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アンパンマンはアウトです、釣りタイトルはメディアの価値を下げる

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「釣りタイトルは許されるのか?」「読者に届くにはどう工夫すればいいのか」。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)では、ソーシャルメディア時代のジャーナリストに必要なスキルについて話し合う、ジャーナリストキャンプ2014の報告イベントを6月28日に法政大学で開催した。元日本テレビディレクターでジャーナリスト・水島宏明同大教授、朝日新聞、J-CAST、ニコニコニュース編集長を歴任した亀松太郎弁護士ドットコムトピックス編集長、ハフィントンポスト日本版編集長松浦茂樹の3人が登壇。キャンプの原稿を振り返りながら議論した。(JCEJ運営委員)

◆キャンプで一番読まれた記事は?

松浦:亀松さん、2番目に読まれた記事はなんだと思いますか。PVの数です。

亀松:アンパンマン...

松浦: はい、アンパンマン記事が2番目に読まれています。『アンパンマンミュージアムの近くで聞こえた「助けて」という悲鳴』です。ちなみに3番目に読まれたものはどうでしょうか。

水島:ハメシュ?

松浦:ハメシュは実は真ん中ぐらいです。3番目は『一日にバスは4本。ほぼ陸の孤島でも車を持っちゃダメとは?(映像あり)』です。水島さんの記事が2、3番目になっています。
今回は21本の記事をいただいて、全部合わせて100万PV弱ぐらいでした。平均すれば、1本の記事で2万5千PVですね。さすがだなあと思いました。4位が『設計図は雲の上 高知の九龍城「沢田マンション」 (下)高齢者の終の棲家に』、5位が『誰も猫を殺処分したくはない―命の現場が抱える葛藤と現実―』です。(注:1位は『設計図は雲の上 高知の九龍城「沢田マンション」 (上)花咲き乱れる脱法建築』)

例えば、さすがに日本にアンパンマンを知らないという人はいないと思うので、記事を読む対象者がすべての人に該当します。『落ちこぼれ競馬の逆襲どん底から生き延びました』という記事は、それほど読まれていませんでした。内容的には非常にいいと思うんですよ。ただ、ハルウララがいたのは、ちょっと前の話です。このタイトルで、クリックしてもらうのは厳しそうだと思いました。

◆記事が人の心を動かせるかを意識する

松浦:タイトルの段階で絞り込んだほうがいい場合もあります。クリックして、記事を見てからツイートするかシェアする。水島さんの隣で非常に言いづらいんですけど、アンパンマンの記事って「いいね」が1000、シェアは65です。実はユーザー満足度が低いのです。PVが分母で、「いいね」が分子という形で、記事を読んだ時に「いいね」を押した割合が一番高い記事は何だと思いますか。

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水島:「書き捨てられる苦しみ」ですか?

松浦:「書き捨てられる苦しみ」のPVは高くないですね。亀松さんはどう思われますか?

亀松:「都市の論理と地方の非論理」

松浦:はい、それです。この『都市の論理と地方の非論理。衰退する地方を助けないといけない理由』のPVはそれほど高くないです。でも、人の気持ちを動かす部分が数字である程度ソーシャルで分かるようになりました。これは媒体による違いがあるかもしれません。
次に良かったのは、『原発避難による移住者の暮らしから学ぶー「住み方」を選ぶこと』です。3番目に多かったのが、『ハメシュって何?限界集落支える3種のジビエ』ですね。
どれだけ読まれる記事を作れるか。その記事が人の心を動かせるかを意識することが大事かなと思いました。

亀松:ハフィントンポストとして、重視している指標は何でしょうか。

松浦: PVは最終的に目指す部分ですが、いいね!してもらうこと、ツイートしてもらうことも重視してます。

亀松:いいね!とシェアで数字が違っていて、「沢田マンション」と「猫の殺処分」を比べると、「いいね」は圧倒的に「沢田マンション」が多いのですが、シェア数は「猫の殺処分」の方が多いんです。「猫の殺処分」はネガティブな話なので、「いいね」って押しづらいけれど、みんなに読んでもらいたいのでシェアするんじゃないかと思います。どっちがいいとかあるんでしょうか。

松浦:どっちがいいとかは正直ありません。ハフィントンポストでは、未来のことを提示することを目指しています。

◆アンパンマンは2014年の釣りタイトルベスト3

亀松:水島さんにお伺いしたいのが、アンパンマンミュージアムの記事についてです。今年の上半期の日本のニュースサイトの記事の中で、釣りタイトルベスト3に入るんじゃないかな思っているんですが、いかがお考えでしょうか。

水島:おっしゃる通り、羊頭狗肉でしょう。記事の中身は、高知の山林で高齢化が進んで民有林がなかなか整備されなくなっていて、嵐のたびにざーっと落ちてきちゃうという環境問題の深刻さを伝えたいと思ったんです。しかし、それを前面に出すと、誰も読んでくれないでしょう。行く途中にアンパンマンミュージアムを横切ったよなということを思い出して、それでアンパンマンを使えないかなーと思いました。悲鳴が聞こえたというのは、ちょっとしたフィクションです。

亀松:それはジャーナリズム的に大丈夫ですか。

水島:読み物としてありかなと。面白いものは絶対見てもらえるだろう、読んでもらえるだろうという意識です。山林崩壊の話であっても、地球を守ってくれるために戦っているアンパンマンが、ここで登場しないでどうすんのみたいなところでリンクしているわけです。ただ、新聞記事のタイトルとしては絶対アウトです。もちろん、テレビのタイトルとしてもアウト。でも、ネットだったらどうでしょうか。

亀松:僕は弁護士ドットコムで編集をやる前はニコニコニュース、J-CASTニュースにいて、ネットの媒体でやっているんですけど...僕の基準の中でもアウトです。

松浦:うちでもアウトです。ウェブメディアではこういう釣りタイトルをつけるというのはありますが、ユーザーの期待値を壊してしまう。炎上でユーザーがバーッて入ってくるけど、ダーッと抜けるんですよ。

亀松:PVが多い一方でシェアやいいね!が少ないということは、多くの人が釣りタイトルだろっと認識したんでしょう。もうひとつ大きな特徴があって、ある意味罪深いんですけど、わかりますか。

参加者:動画有

亀松:はい、そうです。【動画あり】、これなんです。「アンパンマンミュージアム近くで聞こえた『助けて』という悲鳴【動画あり】」という見出しだと、やっぱり悲鳴を聞いてみたい訳ですよ。やっぱり子どもの悲鳴かとか思うじゃないですか。動画を再生した人が多かったんじゃないか。いつ悲鳴が聞こえるのか、いつ悲鳴が聞こえるんだろうって。最後の最後で大どんでん返しで聞こえるんだろうなって、最後まで見ても聞こえなかった。BLOGOSの大谷編集長から僕のところに「この記事はタイトルを間違えてつけちゃったんじゃないか」というメッセージがきました。手違いだと思われたんです。この辺は狙ってたんですか。

水島:いえいえ、全く狙ってないです。今回の4本の記事については、動画をつけてみたら面白いかなと思ったんです。タイトルに【動画あり】という風につけるとクリックされますよというのをキャンプの時にアドバイスされたので...

松浦:水島さんの記事でも、『「私ちょっと有名なナカジマです」アヴァンギャルドな女だからできること』「放射線被害を告発した『ドキュメンタリーな学習』映画で脚光を浴びても衰退の危機はなぜ?」は読まれていません。中島誰やねん、みたいな。動画ありの前に何かしらフックになる要素がないと効果が無いでしょう。ドキュメンタリーも、メディアの人だったら興味あるんでしょうが、一般の方だとどうでしょうか。映画で脚光を浴びたって言っても、まあ知らないでしょう。タイトルがどのくらい入口になっているのかっていうところを意識しないと難しいです。

◆いかにソーシャル上で名を馳せるかが重要

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亀松:それからFacebookとかTwitterで記者自身が拡散していくっていうのが重要なポイントになるのかなと思うのですが、水島さんは自分の記事を自分のTwitterとかFacebookとかあるいはブログとかで拡散しているんでしょうか。

水島:Facebookでこういうの書きましたっていうような1回ずつぐらいはしてますね。

亀松:今回ハフィントンポストに記事を投稿して分かったのですが、Twitterで紹介する時の言葉を何パターンか独自に考えてくださいと言ってきたことですね。それは全て記事でやっているんですか。

松浦:たいていの記事は中身の部分から逆にツイート用のタイトルを何回も切り替えて表示してます。

亀松:誰かハブになるような人がツイートしたり、Facebookで紹介したのが大きなきっかけになることがあるのかなと思うんですが。

松浦:いかにソーシャル上で、名を馳せるのかはポイントですね。

亀松:FacebookとかTwitterとかはてなブックマークとか、ソーシャルメディアの指標が並んでいるんですけれども、それぞれ独立してるんじゃなくて、相互につながっている印象があります。

例えば、ブックマークされると、それがきっかけでTwitterが伸びるとか、Facebookが広がるとかですね。最近の重要な動きとしては、キュレーションメディアと言われる、スマートニュースとかグノシーとかに載ると一気にTwitter数が増える傾向があると思います。そのあたりはどうなんでしょうか。

松浦:ハフィントンポストの考えとしては、先にソーシャルありきです。ソーシャルでバズっているからこそ(キュレーションメディアに)載るわけです。

亀松:Twitterを伸ばすっていう意味では、炎上させるのも1つの手としてあると思うんですが、そういう「炎上ソーシャルマーケティング」についてはどんな風に考えていますか。

松浦:やりたい人がやったらいいと思いますがうちはやりません。ネガティブな印象を与えないほうが、人の心をつかまえてくるところにつながると思います。炎上させたほうが、一瞬でPVを稼ぐマシーンになりますし、それを焚火のようにくべていけばいいと思うんですけど、そうすると殺伐したことしか残らなくなります。

亀松:水島さんにお聞きしたいのですが、このハフィントンポストの記事もやはりページビュー上位3つのうちの2つが水島さんの記事でした。水島さんがYahoo!個人とかで書かれている記事も、非常にページビューが多かったり、ソーシャルで非常に反応が大きかったりするものが多いと思うんですが、心がけていることはありますか。

水島:いや、あまり考えてないですが、テレビの応用なんですね。テレビのニュースのタイトルと同じような感じでやっているっていうのが正直なところです。
逆に私が今回ジャーナリストキャンプに初めて参加して、学んだことを紹介します。キャンプで議論した時、生活保護という言葉が入っていると1人もクリックしません、ぐらいの勢いで反応が悪かったんです。なので、『一日にバスは4本。ほぼ陸の孤島でも車を持っちゃダメとは?(映像あり)』というタイトルにしました。「私ちょっと有名なナカジマ」の記事は結局ヒットしませんでした。貧困問題をやっている弁護士の話ですが、貧困という言葉が入って、しかも弁護士っていう言葉が入ったらもうクリックしませんとキャンプで言われて、少し崩したつもりですが外れました。結構な確率で外れるんですよね。

松浦:水島さんの記事を見ていると、テレビの方って多くの人の心をつかむタイトルをつけるのがうまいなあと実感しますね。あとは書籍の編集者の方ですかね。

◆釣りタイトルはメディアの価値を下げる

亀松:会場から、いわゆる釣りタイトルが氾濫すると、読者にとっては、何を手掛かりに読むべきなのかが、分からなく恐れがあるのではないか。ソーシャルメディア時代には、いいね、シェア、リツイートなどの共有ということが唯一の判断基準になると思われますが、ご意見をお聞かせください、という質問です。

松浦:その通りです。釣りタイトルをリツイートしている人は、そういう人なんだなって認識されてしまいます。「友達選べ」っていうと身も蓋もないですが、誰がシェアしてるんだっけ、誰がいいね!しているんだっけっていうところに、キュレーションの判断基準もソーシャルで可視化されています。媒体の公式ツイートや公式Facebookが、釣りタイトルだった場合、そういうメディアなんだな、って思われても仕方がない。ソーシャル上の評価が自ずと下がるんだと思います。

水島:アンパンマンが釣りタイトルと評価されてしまったので、あんまり言う資格がないんですが、松浦さんがおっしゃったとおりだと思います。

亀松:確かにFacebookとかTwitterを通じて、評価が可視化されています。釣りタイトルをつければいいものではないのはその通りなんですが、一方で、タイムラインで流れてきた記事の中で、刺激的なタイトルに目が行くわけですよね。目にとめてもらわなければ、結局リツイートもいいね!もされないのが現状です。さらに、タイトルだけで判断されちゃったりもするわけですよ。リツイートするけど、読まずに満足しちゃうんです。なかなか微妙な気がします。(セッション終了)

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