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『コードネーム U.N.C.L.E.』―米国とロシアの原油戦争/宿輪純一のシネマ経済学(87)

2015年11月08日 00時15分 JST | 更新 2016年11月06日 19時12分 JST

(THE MAN FROM U.N.C.L.E./2015)

1964年から68年(日本では66年から70年)に放映された米国人気テレビシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」のリメイクである。その時もドラマをまとめて何本か、映画化されていた。筆者はこのドラマが好きだった。国際機関アンクル(U.N.C.L.E.)のエージェント、女性に弱いナポレオン・ソロ(ロバート・ヴォーン)と、ニヒルでカッコいいイリヤ・ニコヴィッチ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)の活躍が描かれていた。ちなみにソロが0011、イリヤは002である。原題が「THE MAN」となっているのは、そもそもはソロが主役でイリヤはわき役だったから。

 

アンクルは世界の法と秩序を守る国際機関でUnited Network Command for Law and Enforcement(法執行のための連合網司令部)の略だった。このアンクルには当時、中国とソ連が参加していなかった。微妙だが、イリヤはロシア人の設定だった。当時も米国作品であるが007の様なナンバー、ナポレオンという名前、米ソの対立、そしてオシャレなどで筆者は好きだった。ちなみにデヴィッド・マッカラムは、筆者が好きなテレビドラマ『NCIS』等で82歳の現在も俳優を続けている。風貌は若干残っているが。 

その「アンクル」がリメイクされたのである。当時の東西冷戦下、米国CIAとソ連KGBのエージェントが協力し合い、世界規模のテロ事件を阻止するという風に少し設定が変わっている。もともとの作品と同じ1960年代前半が舞台となっている。CIAエージェントのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)とKGBエージェントのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)は、核兵器の拡散をたくらむ国際犯罪組織と対決するために、冷戦を超えて手を組んだ。性格真逆の二人の掛け合いが見もの。スパイものが好きな方には堪らない。

『スナッチ』などの英国人ガイ・リッチー監督(マドンナの元旦那)が新たな視点から映画化した。ヒュー・グラントも脇役ながら出演している。

さて、本作品では米国とソ連は手を組んでいるが、国際経済・金融の世界では米国とロシアが対決している。もちろん国際経済・金融は、政治と一体化する局面もある。最近の対決は「原油市場」で行われているのである。

ロシアの輸出の約8割は原油やガスなどの資源といわれている。その原油価格が今年になってさらにまた下落しているのである。昨年は1ガロン当たり100ドルぐらいであったのが、今年は40ドルぐらいまで下落している。売上高で見ると6割減となる。この下落の主因は、米国のシェールオイル・シェールガスの増産である。しかも中国を中心として世界景気が低迷しており、消費も減っている。そのため、下落しているのである。

この影響がロシア経済に深刻な打撃を与えている。ことしのロシアの経済成長率は約マイナス5%に低迷している。つまり、これは米国の対ロシア戦略ではないかとも言うことができると考えている。軍事的には派手な行動を抑えていても、経済的に追い詰めているのである。良くできた作戦ではないか。

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