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マーケティング的な無国籍映画――『47 RONIN』―宿輪純一のシネマ経済学(19)

2013年12月09日 18時34分 JST | 更新 2014年02月07日 19時12分 JST

『47 RONIN』(原題:47 Ronin)2013年(米)

"47"でピーンとくるでしょうが「忠臣蔵」をモチーフとしているが、実は"アクションファンタジー"。四十七士にキアヌ・リーヴス演じる架空の人物であるカイが参加する等の独自の要素が加えられた、なんとオリジナルストーリーなのである。まさに「ハリウッド版忠臣蔵」。

大石内蔵助(真田広之)をリーダーとする"サムライ"たちは、吉良上野介(浅野忠信)と怪しい女ミヅキの陰謀によって、主君浅野内匠頭を殺され赤穂の領地を追放され浪人となる。さらなる悪業を企てる吉良の野望を阻止し、非業の死を遂げた主君の敵を討とうと、集まった47人のサムライたちは、映画「ラストサムライ」的にさらに素浪人の混血青年カイ(キアヌ・リーヴス)を加え、映画「300」的に圧倒的に戦力差のある敵の軍勢の戦いに挑んでいく・・・。監督は、CMなどを手掛けてきた新人カール・リンシュで、いままでに主たる映画作品はない。

この映画で驚きなのは、忠臣蔵としているのはシュチュエーションのみで、日本ではなく「無国籍なアジア」映画となっているのである。特に城というか建物や衣装、そして戦闘シーンなどで特にそれを感じた。映画「レッドクリフ」的な感じといってもいいのかもしれないが、中国風でもあり、アジア風であるが、日本の忠臣蔵ではない。日本の忠臣蔵をイメージしていると大変に驚くことになる。

歴史を振り返ると、日本も中国も韓国も、刀をもった戦国時代があった。また、確かに、アジアを回ると、ビルの雰囲気もどの国か分からないことがある。アジアの各国はゆっくりしたスピードだが、経済的に緊密になっており、EU(欧州連合)を参考としながらも、ASEAN+3(日本・中国・韓国)などのグループ化も様々と進んでいる(※)。

しかも、今回は混血のサムライも登場する。つまり、アジア的なサムライの映画ともいえる。これはマーケティング的には、アジアを市場としてターゲットとしているのであろうか。また逆には、アジア的なものとして、米国市場をターゲットとしているともいえる。まさにマーケティング的なハリウッド映画で、このように"大きなエリア"をターゲットとしている映画ではないか。

主人公キアヌ・リーブス(Keanu Reeves)は筆者が好きな役者の一人である。キアヌとはハワイ語で「清らかな風」のことのようである。恋愛映画にも出ているが、より『スピード』や『マトリックス』のようにハードな映画の方が彼は光ると思う。彼は64年レバノン生まれ。彼の父はハワイアンの地質学者で、ハワイ・中国・イギリス・ポルトガル等の多数の国の血を引いている。国籍も『カナダ』『イギリス』『アメリカ』という3重国籍なのである。アジア系の血を引いているので、なんとなく親しみやすいのかもしれないし、日本でも人気が高い。まさに、本作品は彼のための映画のようでもあるのではないか。

主要な出演作品は、『スピード』、『チェーン・リアクション』、『マトリックス』、『スウィート・ノベンバー』、『マトリックス リローデッド』、『マトリックス レボリューションズ』、『恋愛適齢期』、『イルマーレ』 、『地球が静止する日』などがある。ちなみに筆者が彼と会った時にびっくりしたのは肌がとても綺麗だったことである。

(※)アジアの経済・金融統合については、拙書『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞社)をご参照くださいませ。

「宿輪ゼミ」


経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の時の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。まもなく8年目になり「日本経済新聞」や「アエラ」にも取り上げられました。「シネマ経済学」のコーナーも。


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