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解散総選挙をサッカーの試合に見立てて考えてみると・・・

2014年11月24日 01時22分 JST | 更新 2015年01月23日 19時12分 JST
rolfo via Getty Images

11月21日、とうとう衆議院が解散となった。

多くの人の見方と同様、この唐突な解散には少々戸惑いがあるが、首相の専権事項である解散という決断がなされた以上、日本がどのような道を進むべきかというボールは、国民の足元に転がってきてしまったということになる。

今回は、サッカーで言うところの、DFを国民、MFを政党、FWを政策と見立てて、今回の解散総選挙の行く末を考えてみたい。

今回の解散総選挙は、MF「自公政権」がハーフウェイラインのところまでボールを持ってようやく攻め上がっていったと思っていたところに、完全に気を許していたDFである国民に再びボールが戻されてしまったかのようだ。DFは、再び同じ自公政権というMFにボールを蹴り返し、FW「アベノミクス」にゴールを決めてもらうのか。もしくは、別のMFにパスをして別のFW(アベノミクスではない別の政策)にゴールを決めてもらうという道を選ぶのか、ということになる。

本来であれば、ダブルボランチ(保守<右派>とリベラル<左派>)がうまく機能し、政権交代が可能となるもう1人強力なかじ取りができるボランチが必要だとは思うが、前回の選挙でその一翼だったはずの民主党が惨敗し、現時点において民主党に対するDFの信用は十分回復したとは言い難い。本当は、リベラル系のMFにパスを出したいと思っている国民はもっと多いのではないかと思うが、戦後長らく続いた自民党長期政権という1人ボランチに対するある意味での「安心感」から抜け出せず、今回の総選挙もその状態に近いものになるのではないかという見方も強い。そのほかのMFにボールを回したいと思っていても、細かいパス回し(離合集散)ばかりするので、一向にFWにボールを渡してくれる気配が感じられない。ほかにも、社民党、日本共産党という古くからのMFはいるが、FWがゴールをしてくれるイメージが湧きづらい。

今回の総選挙における一番刺激的な結果は、自公政権ではないMFにパスをするという選択になるであろうが、マスコミ各社の政党支持率をみてみると、自民党が平均30%台なのに対して、次に多い民主党が5~8%程度しかない状態であり、政権交代という可能性は低いと言わざるを得ない。ちなみに、2009年の政権交代前2年間の民主党の政党支持率は、平均25%ほどを推移していた。投票日までに同じような状態になるとは考えづらい。

どのMFにパスを蹴り返すかで本来は国民の意思が明確になるところだが、それが機能しないということであれば、同じMFにボールを蹴り返すことになるだろう。しかし、どのような形のパスを蹴り返すかによって、アベノミクスの進め方にも変化が生まれてくるに違いない。

自民党の議席獲得数によって大きく3つの方向性が考えられる。

1.現状の自民党の議席数と同数程度を維持⇒これまでと同様のアベノミクス施策の推進

2.自民党が議席を減らすが単独で過半数を維持⇒これまでのアベノミクス施策を踏襲するが、若干軌道修正が行われる可能性あり

3.自民党が単独過半数割れし、自公で過半数を維持⇒アベノミクスが大きく軌道修正する必要性が浮上

1の場合、自民党が公明党と連立を組むという枠組みに変わりがないが、公明党が自民党の政策に振り切られてしまう可能性が大いに出てくる。消費税の軽減税率については、2017年4月からの導入は極めて難しくなる。2の場合は、公明党のブレーキングが一定程度働く状態となり、2017年4月の軽減税率導入の可能性も出てくる(半々くらいか)。3の場合は、公明党の存在感が増し、軽減税率も2017年4月からの導入も視界に入ってくる。

以上のような可能性を考えてみたが、今回の総選挙において争点が不明確という問題以上に心配すべきものは、投票率ではないだろうか。国民はすべてピッチに立っているわけではないということだ。先ほどの政党支持率をみるとマスコミ各社で結果はまちまちだが、4~5割は「支持なし」という状況だ。支持政党はないが毎回選挙には行くという人、つまり自分がピッチ上に立つ1人のプレイヤーなんだという自覚がある人もいるだろうが、自分がどのMFにパスを出せばいいのか分からず、蹴り返すことをやめ、ピッチから出てしまう人がいるということだ。

ピッチに立たない人にも大きく2つのパターンがあり、1つはベンチに座っていてピッチに立つ準備をしている人(関心がある争点のときだけ選挙に行く人)、もう1つは、ベンチにすら座らずに観客席で傍観している人(政治に関心がない人、政治に期待をしていない人)だ。

前回(2012年12月)の解散総選挙の投票率は、59.32%と過去最低となった。年代別にみると、20代が37.89%、30代が50.10%、40代が59.38%、50代が68.02%、60代が74.93%、70代以上が63.30%となっている。

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出典:総務省 衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移

http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

20~30代の低投票率が問題となっているが、その大きな理由として、高齢者世代に対する政策に比べて、若者・子育て世代の政策が少ないということが言われてきた。それが若年層の低投票率のすべてを物語っているとは思わないが、この年代別の推移をみて感じる1つの懸念は、年々、年代間の投票率の格差が大きくなっているということだ。年代別の推移をみてみると、このデータで最も古い1967(昭和42)年の選挙では、最も高い60代が82.68%だったのに対して最も低い20代が66.69%(70代以上を除く)で、15.99ポイントの差があるのに対して、2012年の選挙では、最も高い60代が74.93%に対して最も低い20代が37.89%と、その差が37.04ポイントも開いた。前者との差は2.32倍にも広がっている。

もう1つ、年代別の推移をみて気になるのが、1990年の総選挙(海部政権、消費税解散)から96年の総選挙(橋本政権、新選挙制度解散)の間で20代の投票率が一気に落ち込んでいる点だ。57.76%から36.42%と20ポイント以上も減っている。この間、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと選挙制度が大きく変わり、二大政党制が生まれやすい仕組みに変わったわけだが、それ自体は政治への関心を高めるきっかけとはなっていないことが分かる。それよりも、93年の宮沢政権による「政治改革選挙」とネーミングされるこの総選挙から第2次ベビーブームの世代が有権者として加わってから落ち込みが激しくなったということが言えそうだ(この選挙によって細川連立政権が誕生している)。

それまでの世代は、高度経済成長やバブル経済を体験し、人生における成功体験や成長という実感を生で感じてきた世代だ。投票に行くことで、経済的な効果を実感することができ、再びそれにかけて投票に向かう。つまり、最初の例で説明すると、DFからMFに渡ったパスをFWが確実に決めてくれる、そのような状況にあったのではないだろうか。ただし、FWが点取り屋だったというよりも、MFの数に力でゴール前まで運ぶ力があったということではなかったかと考える。一方で、第2次ベビーブーム以降の世代は、「失われた20年」という時代に社会人となり、投票と経済的効果が結びつかない状態となった。つまり、FWの得点力不足があるわけだが、元を辿れば、圧倒的な議席数を誇るはずのMFの力不足も露わになってきた。このMFとFWの力不足が重なるという時代に陥っているということが投票率の低下を招いているのではないか。さらに遡れば、DFである国民の余力もなくなってきているということだろう。特に若年層の余力のなさは顕著だ。

ただ、人口減少社会となった日本が果たして従前のような経済成長を実現できるのか。やはり好景気を体感していない世代にとっては、イメージが湧かないのではないかと思う。正直1977年生まれの筆者自身もイメージが湧いていない。ただし、投票率が高かった時代と同じように、FWの経済政策という施策が低投票率という問題にくさびを打ち込むことになるのかどうか。それは、選挙後になってみないと分からないが、難しいのではないかという肌感覚はある。

だとしたら、投票前に現時点で言えることは何なのか、ということだ。

先日、経済財政諮問会議の点検会合で発言の機会を得て、筆者は「子育て施策の充実のためにはいま予定どおり消費税を引き上げるべき」という意見を述べさせていただいた。

「予定どおり消費税を引き上げ、子育て支援の充実を(第2回点検会合)」

http://www.huffingtonpost.jp/hiroki-yoshida/consumption-tax_b_6154922.html

第2次ベビーブームの世代が子どもを産めるチャンスが少なくなってきている中で、いま有効な子育て支援策を打てなければ、社会保障に対して余計に大きな財政出動が将来的に伴うことになる。男性が長時間労働などの働き方を見直し、女性が働き続けられるための施策が十分効果を上げなかったことで、第3次ベビーブームは現時点で起こっていない。すでに第2次ベビーブームの世代は出産適齢期から10年の月日が流れてしまっている。つまり、少子化のために本来取り組むべきだった政策から10年の遅れがあるということだ。この遅れを取り戻すことは極めて難しいが、最小限に抑える余力は残っているとみる。

政府は現時点で来年4月から開始予定だった「子ども・子育て支援新制度」について、予定どおり実施すると明言している。しかし、消費税による歳入不足をどう補うのか。補正予算を組むという話も出てはいるが、国債で穴埋めということであれば、結局は次世代にそのつけを回していることになり、課題は残る。

この選挙で各党が提示すべきことは、若年層がピッチ上にいるプレイヤーだということを意識させること。そして、若年層にとってFWに求めるべき施策とは何かということを理解することだと思う。その大きな施策の1つとして、子育て施策があり、そのための財源確保が必要だということを訴えることができるかどうかではないだろうか。その答えは、投票率で跳ね返ってくる。若年層の投票率が上がれば、自分たちがピッチに立っていることを証明することになるのだろうし、もし投票率が再び下がるようなことになれば、政治家はその次の総選挙までの間に、若年層にピッチに立ってもらうためには何が必要かを考え続けなければならない。

中長期的な少子化対策という観点だけではなく、いま目の前で子育てすることを諦めてしまっている世代に対して、どう政治が責任を取るのか。果たして「もうちょっと我慢してください」とお願いするだけの覚悟が政治家にあるのかどうかが問われている。

自公政権という強力なMFが不意に戻したDF(国民)にあるボール。DFから自分たちにボールを渡してもらうために、自公政権を含むMF(政党)がどのようにDFに訴えるのか、各党の一挙手一投足に注目していきたい。