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アメリカの民主党は破裂した。これからどうすべきなのか?

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2016年11月9日、ニューヨークで大統領選挙後の記者会見を行ったヒラリー・クリントン氏。

11月8日、民主党は破裂した。

これから何カ月もの間、民主党はどうすべきだったのかについて戦犯探しや内部での報復が続くだろう。しかし明らかに衝撃的な完敗だ。メキシコ人を「レイプ犯」呼ばわりすることで選挙戦を開始したドナルド・トランプ氏は、ラテン系からの得票数でミット・ロムニー氏を8ポイント上回った。黒人票でも2012年のロムニー氏を上回り、ラストベルトの4州――ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン――で勝利した。バラク・オバマ大統領は今よりも厳しい経済状況の中でも、ラストベルトの州を2度にわたって制している。ヒラリー・クリントン氏が一般投票の数で上回ったことは重要だが、結果は変わらない。

なぜこういう結果になったのか、そしてこれからどうすべきなのか?

出口調査で明らかになったことがいくつかある。オバマ大統領に投票した多くの人々がトランプ氏に投票した。CNNのデータによると、トランプ氏はオバマ大統領を支持した有権者の10%の票を獲得し、次の大統領は「よりリベラル」であるべきと考えている有権者の23%の票を集めた。トランプ氏は組合票でロムニー氏を大きく上回った。ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は大卒ではない白人層からの票でロムニー氏を14ポイント上回り、年収3万ドル未満の世帯では16ポイント上回った。トランプ氏を支持する民主党員の存在は幻想ではない。クリントン氏にとってこうした重要な有権者層を失ったのは痛手だった。

楽観的な民主党関係者は長い間、オバマ大統領を中心とした有権者たち――若者、有色人種、低所得者層、散在する白人専門職層――の団結は安定していて、多数派として規模が大きくなっているから民主党は常に有利な状況にあると信じてきた。しかし2008年と2012年の大統領選の勝利は、初の黒人大統領であり、優れた才能を持った一人の政治家によるところが大きかったのかもしれない。

オバマ大統領は、民主党内の対立する2つの勢力を団結させた。タイム誌は彼を第二のフランクリン・デラノ・ルーズベルトだと評する一方、彼自身は企業に優しく、自由貿易を推進する「新しい民主党」の一員である。反ウォールトリートで革新的なバーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員を支持する数百万人のアメリカ人は、オバマ大統領のことを支持している。ビル・クリントン大統領や経済学者のラリー・サマーズ氏を賞賛するような裕福なテクノクラート層も、同様に彼を支持している。

それはオバマ大統領の政策にも反映されている。彼は数百万人の国民のために医療保険を拡大しながら、労働者を危機にさらしCEOをより豊かにする貿易協定を結んだ。

このような二重性は、新しい民主党とニューディール主義者たちが45年間争ってきた議会にも浸透した。オバマ大統領以外の他の政治家が彼らの団結を維持できるかどうかについては、端的に言って不透明だ。

本来なら筋書きはこうなるはずだった。クリントン氏が決定権を握るが、閣僚人事や政権の重要ポストの決定についてはウォーレン氏と共同で行う。すべてがウォーレン氏の思い通りにいくわけではないが、クリントン氏はポピュリストの支持を失わないようにバランスを取っていく。クリントン氏は進歩的な政策を取り入れながら中道路線を進み、党は団結するはずだった。

しかし、サンダース支持者と民主党内の進歩派のステニー・ホイヤー(元院内総務)派の争いはすでに始まっていた。議会の進歩派幹部会共同議長のラウル・グリハルバ氏は民主党全国委員会の「完全な立て直し」を求め、サンダース氏は支持を伸ばした

クリントン夫妻は約四半世紀の間、国の中心に居続けてきた。民主党員の丸々一世代が、クリントン家は政治権力の中枢にいるという理解のもとで育ってきた。彼らが政府の舵取りを担うものと思われてきたが、今は後ろ盾を失った。今の段階では、党の将来の方向性を決めるのに有利な立場にいるのは進歩派の方だ。しかしトランプ氏と共和党が多数派を占める議会では民主党の政策は壊滅的な敗北を喫することになるため、どちらの勢力も自分たちの見立てが正しいと証明できるような政治的勝利をあげることはできないだろう。そしてこれから先の選挙での敗北も迫っている。2018年の中間選挙の見通しは民主党では恐ろしいものだ。共和党優勢の州で5人、激戦州で4人の上院議員が再選を争うことになる。党の主導権争いに敗れた側の不満は長い間消えないだろう。

一方で、アメリカの左翼を囲い込むのは難しい。サンダース氏の連合は一枚岩ではなく、ニューディール主義的なポピュリストも多かった一方で、民主党を嫌っている旧ソ連的な社会主義者もその一員だった。進歩派が勝利したとしても、サンダース派とヒラリー派のインテリ層の厳しい確執によって思想的立ち位置が変わっていくことが予想される。

多くの人は、トランプ氏の勝利は初の黒人大統領に対する白人至上主義者の反動であり、初の女性大統領誕生を恐れた女性差別主義者たちによるものだと捉えている。トランプ氏の下劣な選挙活動を考えれば、それらが重要な要素だと結論付けるのは当然だ。

しかし醜い態度は空から降ってくるわけではなく、永遠でもなければ不変でもない。経済学者のロブ・ジョンソン氏とアルジュン・ジャヤデフ氏が1979年から2014年までの景気後退を調査した新しい論文によると、失業と人種差別に緊密な関連性があることがわかった。失業率が上がれば、差別も増える。ニューヨーク大学の心理学者グループによる2014年の調査では、経済的困窮状態では人種的憎悪が高まることが明らかになっている。2015年にはドイツの3人の経済学者が、経済危機が起きるとほぼ確実に「極右」政党が大幅に躍進することを明らかにした

経済的不安が人種差別の唯一の原因ということではないが、それがひとつの要因になり得ることが示唆されている。ラストベルト(錆びた製造業地帯)と呼ばれるのには理由がある。トランプ大統領を誕生させた考え方を民主党が打ち消したいと思うなら、彼らは労働者の経済的向上のために今より力を入れる必要がある。

「私たちは30年以上の間、基本的に経済以外の様々な問題をテーマにして選挙を戦ってきました」と、クリントン氏は、ニューヨーカー誌のジョージ・パッカー記者に語った。「一貫性のある、強固な経済政策を打ち出してきませんでした」

その通りだった。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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