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21世紀力を教育するための改革

2015年02月10日 19時12分 JST | 更新 2015年04月11日 18時12分 JST
Kohei Hara via Getty Images

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、2月4日に上松恵理子先生をお招きし、「教育の情報化:各国の動向」と題して講演していただいた。その様子は、ICPFサイトで講演資料とともに公開した

注目してほしいのは、低学年の小学生でも作文はMS Wordを使って書く、というオーストラリアの実践についての質疑応答である。手書きよりも自動補正機能がある文書作成ソフトを利用したほうがスペリングを覚える力は弱くなるが、ネット検索すれば正しいスペリングも意味も出てくるので、全部覚える必要性はないという考え方だそうだ。教員がチェックするよりも、アンダーラインでミスが表示されるほうが、見落としがないという意見も出たという。

わが国では、子供たちに漢字を覚えさせるために、繰り返し手書きさせている。一方で、大人は、漢字を思いだせない時には、検索ウィンドウにひらがなを打ち込んでいる。情報通信技術がさらに進歩していく時代に生きていくことになる子供たちは、「だいたい」は覚えなければならないとしても、「完ぺき」に漢字を記憶する必要はない。どのように検索すれば正しい漢字にたどり着くかを理解できていれば十分である。これが21世紀を生きていくための力、21世紀力である。

プログラミング教育も話題になった。プログラミング教育というとソースコードが記述できるようになるための教育だと思うかもしれない。しかし、この講演で紹介されたのは、論理的な思考力を育てるためのプログラミング教育であった。小学校低学年は脳がどんどん発達する段階であるため、色々なことやらせておくのがよい。音感なども、大人になってからはもう手遅れで、論理的な思考力も同様だという。検索結果のどれが正しい漢字かを判断するにも論理的な思考力が必要だから、これも21世紀力である。

21世紀に生きるために何がどう必要なのかを考えてカリキュラムを作り、新教科を作ることが先進国では行われているそうだ。そのために、教科もカリキュラムも変えていくし、北欧では学習指導要領を少なくして教員の裁量を大きくしているという。21世紀力については各国共通の理解があり、対応した教育がすでに実践されている。学校教育の役割を見直さないと国も成り立っていかない、という危機感もあるそうだ。

講演で話題となった各国とわが国の差は大きい。21世紀に生きていく子供たちのためには、情報通信を利用する方向に少しずつ変えていく漸進的なものではなく、抜本的な教育改革を進めなければならないと痛感させられるセミナーであった。

わが国内でも、いくつかの自治体は21世紀力の教育の必要性をすでに認識し、首長主導で義務教育での情報通信の利活用に動いている。東京都荒川区、岡山県備前市などもそのような自治体である。次回のICPFセミナーでは、反転教育やプログラミング教育などに挑戦した、佐賀県武雄市の樋渡啓祐前市長に講演いただくことにした。どのような話が聞けるか楽しみだ。