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ビルマ:新政権は人権状況改善を最優先に

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(ニューヨーク)国民民主連盟(NLD)率いるビルマ新政権は、待望されてきた様々な改革に着手するための行動計画を発表し、人権が最優先課題の1つであることを示すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチはティンチョー新大統領宛の本日付書簡で述べた。

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Myanmar's first Vice President Myint Swe, President Htin Kyaw, and second Vice President Henry Van Thio attend their swearing-in at parliament in Naypyidaw on March 30, 2016.
© 2016 Reuters

「NLD主導の新政権は、多数の政治囚の釈放や活動家数百人への起訴取り下げなど、既に正しい方向に歩んでいる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「だがマイノリティの権利、土地紛争、表現の自由などをめぐり、難問はいまだ山積している。解決を図るには明解で具体的な行動計画が必要である。」

NLDは2015年11月8日の総選挙で大勝したものの、制度面での深刻な障壁によって改革に着手できずにいる。例えば深刻な欠陥を抱える2008年憲法では、文民政府への国軍の強い統制力が温存されている。軍は現在も国防省、内務省、国境問題省の各大臣を任命し、政府を解散させる権限を持つ。国会議員の25%の議席割当もある。

訓練が不十分で専門性に欠ける司法、法の支配の欠如、人権侵害の責任を問われない軍や警察のあり方も大きな課題だ。治安部隊は平和的なデモ参加者や政府批判者の逮捕を止めておらず、政治囚支援団体の調べでは現在も政治囚61人が投獄されている。

「半世紀にわたる国軍支配を一晩で一掃することはできない。とはいえ新政権は短い期間でも、新たな方針を示すにあたり多くのことができるはずだ」と、前出のアダムス局長は述べた。「NLDは広範なマンデートを行使し、全ビルマ国民の権利が尊重され、真の民主的支配がなされるようにすべきだ。」

戦闘的な仏教徒団体などは、宗教的・民族的マイノリティへの暴力と差別を煽ったり、実際にそのような行為をとったりしている。東南アジアではこの半世紀に多くの国が著しい経済成長を遂げたが、数十年の国軍支配により大半のビルマ人は極度の貧困にいまだあえぎ、大規模な汚職がそれに拍車をかけている。歴代政権と民族武装勢力との武力紛争が続いているために、人権侵害や過酷な状況が生まれ、民間人数百万人が地元に帰還できずにいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはティンチョー大統領と新政権に対し、地元当局が反政府勢力の弾圧に現在も用いている、抑圧的で人権侵害をもたらす法律の廃止など、対象を絞った司法改革をただちに実行するよう求めた。国会は厳格な1975年国家保護法の廃止手続を始めたところだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、政府が女性の権利、土地の権利、健康の権利を推進するとともに、改革への取り組みでは民間団体との協議を促進するよう勧告している。

新政権は、協議に女性の参加を促すことなどを通じ、全国的な和平プロセスの一環として国軍や武装勢力の人権侵害に対処すべきだ。また過去から現在に至る人権侵害についてアカウンタビリティを確保する方策を採るべきである。

新政権にとって、ロヒンギャ・ムスリムの人権と人道状況の改善をはかること、またあらゆるムスリム・マイノリティへの差別や脅迫を停止し、今後の宗派間・宗教間の緊張の高まりを防ぐことも大きな課題だ。ロヒンギャやその他のマイノリティへの基本的権利の制限が長年続いているが、これらは速やかに撤廃されるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

移動の自由への制限が一因となり、2016年4月19日には国内避難民のムスリム20人が海上で死亡している。ロヒンギャの国籍を事実上剥奪する差別的な1982年国籍法の速やかな改正も求められている。新政権は前政権が通過させた「人種・宗教保護法」と総称される差別的な4法も撤回すべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国軍に対し、憲法改正への妨害を止めるよう求めた。同時に政府は、2008年憲法に存在する人権侵害的で差別的な条項の撤廃または改正を公約すべきだ。

「新政権には、今回の選挙結果が真の変化をもたらすことをビルマ国民に対し示す歴史的な機会が訪れている」と、アダムス局長は述べた。「しかし国軍が手を引いて、新政権が必要不可欠な改革に着手できるようにすることが大前提だ。」

(2016年5月5日 「Human Rights Watch」より転載)