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新聞の轍を踏むな! 今こそテレビ局は一つになる時

2015年04月19日 14時16分 JST | 更新 2015年04月19日 14時16分 JST

インターネットにより広告モデルが大きく変化している。すでに新聞はその広告価値をプラットフォームメディアに奪われ、苦戦を強いられているが、これは近い将来のテレビにも言えること。挽回するためテレビがしなければならないこととは何なのか。

電通から昨年の日本の広告費が発表になった。

 自分が注目する点は3点。

1・日本の経済成長の低迷に比例し国内の広告費はネット登場以来、15年間のびていない。

2・その中でメディア別のシェアに大きな変動がある。新聞広告15年間で半減。テレビ広告は微減ながらメディアパワーは維持。ネット広告はテレビ広告費の半分にいたるまで成長する。

3・ネット広告の最近の伸張はテクノロジーとデータを駆使した「運用型広告」による部分が大きいがスマホでその限界も顕在化し始める。

 インターネットは広告全体の「パイ」を拡大させる方向には寄与せず、既存の広告手法を置換させる方向にインパクトを与えた。特に紙媒体が大きな影響を受けた。新聞がインターネットにいちはやく進出しながら、結局プラットホームメディアであるヤフーの一人勝ちになってしまったのは各新聞社がバラバラに対応したから。ユーザーはパソコンでニュースを見る時に、各新聞社のサイトからではなく「ヤフーニュース」から見る。ネット利用者の情報流通プラットフォームへの依存度がそれだけ高いとも言える。ヤフーはどんな利用層が、いつ、どのくらい、どのニュースを見ているのかといったデータを膨大に蓄積している。そのデータはターゲット広告などに利用される。プラットホームメディアはコンテンツを外部調達し情報流通機能で利用デ―タが自動蓄積していくローコスト・高収益構造。新聞は第一次デジタル大戦で戦うべき相手を間違え、ドルバコだったクラッシュファイドアドをポータルメディアや専門サイトにもっていかれた。さらに若年層の紙離れと強みである販売網が足かせになり電子新聞での新規読者開発への自由なマーケテイング活動もスマホによる第二のコンテンツマネタイズチャンスが到来した今でもできない状況だ。ネット上の競合は他新聞社ではなく内外の新規参入プレーヤーであったし情報流通プラットホームであるというのが現在でも過酷な現実だ。

 新聞の例をみるまでもなく、コンテンツ制作者の側では誰が何をどれだけ見ているのかといったデータを一メディアが単独で多く収集するのは難しい。単独テレビ局がそれぞれ独自にネット上でコンテンツ流通を手掛けるのは多難だという事は新聞デジタルの15年の歴史が証明している。ネットの世界では情報流通プラットフォームは多様な利用層の精密なターゲッティングが可能でさらに顧客を獲得するのに要した単価まで追跡し算出することができるデ―タ効率最優先の構造。デ―タを制したものが勝者。

現時点では広告主はテレビとインターネットをうまく使い分け、テレビは「ブランディング」のため例えば新商品の告知のために集中的にスポットCMを打つというような使い方。インターネットはよりターゲットを絞って販促活動をしたい時に使うというテレビとネットとの「棲み分け」が今はできている。それはネット利用デ―タを通じてターゲットの人達の嗜好が把握でき「効率的」なターゲテイングが出来るから。

 最近のネット広告の潮流は、「広告枠」というコンテンツに依拠した広告スペース価値より、広告を見る人のネット上での情報行動データ分析から導かれたターゲテイングデータ価値が優先されている。つまりメディア価値(=メディアパワー)から広告価値が分離されて評価される傾向があるという事。

 例えばヤフーアドネットワークのページを開くと同じコンテンツをみていても人によって違うバナー広告が出るのはヤフーや広告主がそういう利用データを活用しているから。もちろんテレビでも時間帯や地域、番組内容などでターゲテイングが行われているが精度が全然違う。

 さらに広告料金もグーグル等で始まった「RTB=リアルタイムビッテイング」というオンライン上でのネット広告枠売買市場に媒体社等が広告枠を「セリ」に出し、一番高値をつけたスポンサーの広告が携載されるという形で決まる。その「セリ」は24時間365日行われメディアが独自で値決めできる余地が少ない。

 テレビはまだネットの影響を深刻には受けていないとは言えるがこの様な「ネット広告手法の影響」は確実に受け始めている。「ネット広告の影響」とは「広告投資効率」を視聴者=消費者の講買行動に目標をおき、そのプロセス菅理をできるだけ全数データで可視化してビッグデータ分析の手法を駆使して「効率的なメディアプランニング」を行うというもの。その様な発想や手法がマスメディアのプランニングにも強く影響し始めている、まさに「メディアニュートラル」の時代に多くのスポンサーや広告会社が入りつつある。広告費を効率的に投入して成長を内外でとげようという先端的広告主であればあるほど、グローバル競争に勝ちぬく為に「データ」を蓄積し続けている。

 そのグローバルのデータマーケテイングの戦いで一番、存在感を示しているのはグーグル。グーグルは、検索やアドネットワ―ク、ユーチューブを通じて膨大なネットユーザーの情報行動のデ―タを保有している。そしてそのデ―タをフルに活用してクライアントのもつデ―タとの「付け合わせ」を武器にグーグルへの広告の効率的出稿を提案する。フェイスブックも同様なスキ―ムで友達のつながりデ―タをもとにソーシャルターゲテイング広告を提案し、実購買データという最強のデータを保有するアマゾンもいつでも広告ビジネスに本格参入できる状態。

 さらにアメリカでは、ネットフリックス等の動画サービスがスマホやタブレットの普及とともに発達してきてテレビ利用のシェアを奪っている。そのマネタイズの主役が課金動画や動画広告。ユーチューブ。フェイスブックやツイッターのタイムライン、さらにはハフィントンポストやCNN等のメディアサイトにも普通に動画コンテンツや動画広告が流れる状況である。

 グーグル等は当然、ユーチューブのコンテンツを誰がいつどこで何回どこまで見たかという視聴全数データを把握している。当然そのデータの中にはクロームキャスト等を通じてテレビデバイスでネットコンテンツを視聴したデータも含まれている。グーグルはいつでもテレビデバイスを含めたあらゆるデバイスでインターネット的なターゲテイング広告をRTB方式の売り方で始められる状況である。

 日本のテレビは視聴者へのリーチ力が強く、視聴率というデータによってある程度広告効果も測ることができる。しかし最近は平均視聴率も低下し、録画視聴が増えるなどしているので、テレビとしてもネットを通じたデータマーケテイングを無視できない状況になってきている。

 急速に普及が進むスマートフォンはその画面サイズからPCネット的なバナ―広告は視認しずらく、PCよりフェイスブックやツイター、ライン等ソ―シャルメディアを通じた情報取得や、興味ある情報を整理して提供してくれるキュレーションメディアを通じて情報に触れる機会が多いデバイスである。同時に電子新聞コンテンツやクックパッド等利用目的がはっきりしたコンテンツアプリを長時間、何回も好きな時に好きな場所でみる事を可能にした一番、消費者に近いデバイスでもある。ユーチューブやニコニコの様な動画コンテンツへのニーズもきわめて高い。さらにソーシャルメディアとの親和性が高いためユーザー間で話題になったコンテンツが伝幡していくバズメディアの特性を強く備えていると共に、その携帯性からいわゆるWスクリーンによる他デバイスとの融合的活用や、「バルス」現象の様な同時共感体験や表現も可能にする多機能デバイスである。

 そこでの広告形式の本命は動画広告やネイティブ広告。これらの広告はユーチューブ動画広告やラインのスタンプ広告やフェイスブックやツイッタ―のタイムライン広告のようにコンテンツを掲載する際のデザインやメディア表現モデルに合わせて視聴提供されるかなりテレビ広告に近い「プッシュモデル」の広告である。

 スマホユーザーは隙間時間等での利用が多く「せっかち」であるといわれており、PCでのネット広告の目的であるクライアントホームページへの誘導よりも、動画広告の様にスマホ広告上で知らしめたり、ラインのスタンプ広告のように店舗にまで誘動する広告モデルが主流になるだろう。又、PCにおけるヤフーの様に誰もが立ちよる総合ポータルページは存在しづらく、目的別にユーザーがアプリを使い分ける状態になる。その状況ではきっちりコンテンツを提供してユーザーをつかまえられるメディアが「カテゴリーキラーメディア」になる可能性が高い。現状での勝ち組は、ラインやフェイスブック、ツイッター等ソーシャルメディアアプリ、動画コンテンツのユーチューブ、ニコニコ動画、ニュースキュレーションのヤフーニュースやスマートニュース等、クックパッドやタベログ等キラーテーマアプリとグーグルアプリ。当然、アマゾンや楽天もスマホ時代の勝者。キラーアプリやサイトヘユーザーが集中する結果、ユーザーの利用データは広告閲覧データも含めて蓄積し、その膨大なパーソナルデータの利活用がユーザーの理解を得ながら進んでいく事が予測される。メディアの価値はそのコンテンツやサービスの卓越性、信頼性とあわせて、築積された利用データの価値やそのメディアサービスが囲い込むユーザーコミュニテーの強さ、そして何よりもデータで可視化されるコンテンツの持つユーザー共感強度(コンテンツマグネチュード)によりユーザーやクライアントから評価される可能性が高い。

 在京キー局が共同でインターネットによる見逃し番組の配信サービスを開始を検討すると報じられているがテレビ局が共同してコンテンツをネット上に出すというのはそのテレビ外プレーヤーへの競争力と収益効率性が高いやり方。ユーチューブ、ネットフリックスなどネットで動画コンテンツを流通させるプラットフォームと、そこへコンテンツを提供するテレビ局側とで視聴データや広告の販売権等のイニシアチブをどちらが握るかの争いにかならずなると新聞各社とポータルメディア、サーチメディアのせめぎあいをみてきた自分は思う。

 クライアントは人気があり人が集まりデータを活用して広告メッセージを効率的に伝えられるメディアをニュートラルに選択する時代。ネット上には無数のコンテンツがあふれており、PCではサーチエンジンやポータルサイトの存在が必要だったがスマホ時代では、ユーザーが個人個人のスマホの画面上で、お気に入りアプリ等の「自分ポータル」を作る時代に入っている。逆にいうとPC時代におけるヤフーやグーグルといった巨人的な存在のないスマホ時代ではあらゆるメディアサービスプレーヤーにチャンスが存在する。と同時に「爆速スピード」をもてないプレーヤーはユーザーの選択の範中にはいらない。

 テレビ局がそこまでしてネットの世界に入って行くべきかどうか、という議論もまだあるががそれならテレビ各局側が独自に「テレビデバイス離れ」対策を取らなければならなくなる。それよりは、各局が共同でリスクヘッジをしながら、番組に関する視聴者データなどはなるべく外部に出さないようにしてメタデータ等と組みあわせてネット進出するというやり方が最良とグーグル等グローバルプラットホームのパワーの強大さを日夜、膚で感じる私は強く思う。

 先にふれた様にネットの世界では、広告の「効率主義」が徹底していて、そういう状況に慣れたスポンサーがテレビメディアに対してどのような対応を取るのかを考えるとテレビ局としても番組が実際に視聴者にどのように見られているのか、といったデータを自前で持っておくのは非常に重要な事。いま計測されている個人視聴率でも、ある程度は年齢や性別に関するデータを把握できるが、これだけインターネットが普及した今となっては中途半端なデータでしかないという印象だ。視聴者にどのように見られているかがわかるということは、例えば深夜帯で視聴率が低い番組でもこんな若者が見ているというデータを出せる番組なら生き残れる時代。ネットではあたり前の事だが。

 テレビ局が視聴者の利用データを把握するためにどうするかというのはテレビデバイスでは地デジをもってしても部分にとどまる難しい問題。しかし否応なくこれからのネットの時代においてはコンテンツの利用データを情報プラットフォーム側が持つのか、テレビ局側が持つのかという勝負になり。それに広告の価格決定権が付帯するメディアの生命線になる