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「『医療は全員に』は違う」長谷川豊アナが抗議の署名届けた患者女性と対談

2016年10月18日 18時52分 JST | 更新 2017年02月05日 21時22分 JST
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

フリーアナウンサーの長谷川豊さんが9月19日に更新した「自業自得の人工透析患者は殺せ」とするブログなどが大きな批判を集め、長谷川さんがニュース番組などを降板する騒ぎになった。

長谷川さんは自身のブログやインタビューなどで「言葉が過ぎた」などと謝罪したが、Change.orgを利用して、抗議のネット署名を呼びかけ2万5000以上を集めた腎臓病患者の野上春香さん(仮名、41)は、ハフポスト日本版の取材に対して「謝罪のポイントが違う」と憤り、患者の声を知ってほしいと話した。その一方で、「長谷川さんが本当に訴えたかったことを聞き、一緒に未来を考えたい」とも考えていた。

参考記事:「透析は大勢の死者の上に成り立っている」長谷川豊アナに抗議の署名・女性患者が訴えること

参考記事:「長谷川豊さんになぜ強く反論しなかったのか」対談した腎臓病の女性患者が疑問の声に答える

野上さんは10月15日、都内で長谷川豊さんに対面し、集まった署名を手渡した。ハフポスト日本版では、野上さんとともに長谷川さんの話を聞いた。

      ◇

野上:今回、私がChange.orgで署名のページを立ち上げて色々な方が広めてくださり、勇気をもらいました。それで、ハフィントンポストの取材を受けました。その記事をご覧いただけましたでしょうか。

長谷川:はい。まずは何よりも、とても悲しい思いや嫌な思い、辛い思いをさせたと思います。野上さんに賛同してたくさんの方が署名されてたと思うんですね。その全ての方に、心からお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。

野上: 記事の中で、過去には腎臓病で亡くなる子どもがすごく多くて、私も実際に友人を亡くしたという話をしました。結局、治療費のことを苦に自殺されたり、ご家族の方が病気を苦に一家心中したりってことがありました。それが元で患者会などから働きかけがあって、ようやく制度ができたわけじゃないですか。それまでの間に亡くなられた方が制度の礎になった。

長谷川:単純にいたずらに私を攻撃しようという人間もおりましたし、非常に悪意を持って拡散する人間達も残念ながらいるにはいました。ただそれ以上に、私も冷静に読み直してみてこれは申し訳ないことをしたなという思いがありました。

野上:こうしましょうっていうアイディアがあるのに、そこに説明するまでたどり着かなかったわけじゃないですか。なのでそういうのはやっぱりもったいないと思います。

■なぜブログに暴言を書いてしまったのか

野上:取材で私が話した中で、共感する部分、ちょっと違うと感じた部分はありましたか。

長谷川:まず、経緯を話しますと、新聞で日本の総額の医療費の速報値(2015年度)が40兆円を超えてしまった、さらにこの1年間だけで1.5兆円増えてしまったという数字を見て、愕然としまして、このままでは普通に考えれば医療費が増えて行くし、すごく努力をしても多分現状維持。これはなんとか現状を変えなければいけないと。

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野上:それは考えなければいけない点ではあると思います。

長谷川: 医療費の中でも透析医療は非常に高い。それで取材を始めました。ブログを書いた日の取材で、病院に必ずしも態度がいいとは言い切れないような感じの患者さんがそれなりにいらっしゃって、その方々に看護師さんであったりとかお医者さんは非常にかかりきりになってしまって、他の多くの透析を受けている患者にまで手が回らなかったりとか。どうしてこういう態度を取られる方々がいらっしゃるんだろうと疑問に思いました。

野上:例えばどんな態度でしたか。

長谷川:「誰のせいでこの病院が潤っていると思っているんだ」とか「先生が言っているのは理想論だと、俺らは俺らで苦労しているんだ」と言ったりとか。また、女性の看護師の方のお尻を鷲掴みにしてゲラゲラふざけながら笑いあっている患者さんがいました。でも、大半の透析患者の方はご高齢の方なので、じっとゆっくり横になっていらっしゃったんですけれども、そういう方々が少なくない人数いらっしゃって。

野上: その方々はお年寄りの方々ではない?

長谷川:50代60代が多くて、50代の方が特に一番良くなかった。そのまま、医師の方、透析医療棟の看護師の方、事務職員の方にヒアリングを行いました。皆非常に憤っていらっしゃって、そういう人たちに、年間500万も600万も支払われている、日本人の平均年収よりも上だ、と。そして、彼らも救わなきゃいけないけど、彼らに大半の労力が割かれてしまって、他の方々に対してしっかりとしたケアができないと。そういう訴えをされて、そのテンションのまま家に帰ってブログを書いたんですね。

残念ながらインターネットの記事というのは、きつい言葉や、非常にショッキングなワードがないと振り向いてもらえない世界っていう一面があって。けれども、そうしているうちに汚い言葉が自分の中で慣れたんでしょうね、良くない方向ばかりに転がっていました。 だからもう一度自分を見つめ直します。丁寧な発信でもいつか届くようにやるようにしたいと思います。

野上:結局そうするとアイディアを持ってる人とかそういう人との縁が切れちゃうと思うんですね。なので普段話してらっしゃるのと同じ口調で全然書いた方が私はいいと思いました。

■「医療は全員に」は違う(長谷川さん)

長谷川:ただ、多くの方々が私の批判をするときに「医療というのはやはり全員にするべきだろう」というご意見でしたが、それに関して私は少し違う意見を持っています。

野上:私は理由や経緯を問わず、必要な方には必要な処置をしていくというのが、本来のあり方だと思いますが、長谷川さんとしてはどう思われているんですか。

長谷川: 私の現状を見ていただければわかると思うんですけれど、大人の社会というのは言うまでもなく自己責任というのは当然、最低レベルのものが付きまとうのではないかと。 なので、私はアナウンサーとしてああいうブログを書いて、すべての仕事を失って、今収入がゼロになりました。当然だと思っています。言うまでもなく自己責任だと思います。

例えば、同じ保険分野では、車両保険の話をしてみたいと思います。脱法ドラッグを吸った、ラリった状態で車を運転して事故を起こした、そんな人物の車両保険が出るでしょうか。出る訳がありません。当たり前ですけれど、ある程度の線引きは全ての世界で存在すると思っています。どんな背景があろうが、限度というものが存在します。確かに、脱法ドラッグを吸った人は違法行為をしていません。心が弱かったでしょう。育つ環境で苦しい思いもあったかもしれません。でもそれをみんなのお金で出し合っている保険でカバーするかどうか話は別です。

(編注:脱法ドラッグによる運転事故では、危険運転致死傷罪で起訴され有罪になった事件もある)

私たちジャーナリストの世界でも、今イラクやシリアに行ってISに捕まって人質に取られても言うまでもなく切り捨てられます。自己責任だからです。今は、無差別に全てを救いすぎているのではないかという思いがとてもあって、そこに警鐘を鳴らしたかったのですね。

「今のシステムは甘やかしの部分があるのではないか」というのは僕のブログやコラムの中では常々言ってきたことなんですが、同時に非常に残酷で冷たい提言でもあると思うんですよね。だからこれは、誰が正しいということではないと思います。

野上:老化による脳の変化で、感情のブレーキが効かなくなることもある。それに対して、手がつけられないから「もう駄目」って言って跳ね返しちゃうと、それはやっぱりやってはいけない事だと思うんですね。

病気に至る原因に、生来持っている弱点や、家系的に持っている弱点がある。普通に暮らしてきたのに突然病気になってもうその後の人生の予定がめちゃくちゃになって、50代60代の方がヤケを起こさずにいられるかって言ったら、気質にもよりますが、やっぱり難しい方っていうのはいると思うんですね。それを投げ出すのはアウトだと思います私は。

そこも含めて見てあげるのは、医療の仕事なので。「甘やかし」というか、お目こぼしの部分を作ってあげないと患者さんも潰れちゃうと思うんですね。私は友人に看護師や介護福祉士が多いんですけど、困った方に殴られて青アザだらけになっていることもあるんですよ。それでも、そんな風になる前、荒れた状態になる前の事も知ってるから、投げ出すことは出来ないってやっぱり皆言うんですね。 なので、甘やかしというのは、私は違うと思いますね。

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長谷川: 多くのジャーナリストの方や、野上さんのご意見を伺って、勘違いしてらっしゃるのは、そもそも医療というものはそういうものだという固定概念にとらわれすぎていることじゃないかと思っています。

医療にもお金がかかります。そのお金は誰が払っているでしょうか。若者世代や労働世代が大半を支払っています。若者世代や労働世代の今の生活はどうでしょうか。そこをもう少し真剣に考えなければいけなくて、「どこから自己責任なんだ、これは難しい」と言って大半の人が思考停止をしています。これは完全に間違っています。

■「運転免許のような点数制度を医療に」(長谷川さん)

野上:では、どういった医療制度にすべきだと考えていますか。

長谷川:はい、1つは、アメリカの一部の州のように、医療の保険料を支払うのが正当かどうかを民間の保険会社にちゃんと精査してもらうというシステム。そしてもう1つが、運転免許の点数システムの話で、この2つがブログで続編として書こうとしていたことです。

運転免許には最初の6点から違反によって減点されていくシステムがあります。駐車違反ならマイナス2点とか。引かれていってゼロになると免許が一時停止になって、お金を払って講習を受けて6点が復活する。年間の交通事故死亡者数は16年連続で減少しています。細かい点数計算のシステムを作り上げた結果、ちゃんとした結果も出しています。こういう努力をしなければいけない。

野上:私は、保険料を「搾取している」っていうイメージを長谷川さんが持ち過ぎていらっしゃると思います。支出は大変ですが、健康保険は自分が何かあった時のために、みんなが払っているものです。なので「搾取されている」というのは違うと思うんですよ。

長谷川:日本の国民健康保険や年金制度というのは強制徴収です。強制的に徴収するというのであれば、支払いでも努力や削減をするべきです。

運転免許のシステムで言うと、ちゃんと安全に乗ってた人はゴールド免許というプラスのシステムもあります。例えば、野上さんご自身は腎臓に先天的な疾患があり、でもちゃんと透析の手前で自分を律してると思うんですね、こういう方々は、仮に責任があろうが何があろうが、国民のお金で絶対に全部救わなければならないんです。みんなで守らなければならない。

でも逆にお医者さんの言うことを聞かなかった、薬を出しても飲まなかった。そういう方々はひょっとしたらマイナス2点、 マイナス2点で引いて講習を受けてもらって。

野上:講習っていうのは良い考えかもしれないですね。

長谷川:講習を受けて態度を改めればちゃんと全額負担にしてあげればいいと思います。ただ、 本当にそれでも言うことを聞かないという人はいるかもしれない。その人たちのお金は、何の落ち度もない人たちを守るために使われるべきなんです。

でも今のままだと、目に見えているのは、人工透析患者が一律の負担をする将来が来る。10年以内に3割負担になるでしょう。みんな死にます。だとしたら知恵を絞ってどこかで線引きして、救える人を重点的に救うというシステムにすべきです。

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野上:トリアージ的なことをしようということですね。

長谷川:トリアージとは?

野上:トリアージは負傷の度合いによって患者を選別するシステムです。災害救急の時に現場でけがの程度を判断して負傷者にタグを付けて、「今実際に助ければ間に合う」っていう人を先に助けて、助かる見込みのない人を後回しにします。「今こっちに手を取られたら、他の助かる人もダメになってしまう」という事態を防ぐものです。

■「切り捨てるのではなくケアプランを」(野上さん)

野上:講習を何度もして「こういう風にしましょう」というケアプランを立てるのはいいと思います。一生懸命診察しても、お薬は飲んだふりして捨てちゃったりとか、隠れて食べちゃったりとかをやめられない人はいます。そこ 関連記事

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