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潘基文氏、大統領選に黄信号? 「油ウナギ」と呼ばれ支持率が伸び悩む

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2017年内に実施される韓国大統領選。台風の目になるとみられた潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長(72)の支持率が、早くも伸び悩んでいる。

ban ki moon 2017
2017年1月12日、仁川国際空港に到着し、支持者らに出迎えられた潘基文氏

韓国中西部・忠清北道の高校からソウル大学に進み、外交官、大臣を経て国連事務総長に上り詰めたサクセスストーリーで、韓国では人気があり、国連事務総長の在任中から退任後の大統領選出馬が噂されてきた。

2016年いっぱいで国連事務総長の任期を満了した潘氏は、年が明けた1月12日、韓国に帰国した。仁川国際空港で「国家と国民のためにこの身を燃やす用意があるかと問われれば、いくらでも皆さんとともにする」「国家の発展に寄与する」と、明言はしなかったが大統領選に事実上の出馬宣言。その後は毎日、全国津々浦々を回る行脚を続け、韓国メディアが一挙手一投足を追いかけた。

しかし、民間世論調査機関のリアルメーターの最新の調査によると、1月第3週の潘氏の支持率は、前週比2.4%減の19.8%。首位を走る野党第一党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)氏の29.1%との差が開いている。

何が原因なのか? 韓国メディアは、主に政治指導者としての経験不足と、全国行脚しながら発するメッセージへの失望感を挙げる。歯切れが悪く、つかみどころのない発言から「油ウナギ」というあだ名をつけられた。

ban ki moon 2017
1月13日、故・盧武鉉大統領の墓地に参拝する潘基文氏。潘氏は盧武鉉政権で外交通商相を務めた

潘氏を支えるのは主に保守系のグループ。弾劾訴追された朴槿恵大統領に近いと見られるのを嫌い「政治交代」という言葉で刷新感を打ち出そうとしているが、中央日報は「メッセージに感動や国家観が見えない」という陣営内部の声を伝えている。

匿名の潘氏選対の関係者は「故・盧武鉉氏の墓地や光州事件の犠牲者の墓地など、政治的な色彩が強い所では、どんなメッセージを送るか、注意して徹底的に準備するべきなのに、前日の夜に教授何人に『何を言おうか』と尋ねるような感じなので、混乱しないはずがない」と述べた。(中央日報、1月19日)
ある側近は「左右を融合するという趣旨は良いが、自分のビジョンと計画を明確にし、それに合った動きをしなければいけない」と話し「先に全国を行脚することから始めたので、国民は『あれは何だ?』という状況になった」と述べた。選対の構成も同じだ。潘氏が帰国直後に登場した選対チームは、李明博・朴槿恵の両政権で働いていた人々がほとんどだ。このため、野党からは「与党系の人だけ集めた」と言われる。(朝鮮日報、1月19日)
全国行脚の訪問先で発言する内容も、韓国の政治・社会の現実を正しくとらえていないという指摘がある。深刻な若年失業の問題について「インターンの拡大」や「ボランティア」「海外進出」と主張して、若者を怒らせるだけに終わったのが代表的な事例だ。(中略)国政全般についてのプランがなく、準備不足ではないかという疑問が膨らむばかりだ。(ハンギョレ、1月19日)

発足1週間の潘基文選対の内部からは、すでに亀裂も聞こえてくる。キャンプの主軸をなす「外交官系」と「李明博系」の間で内紛が繰り広げられているという。金塾(キム・スク)元国連大使が率いる外交官・側近グループと、李東官・元青瓦台広報首席秘書官、クァク・スンジュン高麗大教授ら「李明博系」の対立は深まっている

外交官グループが李明博系の政治家を意図的に排除して、最終的に「純血路線」をめざす兆しも見られる。ある関係者は「外交官グループが派閥をつくりながら『李明博系のせいだ』とを主張している」として「政治も、選挙も知らない人たちが現場をめちゃくちゃにしている」と声を高めた。選対を仕切る「11人会議」のメンバーで、政策担当として参加した「李明博系」のクァク・スンジュン高麗大経済学科教授も、このような背景から何日も出勤していないことが分かった。この関係者は「私たち(李明博系及びジャーナリスト出身)は、外部で別途戦略を立てて、潘氏に報告することにした」と打ち明けた。(韓国日報、1月19日)

当初は、与野党から幅広い人材を糾合して新勢力となる「ビッグテント」構想が掲げられたが、実情はどんどん「スモールテント」になりつつある。国連事務総長時代は擁立構想に積極的だった勢力も、今や潘氏との連携に完全に後ろ向きだ。

野党第2党「国民の党」の朴智元代表は18日の記者懇談会やラジオのインタビューなどで、潘氏との連携の可能性について否定的に語った。「理念、危機管理能力、取り巻きの人々が、国民の党の理念から遠ざかっている…。ほとんど(連帯の)門は閉ざされたと解釈しても過言ではない」

「共に民主党」内で保守系の金鍾仁・前非常対策委員長も聯合ニュースとのインタビューで、潘氏について「私が見たところ、あまり魅力を感じない」と切り捨てた。

■慰安婦「日韓合意」巡り「二転三転」報道に怒る

象徴的なのが、日本と韓国の慰安婦問題を巡る「日韓合意」についての発言だ。

2015年12月末の合意直後、潘氏は国連事務総長として「朴槿恵大統領がビジョンを持って正しい勇断を下したことを歴史が高く評価すると思う」と称賛していた

ただ、帰国直前に釜山で新たに少女像が日本領事館前に建てられ、韓国内で合意への批判が高まると、帰国する飛行機内で応じた中央日報とのインタビューでは「(日本政府が拠出した)10億円が少女像の撤去に関連したものであれば間違っており、むしろ金を返さなければならない。とんでもないことだ。断固とした対応をしなければならない」と、一転して厳しい姿勢を打ち出した。

その後も国連事務総長時代の発言との整合性を記者たちから質問され続け、18日には記者団に対し「私に着いて回って慰安婦問題を聞かないで下さい。フェアな闘いじゃない」といらだちを見せ、以後は慰安婦問題の質問に応じないと宣言してしまった

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■アメリカから親族の逮捕要請も

自身や親族のスキャンダルの報道も相次いでいる。外交通商相と国連事務総長時代に23万ドル(約2700万円)の裏金を受け取っていたという疑惑が持ち上がった(本人は否定)ほか、アメリカの検察当局が実弟を贈賄容疑で逮捕・身柄送致するよう韓国検察当局に要請したと報じられている。

聯合ニュースによると、潘基文氏の弟・基相氏(69)父子は、韓国の建設会社からベトナム・ハノイでの住宅・商業施設販売を委託され、アメリカ人のブローカーを通じて、中東の官僚に多額の賄賂を送ろうとした疑いが持たれている。アメリカ連邦検察官のダニエル・ノーブル氏は1月20日にニューヨークの連邦裁判所で開かれた審理で、基相氏の逮捕とアメリカへの身柄送致を求めたと明らかにした。

弾劾訴追された朴槿恵大統領が最終的に罷免された場合、2017年12月の予定だった大統領選が早まるとの見通しが強まっており、候補者と目される顔ぶれの熾烈な駆け引きもすでに始まっている。こうした報道が出るのもその一環だが、支持率は今後も大きく上下する可能性があり、情勢は流動的だ。

ハフィントンポスト韓国版に掲載された記事を翻訳・加筆しました。

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韓国・釜山の少女像問題
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