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東京オリンピックで景気は良くならない。東京オリンピックを契機にできるかどうかだ。

2013年09月30日 23時36分 JST | 更新 2013年11月30日 19時12分 JST

今月8日に、2020年に開催される第32回夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まりました。あれから3週間、東京オリンピックは何かにつけて話題の中心にありました。改めて我が国にとって明るいニュースになったと実感しています。

東京でオリンピックが開催されるのは、昭和39年(1964年)以来、56年ぶりです。まさにこの年、私はこの世に生を受けましたから、次の東京オリンピック開催の時に私は56歳になるわけです。

我が国は、国土が灰燼となった敗戦からわずか19年でオリンピックを開催し、それを弾みとして世界も驚くような経済成長を遂げ、オリンピックからわずか数年後には世界第2位の経済大国に踊り出ました。

その間には、筆舌に尽くしがたい苦労があったはずです。先人たちの努力に対しあらためて心からの敬意と感謝を表したいと思います。

今回のオリンピック招致活動には、微力ながら私自身も携わってきました。「2020東京オリンピック・パラリンピック日本招致議員連盟」の常任幹事として、5月には南米コロンビア、8月にはロシアを訪ね各国のIOC委員らへの働きかけを行いました。私自身、何としても招致実現をしたかった一人として、喜びとともに安堵の感があります。

なぜ、私はオリンピック開催を目指したのか。それは、国際社会における我が国の存在感を改めて高めていくという思いです。今から10年前、JOC(日本オリンピック委員会)の会長に就任したばかりの竹田恒和氏から、「アジアで二巡目の夏季オリンピックを日本で開催することに協力してもらいたい」と直接話を伺いました。その主旨は、1988年に韓国・ソウルで、2008年に中国・北京での夏季オリンピック開催によって、欧米諸国がそうであるように、いよいよアジアでも二巡目のオリンピック開催の時代に入るという意味でした。

折しも、日本経済の低迷により国際社会での日本の存在感が長期にわたって低下している現在、2020年のオリンピック開催はそれ以上の意味を持つこととなりました。すなわち、日本を明るくして経済の活力を高めていく呼び水にしていくという意味が加わったわけです。

断っておきますが、オリンピックで景気がよくなるわけではありません。一方で、オリンピック開催は、経済の活力を取り戻すための契機になり得るということです。

もちろん、オリンピック開催にも負の面はあります。巨額の財政出動によるさらなる財政悪化、あるいはオリンピック用に整備した施設の膨大な維持費、そして何よりオリンピック景気の反動による経済低迷......。事実、1964年の東京オリンピックの後、我が国は一転して不景気に見舞われました。とはいえ、前回は我が国経済の成長期における開催でした。2020年大会開催後に同じようなダメージを受けることになれば、以前より大きいと今から覚悟する必要があるでしょう。

しかしながら、負の面ばかりを考えていても活路は開けません。物事のいい面を見るか、悪い面を見るかで、その人の人生が良くも悪くもなるのと同様、国家的なイベントに対しても心構えが大切だと思います。

私はつねづね、日本は世界の課題解決国家になるべきだと主張してきました。なぜなら、課題に対する答え(ソリューション)を有している者こそ、周りから価値を認められるからです。このことは国家であっても企業あるいは個人であっても同じだと思います。

オリンピック開催にともない、多くの外国人が日本を訪れ、また、世界中のメディアが競技のみならず日本の実態について報道するはずです。つまり、我が国が主張したいことを理解してもらうには、オリンピックはまとない機会なのです。

日本が世界に向けて発信できる要素はたくさんあります。交通インフラなどの科学技術、最先端の医療技術、治安の良さ、高いレベルのおもてなし、健康的な食文化、自然との共生術、宗教観の多様性など、枚挙にいとまがありません。

それら一つひとつを再確認し、何をどのようにアピールするのかを決めること。それはとりもなおさず、日本がこれからどういう国家であるべきかを考える機会ともなるはずです。その結果、それらが功を奏した暁には、日本は今以上に世界から必要とされる、価値のある国になっていると信じます。

(この記事は「中田宏のオピニオン」に掲載された9月30日付記事の転載です)