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2018年01月31日 14時58分 JST | 更新 2018年01月31日 15時24分 JST

100年前、すでにパリには痴漢がいた。

1910年には「女性専用車両」の提言が…

RETRONEWS

ラッシュアワー時、彼らは地下鉄の車両のごった返した人混みを利用して、あなたにゆっくりと、しかし確実に、迫ってくる。

彼らの名は「痴漢」。フランス語では「frotteur(こする人)」と呼ばれる。彼らは被害者に対して、頼まれもしないのに体を擦りつけてくる。痴漢はたいてい公共交通機関など、人がすし詰め状態になった場で猛威を振るう。被害者が抗議の声を上げるのは難しい。

「窃触症」(同意していない他者の体を触ったり、自らの身体をこすりつけることに性的興奮を感じる性的倒錯)は、「ワインスタイン事件」以後、「#MeToo」や「#BalanceTonPorc」(フランス版の#MeToo)といったハッシュタグとともに、SNS上で数多くの女性から告発されたセクハラや性暴力被害の中に姿を見せた。

犯罪および刑罰対応国家観測所(ONDRP)が発表した調査では、フランス人女性の半数(51%)が交通機関に乗っているときに身の危険を感じると回答した。

痴漢はこうして最近とくに取り上げられることが多いが、残念なことに、それは真新しい行為ではない。

1910年、すでにフランスでは、女性たちが鉄道の車両内で身を擦りつけてくる男性に不快感を示しており、公共交通機関で男女が共にあることの是非がくりかえし議論されていたのだ。

今日支配している空気は実際、100年前とまったく同じようだ。1910年11月12日付のフランスの諷刺週刊誌「Le Rire」には、こんな文章が躍っている。

「地下鉄はさわり魔、愛撫好み、老若問わず大胆不敵な男どもの待ち合わせ場所だ。押し合いへし合いやすし詰めの熱気にかられて、世にも大胆なふるまいが行われている」

1910年、「女性専用車両」の導入も提案された

そこである考えが提唱された。列車内に女性専用の区画を作ればいいのではないか。「Le Rire」誌内の同じ記事で、市議会議員のピロ氏なる人物が、「地下鉄における女性専用車両」の創設を主張しているのだ。「こう言わねばなりません。ある特定の時間帯、乗客が我先にと駆け込んでいるとき、女性が地下鉄で身の危険に晒されることがあってはならない」

列車内に男女別の空間ができる可能性について、当時の新聞はいっせいに反応を示している。1920年5月には週刊誌「Le XIXème siècle」に、「女性だけの車両」と題された記事が掲載された。

「地下鉄は、列車の数が十分ではなく、友愛の学校ではない。私たちはぎゅう詰めにされ、肘を使って密着状態をなんとかしようとする。そこにきてご婦人方は、少し器用すぎたかもしれない手に撫で回されたと、不平をもらしているのだ」

また「地下鉄会社は車両が足りていない」ため、女性専用車両の導入は容易ではないとしている。

手段に欠けるというだけでなく、この案は万人の信頼を得ることができなかったようだ。1928年5月の諷刺週刊誌「Le Journal Amusant」にはこんな記述がある。

「女性専用車両にいればご婦人方の操が守られるという保証はどこにもない。今モンマルトルや他の界隈で、女性限定のナイトクラブがある。曰く、そこでこそ最悪の事態が起こっているということだ!」

では、一緒に列車旅行をしたいと思っている男女のカップルはどうなるのか。「一緒に旅をしたいと望むカップルのために、男女混合の車室を確保しておく必要があるだろう」と「Le Journal Amusant」の筆者は付け加えている。

大股を開いて席に座る男性(マンスプレッディング)も、1937年に問題化されていた

男女の共存、女性への迷惑行為をめぐる問題は、公共交通機関の長年の課題だったことがわかる。しかし問題は痴漢だけではなかった。すでに1937年、挿絵入り雑誌「Midinette」で「マンスプレッディング」が話題となっているのだ。

マンスプレッディングとは何か。この語に市民権を与えたネット辞典「Urban Dictionnary」によると、それは「男性が両脚を最大限に開きながら座る」行為を指す。両脚を開脚しながら座ることで、こうした男性は電車やバスの座席をときに2つ分占領し、しばしば隣の席の人に迷惑をかける。

公共交通機関で男女の共存は不可能?

では公共交通機関での男女の共存は不可能なのだろうか。いくつかの大都市を例に、対応策の広がりを見てみよう。

メキシコに住む女性たちにとっても、痴漢は永遠の悩みだ。対策として現地の地下鉄会社は、ラッシュアワー時に女性専用車を設けることを提唱している。しかしそれだけでは十分ではなさそうだ。メキシコシティでは、10人中9人の女性がすでに公共交通機関内での性被害を経験しているからだ。

ロンドンでは2017年8月、労働党のクリストファー・ウィリアムソン議員が、女性専用車の(再)導入をめぐる議論の口火を切った。男女混合もしくは男性禁止の車両を選べるようにするということだが、イギリス国内では「女性・男性双方への侮辱」などと、導入に否定的な声も多いという。

痴漢は今日、セクハラあるいは性暴力の一形態であり、フランスでは民法の規定にもある通り、5年間の懲役および7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金に処される可能性がある。

やはりONDRPの報告によると、2014年から15年のあいだで少なくとも26万7000人のフランス人が公共交通機関内で性的被害に遭ったという。そのうち85%が女性だった。

※編集部注:フランスの交通機関では2018年1月現在、女性専用車両は導入されていない。日本での女性専用車両の歴史は古く、「男女が近接する状況を避けるべき」との考えで、1912年に中央線で初めて「婦人専用電車」が導入された(しかし、すぐに廃止された)。2000年12月に京王線で試験導入され、警視庁が2005年に鉄道会社に導入を要請したことから、首都圏でも一斉に運用が始まった

フランス国立図書館の新聞デジタルアーカイブRetroNewsとの協力によるハフポスト・フランス版の記事を翻訳・加筆しました。