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「ブラック企業大賞」で異例!NHKニュースが報道

2016年12月23日 21時55分 JST | 更新 2016年12月23日 21時58分 JST

ブラック企業大賞 電通に

このニュースをNHKが定時ニュースの中で全国的に報道したことは「ブラック企業大賞」の関係者の間で大きな話題になった。

「労働問題に取り組む弁護士やNPOなどが選ぶ「ブラック企業」大賞に、ことしは新入社員だった女性が過労のため自殺した大手広告会社の電通が選ばれました。

「ブラック企業大賞」は、労働問題に取り組む弁護士やNPO、ジャーナリストなど11人の委員が違法な長時間労働やパワハラなどで問題となった企業の中から選んでいます。」

出典:NHK NEWS WEB

今回で5回目を迎える「ブラック企業大賞」の実行委員会。

ニュースの原稿にあるように「労働問題に取り組む弁護士やNPO、ジャーナリストなど11人の委員」からなるゆるやかなグループで、私も委員の一人を務めている。

長時間労働や過労死、過労自殺などの悲劇をなくすために、社会に注意を喚起しようと始めた市民運動的なイベントが「ブラック企業大賞」だ。過労死や過労自殺など働く人間の命にかかわるような労働事件が起きても、日本では企業の名前がなかなか実名で報道されることが多くないので、せめて「ブラック企業」だと名指しすることで反省を促そうと5年ほど前に開始した。 

あくまで、注意喚起が目的なので、権威ある人間たちが厳正な審査の末に選ぶ「賞」とは性質が違う。

むしろ賞に選ばれることは企業にとっても不名誉であり、もらってもありがたくない「賞」なのだ。

このため、前の4回は、表彰式の会場に大手テレビ局のカメラクルーや大手新聞社の記者たちが取材で来ることはほとんどなかった。いきおい取材にやってくるのは、ネットでの記事配信や映像ニュース配信、さらには紙媒体も週刊誌やスポーツ紙、夕刊タブロイド紙など、どちらかというとマイナーなメディアばかりだ。

ましてや全国ニュース用にテレビカメラが入る、ということは一度もなかった。

ところが12月23日に表彰式が行われた今年、どの企業が「ブラック企業大賞」に選ばれるかということにこれまでにないほど関心が集中し、大勢のメディア関係者が会場に集まった。

理由はいうまでもなく、電通の過労自殺の事件である。

電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)の過労自殺は大手メディアでも大きく報道された。

それはとてもエモーショナル(情緒的)な事件だった。

若くて、前向き。知性もやる気もあった才気煥発な女性が長時間労働とパワハラで心の健康を失っていく。

そんな様子が多くの人々の心を揺さぶった。

彼女がツィッターに残した悲痛な言葉の数々について言及しながら「表彰状」を読み上げた実行委員の男性が声を詰まらせた。

また、高橋さんの母親が別の集会で読んだ手記を読み上げた実行委員の女性も嗚咽し、言葉が出なくなった。

そういう事件だったせいもあるのだろう。

NHKは大手メディアとして初めて、ニュース番組のなかで「ブラック企業大賞」を扱った。

「直近で起きた女性労働者の自死自殺の事件がかなり痛ましかったということと電通は過去に2件過労自死が起きているので大賞に選んだ」

と語らせている。

去年のクリスマスに自殺した高橋まつりさんが残したツイッターの文面を改めて振り返り、「働くの辛すぎ」「神様、会社行きたくないです」などの言葉を読み上げた。

その上で、ニュースでは電通に対して今年11月に厚生労働省が強制捜査を行ったことやそれを受けて電通が労働環境の改善に取り組んでいることを伝えた上で、現役の電通社員の覆面インタビューを報道した。

長時間労働の対策では一定の効果が出始めている、としつつも、高橋さんの自殺が明らかになる前には新入社員に対してパワハラともいえる厳しい対応が行われていたと明かす。

「新入社員は3ヶ月まったく休みなく土日も出て仕事するのが当たり前のように言われたり、個室に詰め込み、個人的なことまで含め誹謗中傷して『死ね』やそれに近いことを2~3時間浴びせ続ける説教は多く起こっている。」

こうした企業の体質は本質的には変わっていない、という。

「俺はこれを乗り切ったからお前も乗り切れる」

「乗り切れないと電通マンになれない」という風土が根強く残っているのではないか。

それが原因で(高橋さんの)事件が起きたと思っているが多くの社員は反省しようとしていない。

NHKは、電通についてのニュースに続いて、新人の教員についても、精神疾患やその果ての自殺について報道し、過労死や過労自殺の問題が今、いろいろな職場で起きていること、そして対策が社会全体で急がれることを伝えている。

こうした報道姿勢は「ブラック企業大賞」の委員たち一人ひとりの思いと同じだと思う。

市民レベルの社会運動や活動のひとつにすぎない「ブラック企業大賞」。

それをわざわざ全国ニュースのなかで大きく取り上げたNHKの勇気に敬意を表したい。

高橋まつりさんが苦しみのあまり自殺したのはクリスマス。

あれからちょうど1年後のクリスマスがやってきた。

メディアはどんな責任を果たすことができるのだろう。

(2016年12月24日「Yahoo!ニュース個人(水島宏明)」より転載)