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シリアを攻撃する理由は"良心"

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原文注:以下の文章は、米国の68代国務長官であるジョン・ケリー氏が9月6日付けでブログ投稿したもの。同氏は元マサチューセッツ州上院議員であるとともに、海軍の退役軍人でもある。

私には、ベトナム戦争への参戦経験がある(1966年2月から1970年3月までの4年間を軍で勤務。ベトナムで3度負傷し、名誉負傷章と青銅星章を受章した)。そして、42年前には、ベトナム戦争は不正なものだという抗議を行った(反戦ベトナム帰還兵会に参加して上院軍事委員会の公聴会で証言したり、国会議事堂ビルで抗議の意味としてメダルとリボンを投げつけるデモンストレーションを行った)。

こういう経歴をもつ人間として、なぜ今、アサド政権に責任を取らせるための行動に賛成するのだ、と尋ねられることがある。

その答えは、1971年には自分の良心に基づいて話したし、2013年の今も、自分の良心に基づいて話しているというものだ。

チャック・ヘーゲル国防長官と私が、アサド政権に対する限定的な軍事行動を支持するのは、戦争の教訓と恐怖を忘れたからではない。むしろ、そのことを覚えているからだ。

もちろん、新たなベトナム戦争や、新たなイラク戦争が危機管理室で検討されているのであれば、私が議会で軍事行動を支持する意見を述べることはないだろう。

私は、ベトナム戦争を止めさせるための活動に、人生のうち2年間を費やし、率直に意見を語ることを決心したために、敵を作り、友を失った。

そうした経験をもつ私は、いかなる場所での軍事力の使用であっても、本当に熟慮することなく意見をもつことはない。私は、事実と根拠に目を向けて検討を行う。

私はベトナムでの経験から多くの知識を得たが、それに囚われてはいない。また、イラクの経験から多くの知識を得たが、それにも囚われてはいない。

イラク戦争に関する情報が誤っていたという事実は、シリアでの行動について議会に賛同を求めるわれわれすべてにとって、忘れることのできない教訓となった。このことによりわれわれは、自分たちの発言に大きな確信を持つことをより一層迫られている。

私もヘーゲル国防長官も、かつて、後に真実ではないと判明した情報に基づいて賛成票を投じ、そのことを深く後悔している。しかしわれわれは今、連邦議会議員の誰一人として、そのときと同じ立場に置くことは決してしない。絶対に。

私は、ベトナムとイラクのことを思い出すと語る人の気持ちも、今後の軍事行動が同様なものになると懸念する人の気持ちも理解している。だが、そのように考えることは、シリアがどういう状態であり、またどういう状態ではないのかということを無視している。

米国はシリアに地上軍は投入しないし、無期限に関与することはない。他の国に出しゃばって、その内戦の責任を取るつもりはないのだ。

こうしたイラク戦争との違いや、その他の違いがまさに理由となって、かつてイラクとの戦争に反対し、反対票を投じた多くの連邦議会議員が、現在は、シリアに対する今回の行動を支持している。

では、シリアはどういう状況なのだろうか。化学兵器の使用を認めないという国際的な規範が、数百人の子どもたちを、彼らが眠っている間に毒ガスで殺害することを厭わない残忍な独裁者によって、何のお咎めもなく破られた。今回の行動は、世界はこうした行動を支持せず、許しもしないということを明らかにする、という目的に沿ったものになる。われわれの行動は、シリアの軍事目標に対する、限定的で対象を絞った軍事行動となる。その目標は、シリアに化学兵器の使用を思いとどまらせ、アサド政権が将来そうした兵器を使用したり移送したりする能力を削ぐことにある。

大統領が議会に赴いて行動の許可を求めることになった問題とは何だろうか。

国際秩序があるべきだと確信し、化学兵器の使用を認めないという明確な国際的規範が確実に尊重されるための取り組みを支持するわれわれにとって、今回の議論には非常に重要なものがかかっている。

世界は約100年前から、化学兵器の使用を禁止する国際的規範を確立すべく努力してきた。

米国がジュネーヴ条約に加盟し、米国を含む世界の98%の国が化学兵器禁止条約に署名しているのには理由がある。米国は、こうした国際的規範が強化されることで、より安全となる。米国の利益は、こうした兵器が姿を消すことで保護される。米国の同盟国とパートナーは、こうした脅威が減少することで保護されるのだ。

世界はわれわれに賛同している。化学兵器が使用されたのはダマスカスの東部で、8月21日のことだった。世界中の数十の国または組織が、シリアでの化学兵器の使用を確認しており、そうした国や組織の多くが、このことを公表している。また、多くの国や組織が、アサド政権に責任があることを公式または非公式に明言している。そして、われわれは毎日、世界中で支持を集め続けているのだ。

そうした取り組みの一環として、私は今週末にリトアニアのヴィリニュスで、欧州各国の外務大臣と会う予定だ。われわれはその場で、これまでに集めた証拠をしっかりと提示し、アサド政権が新たな化学兵器による攻撃を始めるのを阻止するための限定的な軍事対応について、より幅広い支持を求める続けるつもりだ。

はっきり言わせてほしい。われわれが行動しない限り、アサド政権はこれから何度も化学兵器を使用する。私はそう確信している。

アサド政権が苦境から抜け出す方法として毒ガスを利用できると信じているなら、われわれは、われわれが強く求めてきた和平交渉の席に、決して着くことはないだろう。それは、軍事行動が選択肢のひとつとして存在しなければ、デイトン合意(3年半にわたったボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を終結させた合意)を実現した和平会議が成立することは決してなかったのと全く同じことだ。

われわれが見て見ぬふりをするなら、アサド政権がシリア国内で化学兵器を繰り返し使用する危険を高めるだけでなく、イスラエル、トルコ、ヨルダン、レバノン、イラクなどの地域で、われわれの同盟国や友人たちにその影響が及ぶ危険性が高まることは間違いない。

私は、イスラエルでパニックに陥った親たちが慌てて子供用のガスマスクを求めた(日本語版記事)と聞いて、アサド政権による恐怖政権のすぐそばに、非常に多くの人々が住んでいることをあらためて意識した。

そして、私は確信している。世界に脅威を広める最も緊急性の高い問題国の2つ、イランと北朝鮮に関して外交的解決を望んでいる人は、こう自分に問いかけるべきだと。アサド政権の行動が不問に付されたら、この2カ国が脅威の拡散と挑発をさらに押し進める可能性は高くなるだろうか、それとも低くなるだろうか?
この質問に対する答えは誰もが知っていると私は言いたい。その可能性は高まるのだ。

いま行動を起こさなければ、行動を起こした場合よりも、はるかに大きな代償を支払うことになる。

なぜ、国連安全保障理事会の支持を得ないまま行動を起こすことを検討しているのか、と尋ねる人々がいる。

その理由は、コソボ問題で、ロシアや中国が国連安全保障理事会で拒否権を行使したが、クリントン大統領はその良心を縛られなかった理由と同じだ。コソボでは、米軍に1人の犠牲者も出さずに、良心を持つ複数の国々が行動を起こした。そのおかげで世界は今、よりよい場所になっている。

当時は行動を起こすのが正しいことだった。そして、今もそれが正しいことなのだ。

私たちはすでに、誰が化学兵器を使ったのかを知っている。化学兵器がいつ、どのようにして使われたのか知っている。国連は、ロシアと中国の妨害で行動を制限されることなく、重要な規範を擁護できる立場にあるべきなのだが、実際にはそうではない。私たちは、国連の重要性は確信している。しかし、問題に背を向け、できることは何もないと言うことは許されないとも確信している。化学兵器が無辜の市民を虐殺するのに使われ、それが不問に付されることを許してはならないのだ。

これは良心の投票だ。私は、海軍に入隊して任務を果たしたのと同じ理由で、そして、自分が戦った戦争に反対の声を上げたのと同じ理由で、いま、良心と信念という大義に従ってシリアで行動を起こすべきだと確信している。

[John Kerry(English) 日本語版:佐藤卓、松田貴美子/ガリレオ]