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【絶滅危惧種】たった数匹しか生きていなかったヤリタナゴをもう一度呼び戻したい 15年の軌跡

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ヤリタナゴという生物を知っているだろうか? 体長10センチほどの淡水魚で、かつては、日本中のどの地方の田園地帯の里川で、ごく普通にその姿が見られた。しかし、高度経済成長期に環境が激変し、絶滅危惧種となってしまった。群馬県藤岡市の岡之郷用水は、ヤリタナゴが生息する群馬県唯一の地域だ。

その岡之郷用水でも一時は「ヤリタナゴはもういなくなった」と思われていた。1990年代後半、大調査が実施され、岡之郷用水にヤリタナゴの生存が確認された。その数、たったの数匹。それでも確かにヤリタナゴは生きていた。

2015-08-06-1438843849-3111184-.jpg「ヤリタナゴを守る会」会長の福田耕一さん

岡之郷用水の真ん前で、生まれたときから暮らしてきた一人が福田耕一さんだ。福田さんにとって、そこは物心ついたときからの遊び場。特に魚取りは放課後のお楽しみだった。ヤリタナゴは決して珍しい魚ではなく、たくさんの生物であふれていた。「川の魚はみんな大好き。少数ながらヤリタナゴがいるとわかった以上、そのまま放っておけない。誰がやってもいいけれど、誰もやらないという状況は避けたかったから、私がやろうと思いました」と福田さんは振りかえる。

かつてヤリタナゴは人間の手入れによって繁殖していた。

福田さんが「ヤリタナゴを守る会」を立ち上げたのは1998年。「守る会」として、やるべきことは何か。ヤリタナゴは、里川に住む魚。岡之郷用水は、里川であり、田園地帯を流れる農業用水だ。長年の間、農民たちが草刈りや堀さらいを欠かさず手入れしてきた。人間の手入れによって、生物が暮らしやすい環境ができあがった。ヤリタナゴは人間との共生によって生き延びてきた魚なのだ。そのサイクルが壊れかけているのが、原因なのではないだろうか。そのため、一度崩れたサイクルを正常化させるサポートを行おうと考えた。

一般的に農業用水は、農閑期の冬場は水門を閉めてしまい水が涸れる。また、堀さらいの時は、水門を閉めて作業をしやすくする。水門を閉めれば水はなくなるため、当然、用水に生きる生物はヤリタナゴに限らず死んでしまう。

福田さんは農家を集めて勉強会を開き、常に水が流れている必要性を訴え、水門を常に開いておける環境づくりを説明した。粘り強い丁寧な説明が住民たちを動かし、水門の問題は解決した。

「大きなターニングポイントは、堀さらいの日程を全地区同一にしていただいたことです。よくここまでたどり着いたと思いました」と福田さん。それまでは、各地区の堀さらいの前に住む生物をすべて採取し、一旦隔離する。堀さらい後に、川に戻す。この大作業を堀さらいごとに年に何度も行っていたが、一度で済むようになった。

活動は右肩上がりに前進できたわけではない。水門の故障や工事時の手違いなどが原因で、突発的に水がかれてしまい、魚たちがほぼ全滅してしまったことは何度かあった。「さすがにこれ以上はできないのではないか」と落胆しつつも、残った魚たちをベースに、少しずつ繁殖を増やせるよう、再び水路の調整に励んできた。

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新たなる舞台へ

農業に携わる方々との連携に加え、地元の小中学生を対象にしたヤリタナゴ観察会も毎年開催を続けてきた。活動は15年を超え、予想以上にたくさんの人々の理解を得られたという実感を持つ福田さん。全体が当事者意識を持って活動できるように、「守る会」の活動を地域づくり活動の一つに組み込んでいきたいという構想も持つ。福田さんの挑戦は次のステージに向かおうとしている。

「ヤリタナゴを守る会」は、他の保護団体と共に、トヨタのハイブリッドカー「AQUA」が全国各地で展開する環境保全活動のAQUA SOCIAL FES!!に参加している。「藤岡以外の人々に広くヤリタナゴについて知っていただく絶好の機会」と福田さん。ヤリタナゴの観察会を通して、身近な自然環境を守る人々の思いを共有することができるだろう。

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今年6月に開催されたAQUA SOCIAL FES!!の様子

群馬県藤岡市を舞台とした「ヤリタナゴ保護プロジェクト」は秋ごろ開催を予定しています。詳細・お申込みはウェブサイト(http://aquafes.jp/projects/160/)をご覧ください。

(取材・執筆:上毛新聞社 磯 尚義)

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