ベネズエラ、政府に抗議のバイオリンを奏でた青年が血まみれに 病室でも愛器は手放さなかった

服が血で汚れ、顔が膨れ上がっても「明日には街に戻ります」。バイオリン青年は抗議活動を続けると表明した。
EPA時事

南米ベネズエラで7月22日、反政府デモと治安部隊が衝突し、抗議のバイオリンを弾いていたことで世界的に有名になった青年が負傷した。青年はTwitterに動画を投稿。服が血で汚れ、顔が膨れ上がるなどしながらも、「明日には街に戻ります」と述べ、抗議活動を続けると表明した。

この青年は、23歳のウイリー・アルテアーガさん。5月にベネズエラの首都カラカスで、機動隊がニコラス・マドゥロ大統領の退陣を求めて抗議デモをする市民に向かって催涙ガスを発射する中、バイオリンで国歌を演奏する様子が報道されて世界的に話題になった

ベネズエラでは3月下旬から政情不安が一層深まり、抗議デモが激化している。きっかけは、マドゥロ大統領が「国を再建する」として新憲法制定の手続きに乗り出したことだ。

経済や治安の悪化により、マドゥロ政権は2015年の総選挙で野党連合に惨敗。これに対し、マドゥロ大統領は、野党が多数を占める議会決議を無視したり、批判的な野党指導者を逮捕したりと強権的な姿勢を続けていたが、さらに憲法改正に着手した。憲法そのものを変えることで、政権の延命を図る狙いがあるとみられる。

このことに、国内外から批判が殺到。以降、マドゥロ政権に反対するデモが続いている。

アルテアーガさんはバイオリンを弾いてマドゥロ政権に抗議を続けてきた。5月24日のデモでは一時、州兵にバイオリンを取り上げられる事態も起きたが、それでも、抗議活動をやめなかった。

ロイター通信によると、7月22日にカラカスでは、数千人のデモ参加者が最高裁判所に向かってデモ行進。これに対して治安部隊は、催眠ガスを投げるなどし、衝突は数時間続いた

この日の衝突で、アルテアーガさんも負傷。YouTubeにはアルテアーガさんらが演奏しながら行進している最中に突然銃声が鳴り響き、デモ隊が散らばっていく動画が投稿されている。

アルテアーガさんは顔などを負傷。しかし、手当を受けた病院でベッドに横たわりながらも、バイオリンは手放さなかった。病室で動画を撮影したTwitterユーザーは、「ベネズエラは立ち上がる。ウイリー・アルテアーガさんは本当に尊敬に値する」などと投稿した。

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