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パートナーシップ証明書から1年、渋谷区の次なる取り組みは? 長谷部健区長「マジョリティに変化を起こせるか」

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2015年11月5日にスタートした同性カップルへの「パートナーシップ証明書」の発行開始から1年、渋谷区はダイバーシティ推進のための施策を積極的に進めている。今度はLGBTのためのコミュニティスペースの設置を打ち出し、そのキックオフイベントが11月3日、行われた。渋谷区では11月末から「LGBTコミュニティスペース #渋谷にかける虹」を開設し、月に1度、LGBTが集まり様々なテーマで語りあう場所を提供するという。

多様性を目指す渋谷は、今後どんな取り組みをしていくのだろうか−−。長谷部健・渋谷区長らが登壇した当日の様子をレポートする。

shibuya

長谷部健・渋谷区長

◼区長や当事者らが語る「同性パートナーシップ条例」制定までの道のり

イベント冒頭、長谷部区長が挨拶に立ち、LGBTコミュニティスペース開設の意義を語った。

「条例はパートナーがいる人のための施策。今後は思春期の子供たちや、その親などのサポートも考えていきたい。このコミュニティスペースの開設もそのような取り組みの一つです」

また渋谷区のマークに(LGBTの多様性を表す6色の)レインボーカラーをあしらった「レインボーアイリス」も長谷部区長からお披露目された。

続いて、第1部では「同性パートナーシップ条例」成立までを関係者が振り返るパネルディスカッションが行われた。パネリストはトランスジェンダーとして条例の制定に関わってきた杉山文野さん、渋谷区男女平等・多様性推進会議会長で弁護士の大川育子さん。府中青年の家件を担当するなどこれまでLGBTの人権問題に関わってきた弁護士の中川重徳さん。


(左から)杉山文野さん、渋谷区男女平等・多様性推進会議会長で弁護士の大川育子さん、LGBTの人権問題に関わってきた弁護士の中川重徳さん。

パディスカッションでは、まず杉山さんが区議時代の長谷部区長とともに同性パートナーシップ条例に取り組むことになったきっかけを語った。

「“なぜ渋谷区で?”と聞かれたことが多かった。きっかけは清掃ボランティアで長谷部区長と知り合ったこと。この活動についてTwitterに投稿したら、たくさんのLGBTが参加するようになった。それで何か出来ないかなと話したのが始まりでした」

◼︎「まずは正確な知識を共有することからのスタートだった」

大川さんは条例制定に一から取り組んだ苦労を振り返った。検討委員の8名も初めはLGBTについてほとんど知らない人が多く、まずは正確な知識を共有することからのスタートだったという。「私は人権擁護委員も長年勤めていますが、その委員に話してもなかなか理解が得られませんでした。子どもたちへの教育を含めた啓蒙が今後も重要だと思います」

長年LGBTについての課題に取り組んできた中川弁護士は当初、公正証書2通が必須とされていた渋谷区の制度を、特定の自由に該当する場合は1通でも良いと変更した意義について語った。「私は長年、LGBTの人たちの公正証書作成にも関わってきたので、それにかかる費用を知っていました。条例の前文には人権の問題だと書いてある。それなのにお金がある人しか利用できないのはおかしい」

しかし、事務方からは「緩くしすぎると制度として成り立たない」という危惧の声も上がり、議会で反対派の声が大きくなる恐れもあった。それらの事情を勘案した結果、現行案という落とし所になったようだ。

中川さんは最後に、今後の展望を語った。「行政とLGBT当事者がはじめからつながっていれば、費用が高いという問題ももっと早く検討されていたはず。条例が出来てゴールではない。こうして関わったからには、渋谷区には“本物”になってもらいたい。カギは当事者の意見を聞くこと。そして当事者も積極的に声を上げていってほしいですね」

◼︎若い当事者たちが語るコミュニティセンターへの期待

第2部は「LGBTの若者が期待するコミュニティスペース『これから』」と題して、NPO法人ReBit代表理事、薬師美芳さんとメンバーによるディスカッションが行われた。ReBitでLGBT教育に取り組む薬師さんは、性的少数者がいじめにあいやすかったり、自死念慮を持つ傾向が高かったりするなど、子ども時代から成人するまでに多くの困難があることを解説。渋谷区で新設されるコミュニティスペースの意義を語った。


(中央)マイクを持って話すNPO法人ReBit代表理事の薬師美芳さん、(右)ReBitのソウシさん

ReBitメンバーでゲイのソウシさんは、地方で過ごした高校時代までネットでは繋がれてもリアルではなかなか当事者とつながることが出来ず孤立していたという。「コミュニティセンターは、様々な年代の人たちが集まり、性的少数者の若者が将来のロールモデルと出会えるような場所になってほしい」と希望した。

レズビアンのAさんも、地方に住んでいた20歳の頃まで当事者と1人も出会ったことがなかったといい、「コミュニティスペースが昔の自分のように孤独を感じている当事者の助けになれば」と語った。

アライ(LGBTの支援者、理解者)として参加したヤマモトさんは「LGBT当事者と一緒に考えていくことが重要。そのためのスペースとして活用していきたい」と話した。

■制度を活用している人の声「社会に認められた」

渋谷区の「同性パートナーシップ証明書」の申請第1号となったLGBTアクティビストの東小雪さんとパートナーの増原裕子さんも現在の心境を語った。


東小雪さん(左)と増原裕子さん(右)

「制度を利用して感じたのは安心感です。社会に認められたということが自己肯定感につながりました。肯定的に報じられアライが増えたことも嬉しいですね」(東さん)

「里親を希望する同性カップルは多いと思います。里親制度の管轄は東京都ですが、渋谷区から都に対して働きかけてもらいたい」(増原さん)

長谷部区長は、次のステップについて「マジョリティに意識の変化を起こせるか」などと展望を語った。

「条例の制定前には批判の声も少なからずありました。しかしそのほとんどは正確な知識に基づかない差別的なものだった。これは正しくないと思いました。結果として条例制定後にはそのような声はなくなった。これからは次の段階。マジョリティの人たちに意識の変化を起こせるかどうかです。みんなで第2のウェーブを、ビッグウェーブを起こしていきましょう」

今後、月に1度のペースで渋谷男女平等・ダイバーシティセンター〈アイリス〉で、コミュニティスペース「#渋谷にかける虹」が開催される。初回は11月29日。18時30分から20時まで。

(取材・文 宇田川しい

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