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すっぴんの広告があってもいいじゃん。矛盾だらけのお願いを会社の先輩に頼んだ。

すっぴん日記 第13話

2017年11月07日 06時59分 JST | 更新 2017年11月18日 13時01分 JST

9月13日 水曜日  天気:晴れ 肌:さっぱり

VERY10月号が先週、発売された。普段はあまり手にしない雑誌なのだが、同僚の林亜季さんが登場したから、貪るように読んだ。どのモデルも美しいし、かっこいい。ひときわ目に留まったのが、化粧品の広告だった。

1カ月の「化粧断食」をしていることから、私はばっちりメイクの女性に飢えていたのかもしれない。顔をどアップにしても一点の曇りもないその表情は、芸術的でさえあった。

そこで私は、とてつもなくアホなアイデアを思いついてしまったのだ。

すっぴんで広告風写真を撮ったら、どうなるかということ。

David_Ahn via Getty Images

そこで、同僚の関根先輩に頼むことにした。こんなアホみたいなことを真剣に聞いてくれる先輩は、彼しかない。20歳近く年上だけど、若手の面倒をよく見てくれる。冗談も通じる。よし、聞いてみよう!

真面目な顔つきをした先輩に近づいた。

Arisa Ido
私の斜め前に座る関根さん

「関根さん、あの。。。」

「なんや」

「あのですね、今忙しいですか?」

「ええで」

「あの、私の写真を撮って欲しいんですけど」

「ええで。最高の1枚撮ったるわ」

た、頼もしい...。優しすぎて、どんどん頼みづらくなる。

「どんな写真がええねん」

「えっとですね。ざ、雑誌っぽく」

もごもごする私に先輩は、スパッと答えた。

「そんな撮ったことないわ。俺は、いつも報道写真ばかりなんや」

「で、ですよね。実は、広告のモデルっぽく撮って欲しいんです」

「私、すっぴんなんですけど」

関根さんが黙ってしまった。

あんなに普段からよくしゃべる先輩がついに口を閉ざしてしまった。死にたくなった。

「...」

「よし、とにかくやろか」

や、やるんだ...。2人とも、これから待ち受ける壮絶な戦いがどうなるかも知らず、会社のスタジオに向かった。

イメージをつかむために、VERYで見ていた広告を参考にしながら、イメトレをした。

完璧な化粧広告に近づくには、3つの大きなハードルが待ち構えていた。

① 私は、モデルではない

② 関根さんは、雑誌のカメラマンではない

③ 広告風の写真なのに、メイクは一切しないし、フィルターもかけない

それらを克服する方法は、これだ。

① 何百枚も撮る。奇跡の1枚に頼るしかない

② それでも、写真の技術はある。彼が撮る人の写真が私は好きだ。どうにかしてもらおう

③ これは、ハードルではない。むしろ、私のニキビ跡まで見えるように撮って欲しいとお願いした。主役は、すっぴんの顔だからだ

いざ、撮影となり、私はすべての恥を捨てる覚悟で臨んだ。

イメージは、こんな感じだ。さて、どれくらい近づくのだろうか。

Getty Images/iStockphoto
広告のイメージ写真

Makidotvn via Getty Images
広告のイメージ写真

まずは、撮ってみる

Kazuhiro Sekine

なんだこれは。私のアホヅラ全開じゃないか。

化粧品の広告に出てくる女性は、美人なだけじゃない、かっこよさや知的さ、人間として憧れるありとあらゆるものを顔一つで表現している。この顔を見て、誰が感動するのだろうか。

もっと真面目な顔をしよう。

Kazuhiro Sekine

いやいや。なんだこの顔。

こんな言葉を添えたくなった

Kazuhiro Sekine / Arisa Ido

「関根さん、他の写真どうですか?ざっと200枚くらい撮った気がするんですが...」

「200枚くらい撮ったけど、1枚もあかんわ」先輩が苦しそうな表情を向けた。でも、私がここであきらめるわけにはいかない。恥ずかしい気持ちを抑えて、全部の写真を見て、何が足りないのかを2人で分析した。

光だ。光が足りない。

私たちは、今はあまり使われないスタジオからありとあらゆる光を集めた。

合計3つの強い光に囲まれて、私はまるで尋問を受けている容疑者のようだった。

Koldunov via Getty Images

もう2時間が経とうとしていた。

光は、かなり大きな一歩だった。一気に顔が明るくなり、陰影ができて、輪郭がはっきりと映るようになった。

写真を1枚1枚確認する作業を行うことで、私のアホ面とアンニュイな表情の違いも分かってきた。角度、光との関係、表情、髪のかかり方...。奇跡の一瞬を撮るために私たちの集中力はピークに達した。

そしてついに出来上がった。奇跡の数枚...。

Kazuhiro Sekine / Arisa Ido

Kazuhiro Sekine / Arisa Ido

Kazuhiro Sekine / Arisa Ido

これが、すっぴんの素人が光に頼りながら、命をかけて撮った広告風写真だ。

合計2時間半。合計1000枚以上。

クーラーのかかった部屋で、私たちは汗さえかいていた。

正直、もう自分が何をしたいのかわからなかった。でも、この写真、悪くないかも。

私は、素人だけどモデルさんがすっぴんの広告があってもいいんじゃないか。

そんなことを言いたいはずだった気がする。

◇◇◇

ハフポスト日本版でエディターとして働く私(27歳)は、2017年9月いっぱいを「ノーメイク」で過ごしました。仕事も、プライベートも、あえてメイクを塗らないことで見えてきた世界を、1カ月間少しずつ書き留めていきました。これから平日朝7時ごろ、順次公開していきます。

第1話:「1カ月間メイクしません」仕事にプライベートにすっぴんで過ごすことを決めた女27歳

第2話:「すっぴんで会社に来る人なんて、会ったことないかも」旧友の言葉で、考えた。

第3話:同窓会の前に、メイクに気合いが入るのはなぜだろうか

第4話:世界に誰もいなくなったとしたら、あなたはそれでもメイクをし続けますか

第5話:雑誌でよくみる「NGメイク」特集。いったい誰目線なんだろう

第6話:女が「女装」することの快感。

第7話:仕事において、一番気をつかう相手は同性かもしれない

第8話:なんで学校で、化粧してはいけないの?この質問に答えられる人っている?

第9話:初デートで彼女がすっぴんで来たら、どう思う? 7人の男性に聞いてみた

第10話:今日はなんだかメイクする気にならない。だったら、こんなことしようよ

第11話:すっぴんの成功体験で、私はもっと自由になった

第12話:「メイク」にまつわる7つの数字を、私なりに読み解いてみた

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