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時間にとらわれない言葉を拾い集める―ハフポストブログレビュー

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こんにちは、井土亜梨沙です。
ハフィントンポストブログレビューも3回目となります。

今週は、「時間にとらわれない輝き」を放つブログ記事5本を集めました。セクシュアルマイノリティの方々を支援する若者の記事から、ポケモンGOを社会学的に捉えた記事まで、多種多様なトピックを取り上げました。

ブログ記事とニュース記事は異なる点が多くあります。そんな当たり前のこと...って思われるかもしれません。異なる部分を列挙すればキリはないのですが、私が好きなブログの特徴の一つは、「必ずしも速報性にとらわれない」ことです。個人のオピニオンは、何かの事件やイベントと同時期に発せられるものとは限られません。むしろ、その事例を通して、自分なりに整理して、他の人の意見も聞いて、謙虚に発せられることが多々あります。それらの言葉には、時間にとらわれない輝きがあります。

中学時代


大学生のりぃなさんは、「誰も隅に追いやられない教育へ~学校の先生がLGBTを知らなくて良いの?~」でセクシュアルマイノリティ支援団体・BALLoonを創設した久保勝さんにインタビューをしました。彼はLGBTの当事者ではありません。しかし、「中学時代の同級生が、大学生になってからゲイであるとカミングアウトしている」のを知ったのをきっかけに、LGBTの存在を知るようになりました。その時、彼の友達が「ホモ」と呼ばれても何も言わなかった昔の自分に罪悪感でいっぱいとなります。

その時気付けなかった友達の苦しみを、彼は無駄にしていません。教育現場でLGBT教育を普及するために支援団体を創設したのです。中学時代に戻って、彼の友達を助けることはできません。しかし、振り返って、考えて、一人でも多くのセクシュアルマイノリティの人たちに手を差し伸べることはできます。

2週間前


青年海外協力隊を経て、現在もバングラデシュに住むジェイさんはダッカのテロ事件を受けて、「バングラデシュのテロがもたらした気持ちの変化」で自分の気持ちの変化を素直に綴っています。

最初、「ぼくは事件が起こってから、必死にこれは本来のバングラデシュなんかじゃない、イスラム教徒は怖くなんかないと発信してきました。」と述べ、その当時彼が発信したツイッターを紹介しています。そのあと、「少し日数が経ち冷静に考え始めると、これもバングラデシュなんだと認めなきゃいけないなと思えてきました。」と自分の中にある「バングラデシュ」さえ、現実と遠ざかっていることに気づくのです。

2週間経って、冷静に自分の大好きな「バングラデシュ」に向き合えたからこそ、彼は今後、「今の仕事を通じて雇用を促進してい」きたいと気持ちを強くします。

5年前と3ヶ月前


今から、5年前の出来事を振り返ってみましょう。特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所 理事長の上昌広さんは、「災害時にも、女性が働き続けられる仕組みを」で、 熊本地震の事例から新村浩明・ときわ会常磐病院(福島県いわき市)院長から興味深い話を聞いた。」「新村院長は、東日本大震災の際に584人の透析患者を無事に避難させた医師だ(当時は副院長)」。

東日本大震災の際に、「大災害が起こると、自宅が壊れ、避難を余儀なくされ、」「保育所や学校も閉鎖され、」「夫は仕事を続け、母親が家族の面倒を見ることが多い。」ため、「大災害が起こると女性は働けなくなる。大勢の女性が勤務する病院は災害に気づきます。ところが、このことは、あまり議論されてこなかった。」という事実に直面します。

女性の仕事をサポートする保育園、お年寄りの入った介護施設は震災が起きれば、影響は受けるでしょう。その際に、医療現場で働く女性は、どのような選択を迫られるのでしょうか。災害時だからこそ、必要な人材はいます。首都圏に住んでいる方に限った話ではありません。東日本大震災と熊本地震、その他多くの出来事から私たちはまだまだたくさんのことが学べます。過去を振り返る材料はいつでも揃っているのです。

「決してこうはならない」と誓っていた昔


ハフィントンポストUS版ブロガーのキャサリン・ディートリッヒさんの肩書きは妻で、母親です。彼女は30代の母親たちに向けて、「毎日必死に頑張っている30代のママたちへ。私はこんな気持ちです」という手紙を書いています。20代の時に「決してこうはならない」と誓っていた母親像に自分たちが今まさになっていることに気づかせてくれます。過去の「理想主義」だった自分と現実の自分の差異に気づくのは、著者ももちろんそうですが、そのブログ記事を読んだ読者もです。

彼女は、そのことについて、「しょうがない」し、「30代の子育ては決して楽じゃない」と冷静に受け止めています。そして、あと10年経てば、40代がやってきて、また自由な時間が戻ってくると伝えています。

しかし、「楽じゃない子育て」に直面している母親たちに悲観してばかりいられないとも伝えているのです。30代の時にしか味わえない「真夜中に柔らかいほっぺたを胸にくっつけてくる、あの感触。転んだ後に、私に向かって伸びてくる小さな手。」などの「魔法の時間」はもう戻ってこないのです。「自分の好きなことができない10年だったとしても、母親を楽しめる本当に素晴らしい時間だから。」と述べ、20代の時に気付けなかった人生の幸せな瞬間に光を当てます。

ポケモンGOが配信された今


スマホ向けゲームのポケモンGOが7月22日に配信されました。いくら過去の出来事や自分を振り返ろうとしても、外に出れば、スマホの画面とにらめっこしている人々の「今」に出会います。社会学者の鈴木謙介さんは、今週リリースされた「ポケモンGO」について、「「ポケモンGO」を社会学的に考えるためのヒント」を書いています。

彼がこの記事を書いた理由は、「たとえば卒論で「ポケモンGO現象を扱ってみたい」という学生なんかに対してヒントになる」ためとしています。つまり、鈴木さんは「ポケモンGO」という最新のアプリから、長年培われた「社会学者的視点」を取り入れながら、このアプリが社会にもたらす現象を分析されています。

この記事の中では、ポケモンGOを社会学的に分析し、そこで想定しうる「問題」に対して、すぐに結論を出すわけでもありません。その上で、「今後の議論のあり方としてはドローンや自動運転の場合と同じく、広い社会的認知のもと、「あるべき状態」がオープンに論じられるべき」と述べています。

ブログは、その個人が、速報性に必ずしも左右されることなく、過去の出来事を振り返るという特徴があると最初に書きました。そのブログは多くの人の目を通すことによって、異なる視点から意見が飛び交うようになります。そして熟成された議論は、未来の私たちに少しかもしれませんが、変化をもたらすのです。

2016年7月3週の5本

  1. 誰も隅に追いやられない教育へ~学校の先生がLGBTを知らなくて良いの?~」(りぃな/ハフィントンポスト日本版)
  2. バングラデシュのテロがもたらした気持ちの変化 」(ジェイ/ジェイ・ステーション)
  3. 災害時にも、女性が働き続けられる仕組みを 熊本地震の事例から」(上昌広/ハフィントンポスト日本版)
  4. 毎日必死に頑張っている30代のママたちへ。私はこんな気持ちです」(Catherine Dietrich/ハフィントンポスト日本版)
  5. 「ポケモンGO」を社会学的に考えるためのヒント」(鈴木謙介/SOUL for SALE)