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バングラデシュで高まるイスラム過激派-アジアへ広がるISの脅威

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近年、バングラデシュでイスラム過激派の高まりが懸念されている。
 
先月25日、バングラデシュの首都ダッカで同性愛者の権利活動家2人が刃物を持った集団に襲われ、殺害された。同国唯一のLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)誌である「ループバーン」の関係者によると、殺害されたのは同性愛者の権利活動家であるズルハズ・マンナン氏と、同じく同性愛者で同誌の発行委員の一人を務めていたマハブブ・トノイ氏だった。

同国ではその2日前の23日にも、北西部ラジュシャヒでリベラル派の大学教授が何者かに"なた"で襲われ殺害されている。この他にも、昨年1年間では世俗派や無神論派のブロガーや出版人が5人殺害されている。

加えて、昨年9月下旬から10月初旬にかけては、ダッカでイタリア人男性が、北部では日本人の星邦男さん(66)が相次いで射殺されている。また、10月24日にはイスラム教少数派であるシーア派の施設で複数の爆発が発生しており、1人が死亡60人が負傷するなど、イスラム教が約90%を占める同国では緊張が続いている。

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首都ダッカの様子(photo by バングラデシュ国際協力隊)

イスラム教国家の中では比較的「温和な国」だと言われているバングラデシュ。これまでハシナ政権では、イスラム教を主たる宗教としつつも、あらゆる宗教に寛容な世俗主義を標榜してきた。また筆者自身も学生NGOバングラデシュ国際協力隊のメンバーとして同国を訪れた際、現地の人間から「この国では各宗教・各宗派がお互いに敬意を払い合い、上手く共存している。」という話を聞いていた。

中東やアフリカの国々と比べると比較的治安も良く、テロや過激派の存在も世界的にはそれほど注目されてこなかったバングラデシュ。日本企業も数多く進出し始めている。しかしながら、近年起きている殺害事件ではイスラム国(以下IS)の分派を名乗る組織が犯行声明を出すなど、イスラム過激派の高まりが懸念されている。(関連記事:アフリカで活発化するイスラム過激派--欧州でテロを起こす能力のある4つの武装組織

過激派の存在は新しいものではない

「温和な国」と言われているこのバングラデシュにおいても、過激派の存在は決して新しいものではない。その存在は1990年代半ばから確認されており、1998年には、バングラデシュをシャリーア(イスラム法)に基づく国家にすることを目的として、非合法組織「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ」(以下JMB)が設立されている。

JMBは、2003年同組織のアジトで爆発事件が発生し、大量の爆発物などが発見された事をきっかけとしてその存在が知られるようになった。2005年には首都ダッカを含む63県で発生した同時多発爆弾テロ事件(2人が死亡、150人以上が負傷)が発生しており、この事件はJMBによる犯行と断定されている。

ISは、その機関紙「DABIQ」でJMBとの繋がりを構築したことにも触れており、今後JMBの生き残りがISと協働し、更なるテロ活動を起こす可能性も否定できない。現在の情勢が続けば、バングラデシュに眠る武装組織とISが繋がるのはもはや時間の問題であり、それは同国の過激派にとっては大きな変わり目となるだろう。

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首都ダッカの線路沿いに並び立つスラム街の様子(photo by バングラデシュ国際協力隊)

「『IS』は存在しない」--バングラデシュ政府の見解

過激派による一連の殺害事件を受けても、バングラデシュ政府は「同国にISは存在しない」と主張し続けている。

その代わりに、事件の裏には最大野党「バングラデシュ民族民族主義党(Bangladesh National Party)」やイスラム過激派政党ジャマティ・イスラミ(Jamaat-e-Islami)が潜んでいるという見解を示しており、与党支配の政治に"揺さぶり"をかけようという野党側の目論見が指摘されている。

特にジャマティ・イスラミは、2013年の初め頃から、1971年の独立戦争における戦犯に対する裁判を巡って全国で激しい抗議運動を展開している(今月11日には、独立戦争時のジェノサイド(大量虐殺)や戦争犯罪の罪で起訴されてたジャマティ・イスラミのリーダーMotiur Rahman Nizami氏の処刑が実施されており、イスラム勢力による暴動、治安悪化が懸念されている)。

その一方で、バングラデシュ政府はイスラム国の戦闘員リクルーターを逮捕したと過去に公表しており、この時には同国にISの脅威が存在していることを政府自ら認めてしまったようなものだ。最近の政府の主張は、その発言を撤回しようとしているようにも感じられる。

過激派誕生・発達の土壌に富んだバングラデシュ

現在の時点では、ISが"組織として"同国に勢力を広げている可能性は少ない。しかしながら、近年の経済成長の著しさにも関わらず、高い教育を受けた若者の失業率が高い事や、貧富の格差がますます広がりつつある事などを考慮すると、近年のバングラデシュには過激派誕生やその発展の一因が確実に根付いている。ISの主義・主張に同調する人々が少なからず存在することは、間違いないと言えるだろう。

今後ISがバングラデシュで勢力を広げていけば、同国のみならず南アジア、ひいてはアジア一帯の安全保障の脅威にもなりかねない。

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失業率の高いバングラデシュ。多くの人々が路上での生活を余儀なくされている(photo by バングラデシュ国際協力隊)

約1億4000万人のイスラム教徒が暮らしていると言われるバングラデシュ。 IS、アルカイダ、ボコ・ハラム...世界各地でイスラム過激派の高まりが見られる今日、「温和な国」だと信じられてきたバングラデシュは、この問題を考える上で一つのキーポイントになるかもしれない。
 
記事執筆者:原貫太(早稲田大学4年/学生NGOバングラデシュ国際協力隊 第一期代表)
Twitter:https://twitter.com/kantahara
Facebook:https://www.facebook.com/kanta0422
 
学生NGOバングラデシュ国際協力隊では現在新メンバーを募集しております(大学生限定)。
高田馬場にて、毎週水曜日18:30~21:30定例ミーティングを実施中。見学希望などはお問い合わせよりご連絡下さい。詳しい活動内容は当団体公式ホームページをご覧ください。
 
(2016年5月22日 Platnews「バングラデシュで高まるイスラム過激派--懸念されるISの脅威」より転載)