあります。でも施設側にはそのような余力はない。自分で大学生のボランティアを集めて活動しようと、学生サークルとして2009年に「3keys」を設立し、卒業と同時に2011年にNPO法人を設立することになりました。

――3keysの今の活動はどのようなものですか

まずは私が個人でしてきたような児童養護施設など虐待で保護された子どもたち向けの支援活動です。学習支援ボランティアとして、大学生や社会人の方に登録をしてもらい、2015年度は関東の18カ所の児童養護施設や自立援助ホーム、母子生活支援施設で小学生〜高校生約140人への学習支援を行いました。あとはセミナーや講演会などの啓発活動です。事業を立ち上げたころに比べたら「子どもの貧困」に向けられる社会の目が大きく変わってきたことを本当に感じます。虐待と貧困の関連性についても当時はほとんど知られていませんでした。この時期にもっとスピードをあげて提供できるものを増やしていきたいと思います。

そして、子どもたちの悩み相談に加えて、最近新しく取り組んでいるのが、子どもがインターネットでたどり着ける様々な支援の情報が掲載されているサイト「Mex」です。例えば、いじめや虐待、進学、犯罪被害、からだとこころの問題などを相談できる場所がどこにあり、どう連絡したらよいのかといったことを知らせています。

――実際の学習支援だけでなく、新しい事業としてサイトを使うのはなぜですか?

児童養護施設などにいるいないにかかわらず、困っている子や、児童養護施設などに来る前の段階の子にも支援を届ける必要があると思ったからです。子どもの貧困対策として、無料学習塾などをされている方もよく話されているのですが、「気になる子ほど支援の場には来ない」という問題があります。

そういう子は、親にも頼れず、家庭ごと社会から孤立しているという家庭が多いようです。親の側も子どもに関わる余裕がないので、色々な支援活動があってもそれが子どもに伝わらないという場合が多いのです。虐待の一種、育児放棄に近いような状況でしょうか。それをそのまま放置しておくと、最悪の状態、つまり親自身が一人で抱え込んで虐待などにつながり、強制的に児童養護施設などで子どもが保護されるという状況になる可能性があります。そうなる前の子どもたちが、より支援の手につながりやすくしていきたい。適切に頼れる大人がいれば、それは防げると思うのです。

――貧困家庭など大人の側の余裕のなさは深刻ですね

余裕のない大人だけを見ていると、子どもたちはさらに「自分で解決しなくては」と考えます。だから、学校などでも先生に相談することもできずにより、孤立感を深めてしまいます。その結果、「大人は自分の都合でしか生きない」「都合が悪くなると叩く」という感覚が広がって、せっかく支援団体などがあってもそこには相談しないという状況になってしまいます。その結果、社会からも孤立してしまい、問題が表に見えづらくなってしまう。

そうなる前に、「裏切らない大人もいる」と知ってほしい。スマホで見られるインターネットにしか駆け込む場がない子もいると思います。そんな子にも、適切なアドバイスをくれる大人もいると知ってほしいのです。現在は東京周辺だけ、60ぐらいの支援団体などのサービスが掲載されていますが、ゆくゆくは全国に広げていきたいと思っています。

――ネットの駆け込み寺ですね

はい。でも、ネットの世界の現状は、こういう誰にも言えない悩みがあって駆け込んできた子に非常に悪影響を与える部分もあります。例えば、「いじめ」「死にたい」と検索したら「自殺の方法」が見つかったり、例えばQ&Aサイトで、そういうやり切れない思いを吐露すると「じゃあ死ねば?」なんて冷たい言葉が投げつけられてしまうこともあるのが現状です。そうではなく、必死で助けを求めてネットの世界に逃げ込んできた子に対しても、このサイトが届くことによって、なんとか支援の手がつながるような仕組みを作りたいんです。子どもたちの間でもあたりまえのサービスとして認知度が上がり、困ったときに思い出してもらえるようなサイトにしたいと思っています。

■森山さんよりお願い

3keysの支援事業は、皆さまからの寄付によって運営されています。2016年度は約1400名の子どもたちに支援を届けることを目指しています。そのためにも継続的に支援をしてくださる寄付者が不足しています。ぜひ私たちと一緒に子どもたちを応援していただけたら嬉しいです!また、3keysでは一緒に働く職員ボランティアも募集しています。支援を広げていくためにもぜひご覧ください!

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