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競輪選手としての「福幸」支援

2015年06月08日 21時36分 JST | 更新 2016年06月08日 18時12分 JST
ANDREW YATES via Getty Images
MANCHESTER, United Kingdom: Japan's Kazuya Narita (L) wins heat 4 of the Mens keirin race from Poland's Pawel Kosciecha (R) at the UCI World Cup Classics cycling event at the Manchester Velodrome, north-west England, 23 February 2007. AFP PHOTO/ANDREW YATES (Photo credit should read ANDREW YATES/AFP/Getty Images)

福島のために何かできることはないか?

一個人、競輪選手として復興支援できることはないか?

同級生で練習仲間の五輪出場経験のある新田祐大君と常日頃こんな話をしていた。

3.11あの日私は宇都宮でレース発走直前のスタートラインにいた。

はじめの揺れはただ風が強いだけだと感じたがその後の大きな揺れで競輪場のあの頑丈なコースに大きなひびが入ってた。

レースはスタートしないまま中止となった。

あのひびを見た時このまま走っていたらどうなっていただろうと恐怖を感じた。

契約解除となり競輪場を後にしたが、電話も繋がらない、家族は大丈夫か、家は大丈夫かと不安だった。

帰宅し安心も束の間、食料もなく水も制限があり気持ちが不安定になり、家族のもめ事が耐えなかった。

その時の新田君も海外での大会に挑む前で苦渋の選択を強いられたが、こんなときだからこそ!と決意を胸にし旅立っていった。

数日が経ち、原発の切羽詰った状況から家族で相談し親戚の静岡の家で過ごすことになったが、約2ヶ月の間競輪も全国で開催を自粛し休業を余儀なくされた。

競輪も再開し周りも落ち着きを見せ、福島へ戻りいつも通りの日常へと戻したのだが、この先どうするのか?どうなるのか?心の中で葛藤する毎日だった。

いつ何が起こるかわからない、今やっておかないとという思いが日に日に強くなってきた。

この時だ、私が福島から東京へでてきたのは。私の尊敬するある先輩の一言で決心をしたのだった。

福島で生まれ育った僕たちだからこそできることは何だろう。

そう思ってたときに出合ったのが「ときわ塾」である。

いわき市にある児童塾で小学校1年生から6年生の子どもたちに勉強や運動と豊富な教育を行っている。

現役の東大生など各方面のエキスパートを先生として招き、さまざまな体験ができる心身ともに鍛えられる試みをしている場所である。

また、礼儀作法なども徹底していて、初めて子供たちと顔を合わせた場ではしっかりした挨拶で歓迎され圧倒された。

そこで新田君と二人で自転車のルールとマナーの教室を開く機会を得た。

自転車に乗るスポーツ選手として、事故なく安全に自転車に乗ってほしいという思いがあった。自転車は便利な乗り物である、しかし多少の危険も伴う。

では、それを安全に乗るためにはどうすればよいか。事故がない世界、それはちょっとした注意で防ぐことができる。

そして今回は、自転車のルールとマナーを伝えると共に、競輪という知らない世界を知るという気付きを体験してもらった。

日常では見る機会はないであろう競技用の自転車を持って行き走る姿を披露した。

お~すご~い!とかなり興味を示してくれ、その時の無邪気な表情が印象的だった。

初めての経験で戸惑うこともあったが生き生きとした子どもたちの表情がまぶしく、伝える喜びを感じた。

授業も終わり、体育館内で一緒に運動をして遊んだ。

ここでひとつ問題が発生した。プロスポーツ選手であるはずなのに子供達に体力で置いていかれるのである。

この無尽蔵の体力を前にちょっとした挫折を感じたが、大人のプライドで何とか凌ぎ威厳を保つことができた。久しぶりに童心に返り、底抜けの元気をもらった。

そして次の日は筋肉痛にもなった。数日はきつかった。

今までは白河からいわき市には競輪場へ競走か練習の機会しかなかったが、新しい繋がりができ、いわきへ出向く際はワクワクするようになった。

支援とはおこがましいが自分たちにできることがあるという気付きにも出会えた。

僕ら競輪選手や夢を叶えた人たちを身近に体験することにより、夢を広げ、自分たちの可能性に気付くきっかけにしてもらいたい。

そして子供たちも僕たちも共に成長する場となってほしい。少しずつでも行動を起こし、やがては大きな花を咲かせたい。

これから先も競輪選手として福島で復興を応援していきたいと思っている。

マイナスイメージをゼロにするのではなく、プラスにしていく活動をしていきたい。

"復興"ではなく「福幸」にしていきたい。

(2015年5月28日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)